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こんにちは。電通法務マネジメント局の長谷川雅典です。

法務マネジメント局有志で、商事法務から『広告法』という書籍を2017年に出版しました。『広告法』は、広告に関連する法規制を網羅的に、実務的に、理論的に解説を試みたものです。

書影『広告法』

広告は、商品、ブランド、企業そのものを認知させ、良いイメージを醸成するために実施するはずですね。でも、広告でイメージをダウンさせてしまうようなケース、その最たるものが、法令違反の広告です。

そのような本末転倒になってしまわないように、この連載では、『広告法』の中から、特に実務的にフォーカスしたい点を取り上げて、Q&A形式で解説していきます。

今回は、広告の企画段階という切り口で、特に企画やプレゼンテーションにおける留意点について取り上げます。

Q.広告会社の従業員です。クライアントの新商品発売のキャンペーンについて競合プレゼンテーションが実施されることになり、わが社にもお声掛けを頂きました。
今度、オリエンテーションに参加しますが、どんなことに気を付ければよいでしょうか?
広告主が広告会社などに広告キャンペーンの提案を求める場合には、その広告キャンペーンの対象となっている商品やサービスなどについての情報やキャンペーンの概要を、事前に広告会社に対して伝える機会があります。これをオリエンテーションといいます。

オリエンテーションにおいては、新商品情報なども含む、秘匿性の高い情報が伝達されることもあります。

A.受領した情報が漏えいしないように情報管理の徹底をしてください。不注意によって情報が漏えいしてしまったような場合には、情報開示者である広告主から損害賠償請求を受けることもあります。
なお、プレゼンテーションに関わる業務の一部を協力会社に委託するために、協力会社に対して受領した情報を開示することもあるでしょう。広告主との間で秘密保持契約が締結されているような場合には、契約に基づく処理(例えば,広告主から承諾を得ること)をしなければなりません。また、情報の開示に当たっては、協力会社との間でも秘密保持契約を締結するべきでしょう。万が一、情報の漏えいが生じた場合には、ただちに、企業内の専門セクションなどに相談をするようにしてください。
【基礎知識】

秘密保持契約について解説します。

1.秘密情報の定義
秘密保持契約においては、「秘密である旨が明瞭に表示された書面、図表、その他関係資料などの有形の形態により開示される情報」のような形で、秘密情報が定義されることが多く、この定義に当てはまれば秘密情報に該当することになります。したがって、情報開示者側としては、この定義に該当する態様で情報を開示すれば、情報受領者がその情報を漏えいした場合には、秘密保持契約にて責任追及されます。

2.違反の場合
秘密保持契約に違反して情報を漏えいした場合には、そのことによって情報開示者側は発生した損害を賠償する義務を負います。また、漏えいによって発生する損害を最小限にとどめるために必要な措置を講じる義務が課される場合もあります。

(注)法律的観点での内容となっています。実際のビジネス取引で起こった場合、さらにさまざまな措置を講じる必要があります。

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著者

長谷川 雅典

長谷川 雅典

株式会社電通

1996年電通入社、マーケティング局と営業局で勤務の後、法務室に異動(部署名はいずれも当時)。2007年旧司法試験に合格し、司法修習を経て電通に復帰。弁護士・弁理士登録。著書に、『業界別・場面別 役員がしっておきたい法的責任-役員責任追及訴訟に学ぶ現場対応策-』(経済法令研究会、2014)(共著)、『経済刑事裁判例に学ぶ不正予防・対応策-法的・会計的視点から-』(経済法令研究会、2015)(共著)、『平成27年5月施行 会社法・同施行規則 主要改正条文の逐条解説』(新日本法規、2015)(共著)、『広告法規マニュアル第39号 不当表示規制の概要及び措置命令の最近の事例』(東京広告協会、2016)、『広告法』(商事法務、2017)(編集代表)。

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