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佐藤オオキさん、「ビジネスデザイン」ってなんですか?

nendo×電通=cacdo(カクド)はビジネスをデザインする №2

  • 佐藤 オオキ
  • 増田 哲

2018/07/13

佐藤オオキさん、「ビジネスデザイン」ってなんですか?

世界中から注目されるデザインオフィスnendo代表佐藤オオキ氏。昨年、そのnendoと電通が協業し、合弁会社「cacdo」が立ち上がりました。cacdoでは、企業や組織のビジネス課題を解決する「ビジネスデザイン」を主領域としています。

佐藤氏と、cacdoの代表である電通の増田哲氏に、nendoと電通の協業がどんな新しい価値を生むのか聞いてみました。

nendo佐藤オオキ代表、cacdo増田哲代表
nendo佐藤オオキ代表、cacdo増田哲代表

Q.なぜnendoは、電通と組んで会社をつくったのでしょうか?

佐藤:もともとnendoはプロダクトやグラフィックデザイン、空間デザインを主軸に手掛けていたんですが、より経営層に近いところからの相談が増えてきて。商品やパッケージのデザインではなく、「社員の士気を高めたい」「外からの会社の見られ方を変えたい」など、デザインという手法をもうちょっと深く経営の中に取り入れたいという依頼がここ数年で多くなってきたんです。

増田:そうした経営や事業の課題解決を、cacdoでは「ビジネスデザイン」と呼んでいます。

佐藤:そして例えば「会社自体をブランディングしたい」といった大きな課題の解決には、継続的な体制を構築することが必要になってくると考えています。せっかくブランディングを担当しても、契約期間が終わればもう関われない。

そんな中で、あるクライアントから「受発注の関係ではなく、一緒に組織をつくって仕事をしたい」と提案いただいたんです。nendoとクライアントのデザイナーが交じり合って組織をつくり、強みや異なった考え方をお互い持ち寄る。お互いの血を入れ替えていくようなイメージで、そこで成長した人材をそれぞれの本体の会社と循環させることで、企業が感じている閉塞感を短期間で打破する機会を生むことになるのではと感じています。

増田:斬新ですよね。そんな手法に目を付けたデザイン会社はないですよ。

佐藤:そんな大げさな話じゃないですが(笑)。電通と組ませていただいたのは、増田さんと一緒に仕事をしてきて、「nendoがやっていることが電通という土台に乗ったら面白いだろうな」と感じたからです。

増田さんとは2006年、ロッテのガム「ACUO」で初めて仕事をしたんですが、このプロジェクトを成功に導くまでには紆余曲折があって、そのたびに増田さんに相談しては解決してもらった経緯があり、いつかは同じ組織で仕事をしたいと思っていたんです。

増田:12年目にしてようやくですね。nendoは、電通と組んだcacdoだけでなく、乃村工藝社と組んだ「onndo」など、他業種のプロフェッショナルと協業するための新会社を複数設立していますね。


cacdoが手掛けた事例1:ハナマルキ100周年記念ロゴ/ツールのデザイン

ハナマルキが大事にされていることから着想したプロジェクトです。Honest、Hybrid、Homeなど多くのキーワードが「H」から始まることから、まずは「H」を繋げて100周年を想起させるロゴを制作。名刺やペーパーバッグのツールにもこのロゴのみを使用し、企業の魅力やメッセージを訴求するCIシステムといたしました。(増田)
 
ハナマルキ100周年記念ロゴ/ツールのデザイン
過去の100年を振り返るのではなく、次の100年のための周年ブランディングとして提案。企業理念、社長の思い、社史などを分析してHANAMARUKIの「H」を軸にストーリーを紡ぎ、キャッチフレーズ、ブランドブック、各種ペーパーツール、贈答用みそのパッケージデザインなど、トータルプロデュースを行った。

Q. nendoと電通が実際に協業してみてお互い感じたことは?

佐藤オオキ

佐藤:nendoはモノづくりが主体なので、それを“どう伝えるか”のプロモーションやPRに課題があったんですが、電通から来たcacdoメンバーは、どんなメディアを使いどんな順番で伝えるかというノウハウに長けていて、丁寧に組み立ててくれますね。それに皆さん本当に優秀で、僕が提案した小さなアイデアをどんどん膨らませてくれるところに、地味に楽しさを感じていました。

増田:私個人の感想を言えば、cacdoに来てからは新しい発見と経験の連続で、こんなにエキサイティングな体験をさせてもらえていることに感謝しかありません。自分の中で毎日、レベルアップの音が鳴っていますね(笑)。

佐藤さんたちのビジネスデザインの特徴は、解決策を「建築」や「プロダクトデザイン」といった自分の専門領域に持って行こうとせず、常に思考がフラットなところ。クライアントの課題に対して、手段を問わずベストな解決策を探すので、そのたびに解決策のジャンルが変わるんですね。

佐藤:nendoは“守備範囲が広い”というより、“守備範囲がない”と思っています。依頼の中には明確なお題がないものもあり、じっくり話を聞きながら課題を探し、オリエン資料からつくったりもする。自分たちの領域を「プロダクトデザインまたは空間デザイン」と線引きしていたら、案件と向き合えません。

増田:電通では、右脳的なクリエーティブと、左脳的なマーケティングや分析のスペシャリストが社内にいて、私は彼らをうまくまとめるのが営業の仕事だと思ってずっとやってきました。でも佐藤さんは右脳と左脳、両方できる。一人で十種競技をやっているようで、こんな人間がいるのかと。

一人の人間が、川上からデータ分析をしたりコンサル的な話をしつつ、川下でクリエーティブまでワンストップで提供できるところが、今の時代に彼が世界中で必要とされる理由だと思いますが、守備範囲がない仕事の仕方についていくのは大変です。

佐藤:当初は、cacdoのメンバーも戸惑っていましたよね。そもそも僕が普通に就職した経験がないので、何が王道な仕事の仕方なのか分からないんです(笑)。

守備範囲といえば、nendoとcacdo、さらには空間デザインを専門とするonndoの3社で取り組んだプロジェクトでは、お互いの得意分野を生かすことで仕事にすごく立体感が生まれましたね。短期間でお互いが成長していくことが実感できるというか、一緒に取り組むことの可能性を強く感じました。化学反応の度合いが違うなと。失敗もあるんですが、成長するために「一緒に失敗する」こともすごく大事だと思います。

増田:cacdoも佐藤さんのプロジェクトの進め方を学びつつ、1年以上一緒に仕事をしてきて、なんとか少しずつそのやり方が見えてきている手応えはあります。

佐藤さんみたいな人材をつくることはそう簡単にはできませんが、左脳のスペシャリストや右脳のスペシャリスト、複数人を育てることで、同じスタイルを少しでも再現することはできるかなと。でもそうかと思えば、佐藤さんもnendoもすごいスピードでどんどん新しい世界に行ってしまうんですけど。


cacdoが手掛けた事例2:JR西日本のコミュニティー型カジュアルホテルブランド「Potel」の開発

漠然としたクライアントの課題を、ビジュアル化することで明確にしました。ブランド名は、人と地域が交わる玄関口を表すPortとHotelを組み合わせ、「Potel」(ポテル)としました。ロゴマークはカタカナの「ポ」をベースにし、さまざまなグラフィックツールに展開できるようデザインしています。(増田)
 
JR西日本のコミュニティー型カジュアルホテルブランド「Potel」の開発
「今までにない新しい業態のホテル開発」というクライアントの課題に対し、新業態(コンセプト)の定義とCIの制定を行い、あるべき新ホテル像を描き出した。

Q.nendoやcacdoの取り組むビジネスデザインの本質とは?

増田哲

佐藤:プロジェクトの向き合い方に決まった型はないのですが、ひとつ言えるのは、クライアントの組織のレイヤーが複雑なほど、課題に対する答えは見つけやすいように思います。

何度か経験したのは、「答えはもう出ていて、各部署がそのピースをそれぞれ持ち合っているのに、情報交換をする機会がないので誰も答えに気付かない」ケース。各部署の話を聞いてみて、それをパズルのように組み合わせると答えが見つかるときがあるんです。

増田:それはクライアント、特に経営層との信頼関係があるからできるんですよ。普通そこまでいろいろな部署に話を聞けませんから。その信頼の根本には、佐藤さんの仕事に対する姿勢があって、彼はどんな状況でも“フルスイング”を求めるんです。「三振するのが嫌だから当てに行こうか」なんて思っていると「もっと強く振れ!」と(笑)。

例えば、ある商品のロゴ作成を依頼された時、彼は「商品名から提案しよう」と言いだす。クライアントからのお題ではないんですよ。でも、彼はその方がより高い価値が出ると思って逆提案する。常に妥協せずベストを尽くす姿勢が、信頼につながっていると感じます。

佐藤:問題の本質が、クライアントのオーダーとは別のところに見えるケースは多いです。例えば、仮に「このリンゴのパッケージをデザインしてほしい」といわれた時に、そもそもリンゴの味がイマイチだったり(笑)。「おいしくない」ことを無視して、オーダー通りの制作物をつくれば平穏に終わりますが、本質を無視したデザインは解決策にならない。元のリンゴの強みを見いだしたり、一緒においしいリンゴを開発・加工するところから考えるんです。

もちろん汗をかくことになるんですが、それをやらないと大きな価値を生めないと考えています。どんな案件でも本気で考え抜いてフルスイングし続けると、期待値も増えて、もっと大きな相談を頂けることもあります。


cacdoが手掛けた事例3:フェイラー70周年事業コラボレーション商品「Co-Feiler」開発

cacdoがどこまで何をできるのかをクライアントに伝え、忌憚ない意見交換をしながらブランディングやプロダクトデザインをさせていただきました。製品を幾度となく分解しては組み立て、どうしたら売れるのか、消費者のニーズをどうくすぐるのかを追求した成果が、デザインに反映されていると思います。(増田)
 
フェイラー70周年事業コラボレーション商品「Co-Feiler」開発
ブランド価値を分解して消費者の体験に落とし込み、異なる角度からの複数アウトプット創出で、解決力の「広さ」を見せるファーストプレゼン。立体的かつ売るための「コト化」を含めたデザインのセカンドプレゼンという、2ステップでの提案を実施。シュニール織の触り心地を生かしつつ、携帯性の高いサイズのタオルハンカチ「Co-feiler」が生まれた。

Q.二人が考えるcacdoの今後は?

増田:僕は佐藤さんと、伊藤さん(nendoマネジメントチームの責任者で設立メンバー・伊藤明裕氏)の二人がすごく好きなので、もっと彼らの才能を広く発揮してもらって、最大限に活躍してもらいたい。そのためにも、電通のノウハウでnendoの可能性を広げて、彼らが喜ぶ仕事を一緒にしたいと思いますし、そうすれば結果としてクライアントを喜ばせることができると思っています。

佐藤:1年たって、僕から見ると「cacdo独自の勝ちパターン」はできつつある印象ですが、本当にcacdoが面白くなるのはここからだと思います。もっと上に行けるポテンシャルを感じるからこそ、今後は、「いかに完結せず、組織としてゆるい状態を維持できるか」が鍵です。予測不能な組織であるほどいいですね(笑)。そして電通にはcacdoという場を最大限に活用してほしいです!