nendo×電通=cacdo(カクド)はビジネスをデザインするNo.1
nendoと電通の新会社cacdoが手掛ける“ビジネスデザイン”って?
2017/04/18
ニューズウィーク誌の「世界が尊敬する日本人100人」に選出されるなど、世界的なデザイナーとして知られる佐藤オオキ氏。その彼が率いるデザインオフィス「nendo」と電通が協業し、2017年に合弁会社「cacdo」(カクド)を立ち上げました。なぜこの会社が生まれたのか、そもそも一体何をする会社なのか、社長の増田哲さんが答えます。
cacdoの社長に就任しました、電通の増田と申します。今回は、cacdoという新会社がどのようなものなのか、紹介します。
まず、佐藤オオキ氏率いるnendoについて。同社の扱うデザイン分野は、プロダクトデザイン、空間デザイン、そして企業のブランディングや課題解決に関わるビジネスデザインの領域まで、多岐にわたっています。
今回設立したcacdoは、その中でも主に “ビジネスデザイン”に注力し、より多くの企業に提供することを目指しています。
ここで、読者の方には疑問がいくつかあると思います。
・ビジネスデザインとは何なのか。
・なぜ2社が手を組みcacdoが生まれたのか。
・cacdoはクライアントに何を提供できるのか。
これらの疑問に答えていきたいと思います。まずは一つ目の疑問、ビジネスデザインについて説明します。
「明確でない課題」を明確に解決するビジネスデザイン
佐藤氏は、世界的なアワード「エル・デコ インターナショナル デザイン アワード」(EDIDA)を最年少で受賞したり、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界中の有名美術館に作品が収蔵されているなど、世界を股にかけて活躍しているデザイナーです(nendoサイト参照)。
前述したとおり、彼と彼の率いるnendoの活動はプロダクトや空間といった一般的なデザインだけでなく、ビジネスデザインという領域にまで及びます。
nendoでは常時400件ほどのデザイン案件を抱えています。その約半分は海外案件ですが、国内のプロジェクトの大半はビジネスデザインだといいます。
ビジネスデザインとはそもそもどんなものなのでしょうか。広く共有された定義のある言葉ではないのですが、私の解釈によるビジネスデザインの定義は以下のようなものです。
企業が持つ漠然とした悩み、例えば「社長を引き継いだタイミングで、会社のイメージを刷新したい」「商品の売り上げが落ちてきたが、何がいけないのか分からない」など。そんな “解決方法が明確でない課題”に対し、nendoではあらゆる解決策を提案、実行してきました。
相談を受ける時点では、悩みをどうやって解決するか、例えば何らかの制作物を作るのかといったことは決まっていません。あくまで「課題を聞く」ところからスタートし、どんな打ち手があるかをフラットな姿勢で検討。そして、実行します。
実行のフェーズでは、プロダクト開発やブランディング、広告戦略や映像制作など、分野や手法に縛られないありとあらゆる解決策が取られます。
企業ロゴだけで作る広告からクラウドファンディングまで!?
分野や手法に縛られないnendoの解決策
nendoが過去に行ったビジネスデザイン案件の中から、事例を二つ紹介します。
●ビジネスデザイン事例その1:IHI
課題「新社名と事業内容の認知度を高めたい」
IHIは、エネルギーから社会インフラ、産業機械や航空・宇宙まで、私たちの生活を支える総合重工業メーカーで、2007年に石川島播磨重工業から社名変更を行いました。しかし一般消費者やリクルーターへの認知度向上に悩み、また事業内容もBtoB主体であるため、広く伝えづらいという悩みがありました。
同社の相談を受けたnendoでは、解決策としてある広告展開を考えます。
それは、企業ロゴである「IHI」の青文字だけで街の風景や橋、船や飛行機を描いたビジュアルを作成し、新聞広告やテレビCMなどに展開。「さまざまなものがIHIでできている」というメッセージを訴求することでした。
YouTube動画:IHI 60s
「新社名と事業内容の認知度を高めたい」という課題に対して、「社名のビジュアルを使った広告戦略」という解決策を選んだのです。(nendoサイト参照)
●ビジネスデザイン事例その2:早稲田大学ラグビー蹴球部
課題「チームを強くして日本一の座を奪還したい」
もう一つの事例は、早稲田大学ラグビー蹴球部です。
2016年2月、しばらく優勝から遠ざかっていた同部に、新しい監督が就任しました。この際、新監督とマネージャーがnendoを訪れたのですが、それは2018年に迎える「創部100周年」のロゴのデザインを依頼するのが目的でした。
しかし、佐藤氏が監督と対話してみると、「なんとしてもチームを強くして日本一の座を奪還したい」という強い思いが聞かれました。そこで、その思いをサポートするいくつかの解決策がnendoから提示されたのだそうです。
まず行われたのは、公式戦用ジャージの見直し。「エンジ×黒」という伝統のカラーリングは残しながらも、より筋肉の隆起が強調され、プレーがダイナミックに見えるデザインに変えました。「より強く見えるようにする」ことで士気を高め、チーム力の強化につなげる狙いがありました。
次に、監督の話を元にチームスローガン「BE THE CHAIN」をコピーライターと考案し、スローガンを浸透させるための映像を制作。
さらにライバル校に比べ資金力が不足しているという悩みを解決するため、nendoが運営に携わるクラウドファンディングサービス「ファイナンセンス」の活用を企画しました。同部は出資者にnendoデザインのオリジナルグッズを還元するクラウドファンド「BE THE CHAIN PARTNER FUND」を立ち上げ、1000万円の資金調達に成功しました。
YouTube動画:Waseda_Rugby
「どうすればチームが強くなるか」という、大きくて難解な課題に対して、nendoがデザインを使ったあらゆる手段で答えを出していった事例ではないでしょうか。(nendoサイト参照)
企業コラボやマスメディア戦略も強化!
cacdoが生まれた理由
nendoの手がけるビジネスデザインは、主に佐藤氏と、同社マネージングディレクターの伊藤明裕氏の2人が中心になって行われてきました。
彼らはクライアントの抱える“なんとなく”の課題に対して、素早く本質を理解・分析し、解決策を考案、さらに実行する能力を持っていました。
相談を受けたその場で的確に課題を見抜き、その数日後には3Dプリンターなども駆使してプロダクトの試案やプランを提示。そうしたスピード感ある対応に加え、常に成果を出し続けたことにより高評価を得て、ビジネスデザインの案件は増えていったのです。
私が佐藤氏、伊藤氏らと初めて関わったのは、ロッテのガム「ACUO」が新製品として登場した2006年のことです。私も電通の営業担当者として携わったこの案件で、彼らにパッケージデザインをお願いすることになりました。
nendoにとっても初めてのプロダクトデザインとなったACUOは、その年爆発的なヒット商品となりました。以来12年間、佐藤氏・伊藤氏らとは多くの案件を手掛けてきました。
その後nendoが知名度を高めるに従い、ビジネスデザインの案件が急激に増加。佐藤氏・伊藤氏は、ビジネスデザイン案件の窓口やヒューマンリソースを増やす方向性を模索するようになりました。これが、冒頭の二つ目の疑問、「なぜcacdoが生まれたのか」に対する答えにつながります。
またもう一つ、彼らがビジネスデザインの案件で提案・実行する解決策は、多分野・多領域にわたります。普通、デザイナーが行うとなれば、プロダクトデザインや空間デザインなど、自分の得意な領域の解決策に落とし込みたがりそうなものですが、彼らは一般的なデザインのフィールドを超えようが “ベスト”な手段で解決しようとします。
だからこそ、nendoは今さまざまなジャンルの企業と組んで、「あらゆる領域での解決策」を強化することを始めています。先ほどのクラウドファンディングサービス「ファイナンセンス」も、ミュージックセキュリティーズ社との協業によるものです。
cacdoが生まれた背景には、この「解決策を増やしたい」という彼らの意思が関係しています。例えばビジネスデザインの課題解決として、「マスメディアでのプロモーション」や「イベント企画」などを行いたい場合に、電通の力で選択肢が広げられるのではないかと思います。
nendoがアウトプットする質の高い発想をより円滑に進め、より形にしていく。そういったシナジーを生み出すのが、cacdoの存在意義です。
佐藤オオキ氏の問題解決力を最大活用して
より多くのクライアントをサポートしたい
新会社cacdoがクライアントに提供する“ビジネスデザイン”がどんなものか、少し分かっていただけたでしょうか。最後に冒頭で挙げた疑問の三つ目、「cacdoがクライアントに何を提供できるか」についてまとめます。
それは、明確なものが見えない課題や、言葉にするのも難しい不明瞭な課題に対して、cacdoがその課題の本質を浮き彫りにし、あらゆる解決策を提案・実行していくことです。
どんな小さな課題でもよいですし、解決策が分からないフェーズでこそお話を頂ければと思っています。フワッとした状態で投げていただくのが、むしろビジネスデザインです。
cacdoのクリエーティブ体制は、nendoと電通のクリエーターが案件に応じて参加し、あるいは協業する形になります。オフィス自体もnendoの社内にあり、文字通りnendoと電通が一体になったものと考えていただいて構いません。もちろん、cacdoの仕事は佐藤オオキ氏が監修します。
2社を合わせることで、窓口も広がりました。電通の強みは、チャネルの多さにもあります。ビジネスデザインにおける解決策として、他業種の企業と企業を掛け合わせたプロモーションなども可能になっていくはずです。
とにかくcacdoに興味を持たれたら、ぜひお気軽に悩みをご相談ください!
今後は、具体的にcacdoが手掛けた事例なども紹介しながら、cacdoとビジネスデザインの理解をより深めていければと考えています。
cacdo公式サイト:cacdo