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その物語を紡ぐのは私たち

セカイメガネ №57

  • Anupama Ramaswamy

2017/06/21

その物語を紡ぐのは私たち

ずっと昔、私が広告業界で仕事を始めた頃、エージェンシーであらゆる仕事について訓練を受けた。営業、制作、媒体、クリエーティブ。私はクリエーティブ部門を希望し、受け入れられた。正式に訓練を受けた経験がなかったし、なにより魅力的だったのだ。

最初の上司は私に言った。「われわれはソリューションを提供する仕事をしている」。そのソリューションこそ「クリエーティブ」と呼ばれるものだ。でもやがて私は気付くようになった。「クリエーティブ」はもはや後付けの考えになってしまっている。データ、ツール、テクノロジーが議論の中心となった。クリエーティビティーは複雑なロケットサイエンスに変身してしまったようだ。

ツールはいつどこで何回そのCMを流せばいいか、何秒が最適か、私たちに正確に指図する。ペイドメディアを使って口コミを創る助けもする。けれど、その話題を業界以外の友人に話してもみんな退屈してポカンとしている(ホントに口コミは広がっているの?)。こんな現象は数年前までなかった。全てはもっと自然に回っていた。人々は広告を記憶し、話題にしていた。

私たちはなぜこの仕事に就きたいと思っていたのかすっかり忘れてしまった。クリエーティブ部門で働くことが一番魅力的だったのは、私たちがストーリーテラーだったからだ。私たちは魅惑的な物語を紡いでいた。信じられそうな物語、幻想的な物語、想像もつかない物語。

世界で成功しているブランドは今でも、同じ物語を常に新しく、異なる語り口で語っている。決して単調になることはない。飽きさせることもない。いつも新鮮で驚きを秘めている。私にとってそれこそが「クリエーティブ」だ。その物語は、担当するチーフ・クリエーティブ・オフィサーやチーフ・マーケティング・オフィサーが替わっても変わらない。

ツールはブランドの物語を、どこで何度語れば最適か教えてくれるかもしれない。でも、できないことがある。その物語をどう書くか、どうすればより面白く、劇的になるかは教えられない。だからストーリーテラーであり続けたいと思うのなら、コンピューターの好きにさせてはいけない。想像力を殺されてはダメだ。ブランドを創る物語を語れるのはあなたや私だけなのだ。だからこそ私たちはそもそも広告に夢中になってきた。

そうでしたよね?

(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)

写真も筆者。愛息、Anay
写真も筆者。愛息、Anay