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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.111

大きな過ちは、計画が忠実に実行されるとき起こる

2017/07/13

北大演習林
北大演習林

 
北海道は、苫小牧。この町でお医者さまをしている小学校の同級生、志津木くんも「ほんと癒やされます」とオススメしてくれたのが北海道大学苫小牧研究林。地元では「北大演習林」と呼ばれている森です。
その面積はなんと2715ヘクタール。あの明治神宮の森ですら70ヘクタールだそうですから、ちょっと想像しがたいスケールです。エゾマツやミズナラがつくる深い森に、園内を流れる幌内川のせせらぎと、虫や鳥のさえずりが響きます。

人と森の物語
『人と森の物語 日本人と都市林』(集英社新書)
 

しかしこの森も少し前は荒れ放題だったようです。林学の専門家が入れ代わり立ち代わり「科学的根拠」に基づいて試行錯誤を繰り返した結果、枯れ木が目立ち、全体にやつれてしまったのでした。そこに赴任してきたのがイワナの専門家、石城謙吉さん。この間の経緯はドイツ文学者である池内紀さんのエッセー『人と森の物語 日本人と都市林』(集英社新書)に詳しいのですが、門外漢の石城林長は「素人の理想論」という非難にも節を曲げることなく、確固たる信念を持って改善に取り組みました。

「林業にせよ、河川事業にせよ、自然に対する仕事がいちばん大きな過ちを犯すのは、計画が忠実に実行された時なのである」
マニュアルやマスタープランというものは、できたとたん、人に頭を使わせなくなるものだ。ただその線にそってやっていればいい。ところが自然はついぞマニュアルどおりにはいかず、マスタープランなどと関係なしに、ほんのちょっとした条件しだいで大きく変化する。どれほど多くの自然が「計画遂行」の犠牲になってきたことか。
池内紀『人と森の物語 日本人と都市林』(集英社新書)より

マスタープランの代りに、現場で働くメンバーの経験から知恵を出してもらい、例えば湿原のひとつはメンバーの誰が何を持ち込んでもいいことにして、結果そこで何が茂るかは「植物に決めさせることにした」そうです。

いかがでしょうか。「市場に対する仕事がいちばん大きな過ちを犯すのは、計画が忠実に実行された時なのである」「市場はついぞマニュアルどおりにはいかず、マスタープランなどと関係なしに、ほんのちょっとした条件しだいで大きく変化する。どれほど多くのビジネスが『計画遂行』の犠牲になってきたことか」と読み替えることはできませんか?

ぐるぐる思考
ぐるぐる思考

「その手があったか!」をつくるための方法論「ぐるぐる思考」の磨くモードは、具体策を手に入れるためのステップです。ここでは、新しい方向性を指し示す「コンセプト」に従って、常識を覆すような具体策をつくらなければなりません。
「サードプレイス」「空飛ぶバス」「芸術は爆発だ」といったコンセプトの最大の魅力は、いままでの延長線上にはない方向性を、直感的に共有できる点にあります。それによってプロフェッショナルな技術をゼロベースから再結集、再構築できるからです。
ところが現実には、いったん「コンセプト」を手に入れると、早速マニュアルやマスタープランをつくって管理を強化したくなっちゃう方が(少なからず)います。これではプロジェクトメンバー個々の創意工夫が発揮されないので、「その手があったか!」が手に入る確率は必ず低下してしまいます。現場にある程度の自由を保障することは、とても大切です。

ツブ貝は美味しゅうございました
ツブ貝は美味しゅうございました

北大演習林がもう一つ、何が素晴らしいって、クルマで10分少々動くだけで最高の「海の幸」にありつけることです。それで苫小牧名物のホッキ貝をお目当てに、今回も駆け付けたのですが、ちょうど産卵期に当たる6月は禁漁なのだとか。仕方がないお話ですが、嗚呼!大粒な苫小牧産の肉厚な甘さと独特の歯ざわりを味わいたいゾ!
そういえば秋の北大演習林は紅葉が見事だそうです。その頃には漁も再開しているハズだし、また行っちゃおうかな?

コンセプトのつくり方

どうぞ、召し上がれ!