【続】ろーかる・ぐるぐるNo.107
「才能のない人が、コンセプトを欲しがる?」
2017/05/18
前回、10周年を迎えた「よんななクラブ」栗田健一郎社長のオススメとして「ピンク醤油」(鳥取県)をご紹介しましたが「もうひとつ。柿の専門奈良吉野いしいの『柿バター』も面白いよ!」。
牡蠣バターではなく、柿バター。2016年度ふるさと名品オブ・ザ・イヤ―地方創生大賞モノ部門グランプリも受賞したそうで。ちょっとしたキズで流通しづらくなった地元産の柿を丁寧に煮詰め、バターと合わせたジャムです。柿の好みってサクサク派とトロトロ派に分かれると思うのですが、これはどちらかといえばトロトロ派向けかな。コクがあって、トーストによく合いました。
ところで、もう5年ほど前でしょうか。栗田社長と話し合い、よんななクラブを表すひと言として「こんなのあるんだ!」を開発しました。
これによってお客さまは、よんななクラブが「町のスーパーみたいに日用品を買う場」でもなければ、「大手通販サイトのように大量の品物から欲しいものを探し出すところ」でもないことを予感できるはずです。その一方で、よんななクラブ社員は、地方新聞社のネットワークを活用して知られざる逸品を発掘してくるだけでなく、その情報を整理して、お客さまに対して分かりやすく「ご提案」しなければならないことを自覚するハズです。
「(地方の)こんなのあるんだ!(に出合える場)」というコンセプトは、ビジネスを進めていくうえでとても大切なものだと信じています。
ところが。
先日、ある雑誌のバックナンバーを読んでいたら「ぼくは、コンセプトなんてつくらない」「才能のない人が、コンセプトを欲しがる」なんて言葉に出合いました。さて、皆さんは「コンセプト」を本当に必要なものだと思いますか?
この連載ではコンセプトを「ビジョンの実現に向けて課題を解決する新しい視点」と定義していますが、それは、散らかすモードの試行錯誤の中で現れる「こうしたらうまくいくかも…」という予感(=身体的感覚)を、発見!モードで言語(=共有可能な情報)に転化したものです。そしてなぜ、わざわざ言語にしなければならないかといえば、それは「組織」で物事を進めていくことを前提としているから。ひとり創作にいそしむ芸術家であれば、作品完成前に誰かと意図を共有する必要なんてありません。「なんとなくこんな感じ」が共有できる仲間だけでプロジェクトを進める場合でも、やっぱりコンセプトは不要でしょう。でも現実のビジネスにおいては、従業員や取引先、投資家など多くの方々にやりたいことを理解してもらわなければなりません。
「天才じゃないぼくたちが、組織のチカラを生かすには、きっとコンセプトが効きますよ」というのがぼくの意見ですが、さていかがでしょうか。
栗田社長が考える、よんななクラブの次の10年にも「こんなのあるんだ!」は登場します。
「全国の中小零細事業者と大企業のギャップを埋め、ローカルの企業とともに成長していくことが次の10年のテーマだね。大企業はヒト・モノ・カネ・情報に恵まれているけど、中小零細にはそれがない。本当に厳しい状況なんです。大企業は日本の人口減少や景気動向に対して次々と手を打っているけれど、中小零細はなかなか何もできていない。その結果、信じられないスピードで格差が拡大しているの。よんななクラブはそんな中小零細企業を『こんなのあるんだ!』に生まれ変わらせることで地域間格差を解決していきたいんだ」
一方でコンセプトには寿命がある(このことは、また回を改めてお話ししましょう)わけですが、ともあれ、今後のよんななクラブに引き続きご注目ください。
どうぞ、召し上がれ!