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3分で分かる広告の法律落とし穴No.2

広告は誰のもの?

2018/02/08

この連載では、書籍『広告法』の中から、特に実務的にフォーカスしたい点を取り上げて、Q&A形式で解説していきます。

今回は、「完成した広告は誰のもの?」という切り口で、特に広告の著作権が誰に帰属しているのか、について取り上げます。

Q.完成した広告は誰のものなのでしょうか?
そして、それは広告の種類、例えば新聞広告、雑誌広告、テレビ広告、雑誌広告、インターネット広告、看板や中吊りなどによって異なるのでしょうか?
広告主は、ポスターを増刷したり、テレビ広告のぶら下がりを差し替えたりするためには、その広告を制作した広告会社や制作会社に再度依頼をしなければならないのでしょうか?

「広告は誰のもの?」という問い掛けにはいろいろな観点からの答えがあるのですが、このように、「完成した広告を自由に使うことができるか」という点を判断するに当たっては、著作権の帰属について考える必要があります。

A.テレビ広告や一部のインターネット広告のような「動画広告」の著作権は、原則として広告主に帰属します。
「動画広告」以外の広告、例えばグラフィック広告や音声のみの広告の著作権は、原則としてその広告を創作した者に帰属します。広告会社か制作会社、または広告会社と制作会社が共同して創作することが多いでしょう。その際は2社に著作権は帰属します。

【基礎知識】

著作権について解説します。

1.著作権とは?
①「思想又は感情を創作的に表現したもの」は著作物
②「著作物を創作した人」が著作者
③「著作者が著作物を独占的に利用できる権利」が著作権
④「著作権」は原則*として、著作者に帰属する
*例外について3に記載します。

2.著作権とは?(以下が全てではありません)
①他人に無断で自らの著作物を複製(コピー)されない権利
②他人に無断で自らの著作物を改変されない権利
③改変したものを利用されない権利

したがって、ポスターを増刷(複製)したりするには、著作権を有している人の承諾がいるわけです。広告は、一般的には広告会社や制作会社が広告主からの依頼を受けて創作をします。従って、当事者間で特に約束をしない場合には、広告の著作権は、原則として創作をした広告会社や制作会社(またはその両方)に帰属します。ただし、「動画広告」の場合は例外です。

3.「動画広告」の著作権の帰属
①「動画広告」は映画の著作物
②「映画の著作物」の著作権は映画製作者に帰属する
③「動画広告」においては、一般的には映画製作者は広告主となる

もっとも、広告には第三者が権利を有する素材(タレントや第三者の既存の著作物)を利用することが多いといえます。また、フリーのカメラマンやイラストレーターに写真を撮り下ろしてもらったり、イラストを描き起こしてもらったりして、素材として利用することもあるでしょう。このような場合には、それらの写真やイラストの著作権はカメラマンやイラストレーターに帰属します(当事者間の合意で譲渡を受けることもできます)。

広告の利用に当たっては、これらの素材の利用契約の制限を受けますから、実際には、著作権が帰属しているからといって、広告を完全に自由に利用できないことが多いといえるでしょう。そのためテレビ広告など動画の場合の改変でも、広告を創作した広告会社や制作会社に相談をする必要が生じます。

広告法の書影

詳しくは、広告に関連する法規制を網羅的に、実務的に、理論的に解説を試みた『広告法』を手に取ってみてください。