loading...

クリエーティビティー、テクノロジーに勝つ!

セカイメガネ №59

  • Rob Longuet-Higgins

2017/08/23

クリエーティビティー、テクノロジーに勝つ!

アメリカズカップは1851年に始まった最古の国際スポーツ大会だ。ヨットレースとして世界最大規模。優勝しても賞金は出ない。カップと名誉だけだ。1988年、ニュージーランドのチームが本戦に初出場した年、僕は生まれた。

あるセーラーはヨットスポーツをこう表現する。「冷たいシャワーを浴びながら、百ドル札を引きちぎるような行為だ」。アメリカズカップでは、ライバルたちに少しでも優位に立てるなら、惜しみなく百万ドル札を引きちぎる。

この30年で、レースヨットは「空飛ぶ機械」に進化した。変革を推進してきたテクノロジーには目を見張るばかりだ。今では風速の3倍で移動する能力を持つ。

イノベーションが続いても、一つだけ変わらないことがある。帆を動かすロープを引っ張るには頑健な肉体が必要なことだ(今では制御システムを作動させる油圧を人間がつくり出す)。セーラーたちは「グラインダー=胡椒挽き」と呼ばれている。彼らが操る部品が、巨大な胡椒挽きのハンドルに見えるからだ。

2017年。チーム・ニュージーランドは秘密兵器を投入した。上半身の力を活用してきた常識を拒絶し、ヨットに自転車乗りを乗船させた。その名は「サイクラー」。男たちはジムにあるエアロバイクのような機械にまたがった。下半身の力を有効利用できれば、上半身が生み出すパワーを凌駕できる。この発想、仕組みでチーム・ニュージーランドは、操船技術における圧倒的優位を手に入れた。平均速度がグンと上がったのだ。

いったん誰かがアイデアを実現してしまえば、なぜ今まで誰もやらなかったんだろうと思える。常識を疑い、打ち破ることの大切さ。進歩したいなら、現状維持を受け入れ続けてはダメだ。小さな改善に満足するのでなく、価値ある変革を生み出すのだ。

サイクラー作戦は大成功。予選ラウンドでスウェーデン、英国、フランス、日本を破り、決勝大会に進出した。チャンピオン・アメリカとの一騎打ちだ。果たしてサイクラーが究極の勝利をもたらすアイデアだったかどうか、巨額の資金や最新テクノロジーを打ち破れるのか、僕は最終結果を知りたくてワクワクしている。

(訳者注:17年6月26日、チーム・ニュージーランドはアメリカに8勝1敗で圧勝。17年ぶり3回目のカップ獲得に成功!)

(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)

Rob氏のイラスト