2016年SXSW開催 30周年に米オバマ大統領も登壇
2016/03/24
米テキサス州オースティンで3月11~20日、音楽、フィルム、テクノロジーの複合イベント「サウス・バイ・サウスウエスト」(SXSW)が開催された。中でもインタラクティブ部門は、ツイッターやフォースクエア、ミーアキャットなど同イベントをきっかけに世界的な浸透を見せたサービスやテクノロジーが相次いだことで、カンヌライオンズやCESと比肩する重要イベントとして位置付けるメディアや広告関係者も多い。
SXSWが30周年を迎えた今年は、インタラクティブ部門初日の基調講演にバラク・オバマ米大統領が登壇。地元テキサス・トリビューン紙の編集長を相手に、テクノロジーの進化を背景とした市民の社会参画などについて語った。現役大統領の参加は同イベント史上初。夫人のミシェル・オバマ氏も16日、ミュージック部門の基調講演にミッシー・エリオット氏やダイアン・ウォーレン氏らと共に登場した。
新たにスタートしたプロダクトやサービスが対象となるアワード「ReleaseIt」では、電通の「MotionScore」が日本企業初のファイナリスト入りを果たした。CGキャラクターやロボットの動きを楽譜化し、自在なテンポや音楽に合わせてコントロールする技術で、音楽ライブにおけるバーチャルダンサーやロボットダンサーの可能性を広げた。
(関連記事:人の動きを楽譜化する技術『MotionScore』[2016.03.09])
作品を手掛けた電通CDCの多々良樹氏はSXSWへの参加について「初めてだったが、とても興味深かった。ブース出展は好評で『一番面白いブースだったよ!』と言ってくれる方も多くいた。特にイベントのミュージック部門を訪れたミュージシャンが気に入ってくれ、『これ、使いたいんだけど、どこで売っているの?』と聞かれる場面が度々ありました。残念ながら技術展示なので販売はできなかったのですが」と、手応えを語る。
多々良氏はさらに「『このサービスと心中できるか』というスタートアップ的な覚悟が問われるような経験だった」と分析する。「自分のサービスやプロダクトでお金をもうけて世界を変えてやる! そんな熱気にあふれていた。ピッチや出展ブースでは、私たちの技術を心から楽しみ、『こんなことがしたい!』『ここと組んだらいい!』とディスカッションをどんどん持ち掛けてくる。その敬意のこもった情熱や発想こそが、今、世界を変える力なのだと感じた」。SXSWには他にも、スタートアップの大規模コンペティション「アクセレレーター」や、ツイッターが広まるきっかけとなった「インタラクティブ」などのアワードに、今年も世界中から多数のサービスや技術がエントリーした。
オフィシャルイベント「ジャパンハウス」も昨年に続いて実施され、今年は「Extension of Humanity」(人間性の拡張)をテーマに、世界的なロボット学者の石黒浩大阪大教授が登場。ステージセッションや、NTTとの協働で同教授をコピーしたアンドロイド「Geminoid HI-4」による自律した音声対話技術のデモンストレーションなどが行われた。
スタートアップを中心とした先端技術のインキュベーションの場として注目を集めてきたSXSWだが、「第2のツイッター」は生まれにくくなっているとの指摘もある。PR会社Kwittkenのジェイソン・シュロスバーグCCOはアドエージへの寄稿で、IoTの潮流であらゆるものがシームレスに連携しクラウドにつながる世界では、テクノロジーはますます細分化する一方で、単独のテクノロジーが「見えにくく」なっていると指摘。そのため自社製品をアピールするのではなく、3Mやヒューレット・パッカードのように世界観を伝えるインスタレーションスタイルの展示が増えていると説明する。
一方で、街を挙げてのお祭り騒ぎの中、同イベントのスポンサーをはじめ大手グローバル企業によるアピールはますますスケールアップしており、マツダやマクドナルド、ゲータレードなど、各ブランドの趣向を凝らした施策がメディアをはじめ参加者の注目を引いた。