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セカイメガネNo.58

広告が一番好きな方、お断りします

2017/07/24

私たちの業界はコミュニケーションを研究し、それを仕事にしています。日々クライアントと生活者を相手にする一方、一緒に働く仲間たちとのコミュニケーションがスムーズに取れているか、心配になるときがあります。

他社に転職していく同僚を送るたび、つくづくそう思います。10年間一緒に働いてきたコピーライター、5年間苦楽を共にしてきたアートディレクターが辞めていく。もしかしたら、自分のコミュニケーションが原因だったのではないかと反省したこともありました。

後任社員を採用するときも、コミュニケーションの大切さを痛感します。求職者を探すため、大慌てでSNSに投稿したのが次の文章です。

「電通韓国クリエーティブ・チームで次長クラスのアートディレクターを探しています。興味のある方は、ぜひご応募ください!」

送られてきた履歴書はわずか4通。気持ちが伝わらなかったのでしょうね。落ち着いて書き直し、もう一度投稿しました。

「電通韓国クリエーティブ・チームのアートディレクターのポジションに興味のある方は、ぜひ応募してください。私たちと一緒に笑い、悲しみ、楽しめる方を探しています。世の中で広告が一番好きな方は、お断りさせていただきます。世間には広告だけでなく、映画、音楽、小説、美術、旅行など、素晴らしいものがたくさんあるからです。発想力の豊かな方、思いやりのある方にお会いしたい。私自身、電通韓国に長年勤めてきました。最初はプロデューサー、コピーライターを目指していました。今はアートディレクターになり、A社、B社、C社を主なクライアントとして担当しています。メールで構いません。あなたの物語を聞かせてください」

今度は70通近い履歴書が送られてきました。率直に自分の思いを伝えた文章が、仕事を探している人の心に響いたのでしょうか。効果的なコミュニケーションの力は仕事であれ、プライベートであれ、人と人の間の全てに通用すると改めて気付きました。

分かりやすく、魅力的に、率直に。日々の忙しさにかまけてつい忘れてしまいがちです。でも、私たちがこの仕事を続ける限り、洋の東西を問わず、忘れてはいけないコミュニケーションの原則なんですね。

 

(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター
ハングル翻訳協力:電通韓国 チョン・ミンジ)

人と人の間に。写真も筆者
人と人の間に。写真も筆者