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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.106

「ネット通販は、レッドオーシャンだった」~祝よんななクラブ10周年~

2017/04/20

47CLUBロゴ

このコラムでも、よく名前が出てくる「よんななクラブ」。地方新聞社が厳選したローカルの逸品を取り寄せできるサイトが4月で10周年を迎えました。最近年齢のせいで時間があっという間に過ぎるぼくから見ても、やっぱり大きなひと区切り。おめでとうございます。

栗田健一郎社長に「この10年、振り返ってみるとどうでしたか?」と尋ねたところ「ネット通販って、なんてレッドオーシャンなのか。それを痛感したよね。売り上げをつくること自体はやりようがあるけれど、継続的に収益を上げることのむずかしさ、ね」ということでした。「ネット通販にこだわり過ぎていたら、今ごろ間違いなく会社はつぶれていたよ(笑)。」

栗田社長
栗田社長

よんななクラブの経営方針の中で、ぼくが魅力を感じるのは「地方を元気に、日本を豊かに」というビジョンです。ここには東京に富が偏在する現状に対する強い危機感があり、と同時に「こんなに地方には素晴らしい商品やサービスがあるんだから、それをちゃんとビジネスにできれば、日本はもっと豊かになるハズ」という楽天的な明るさがあります。現状を俯瞰し、理想とのズレを前向きにとらえる姿勢は、まさにセンス・オブ・ユーモア。これだけ明快なビジョンを持っているケースは、大企業でもまれです。

だからでしょう。「これからの10年、どんな道を進むことになりそうですか?」と質問しても、栗田さんの答えはブレません。

「10年かかって、地方の実態、中小零細企業の実態、流通の実態などいろんなことを知ることができた。そして『地方を元気に、日本を豊かに』がどのくらい難しいかを把握できた。たとえばこの10年間、ローカルの中小零細企業を取り巻く環境は大きく変わったのに、多くの企業はまだ変われていない。いま変われていないことは『衰退』を意味するのにね。だからこそ『地方を元気に、日本を豊かに』は絶対にやらなければならない。そして終わりのない仕事だから、10年と言わず、永遠に取り組む覚悟ですよ」

今後よんななクラブの未来がバラ色だなんて無責任なことを言うつもりはありません。しかし「ビジョン」のチカラで自らの進む道(仮説)を明確にできているこの企業は幸せに見えます。

ピンク醤油
ピンク醤油

ところでその栗田さんに、いまよんななクラブで一番のオススメは何か、無理やり尋ねたところ、鳥取の「ピンク醤油」の名前が上がりました。2015年「こんなのあるんだ!大賞」最優秀賞受賞のこの商品。何がスゴイって、その見た目です。「調味料にファッション性を取り入れた」ということだそうですが、たしかに瓶の形状からして斬新です。とはいえ商品づくりは奇をてらった受け狙いではありません。鮮やかな色の正体は県内産のビーツ。ロシアを代表するスープ、ボルシチにも使われる野菜です。

これで晩酌のさかなにお刺身を食べたのですが、いやはや。視覚が味覚を裏切る感覚は強烈でした。でも考えてみれば世界的な前衛レストランでも五感を刺激する料理はもはや定番。ピンクの醤油は家庭の調味料が変わっていく先駆けなのかも…しれません。

食卓

さらにスゴイのは、この商品がきっかけのひとつとなって、いま鳥取県が「ピンク推し」になっていること。名産として知られる「らっきょう」の花がピンク色だとか、「恋はピンク」という理由で「恋山形駅」の駅舎がピンク色に塗り直されたり、ピンク色のSLが走ったり。もはや何が何だか、よくわかりませんが、楽しく盛り上がっているようです。

ピンクのSL
ピンクのSL
平井知事(左)まで登場

平井知事(左)まで登場

話がちょっと脇にそれました。今回は「よんななクラブの10年」の「ビジョン」を見ましたが、次回は「コンセプト」のレベルで考えてみたいと思います。

どうぞ、召し上がれ!

そうそう、この本。栗田社長が熱い熱い「あとがき」を書いてくださっています。どうぞご一読ください。