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この連載では、書籍『広告法』の中から、特に実務的にフォーカスしたい点を取り上げて、Q&A形式で解説していきます。

今回は、広告企画やプレゼンにおけるサンプルイメージの取り扱いについて取り上げます。

Q.広告の企画やプレゼンテーションの際に,完成形のイメージを共有するために,ヴィジュアル、音楽などについて既存の作品をサンプルイメージとして使うことがあります。どんなことに気を付ければよいでしょうか?サンプルイメージの利用としては、例えば既存の写真・映像などのヴィジュアルをサンプルイメージとしてプレゼンテーションにおいて使用し、「このようなイメージのグラフィック広告にします」と説明したり、企画チーム内で「このようなイメージのオリジナル曲を作曲するのはどうか」と内部で検討したりするようなケースです。

A.完成品がサンプルイメージに強く影響を受けることによって、著作権侵害(複製・無断改変など)が問題となることがあります。著作権法に基づいて使用の差止めや損害賠償請求を受けることもあるのです。

したがって、サンプルイメージの取り扱いについては、広告ビジネス実務的には細心の注意を払う必要があります。

あくまでもイメージ共有のためにサンプルイメージを利用した場合においても、完成した広告制作物が、サンプルイメージとは別の独立した創作物として認められるかどうかについて迷うことがあるかもしれません。

このような場合には、企業内の専門セクション等のチェックを受けるようにしてください。

【基礎知識】

著作権について簡単に解説します。

1.著作権とは?
①「思想又は感情を創作的に表現したもの」は著作物
②「著作物を創作した人」が著作者
③「著作者が著作物を独占的に利用できる権利」が著作権

2.著作権が有する権利とは?(以下が全てではありません)
① 他人に無断で自らの著作物を複製(コピー)されない権利
② 他人に無断で自らの著作物を改変されない権利
③ 改変したものを利用されない権利

したがって、他人が思想又は感情を創作的に表現したもの(=著作物)を無断で広告に利用(無断複製)したり、少しだけ変えて利用(無断改変)したりする場合には、著作権侵害の問題となり得るというわけです。

詳しくは、広告に関連する法規制を網羅的に、実務的に、理論的に解説を試みた『広告法』を手に取ってみてください。

広告法書影

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著者

長谷川 雅典

長谷川 雅典

株式会社電通

1996年電通入社、マーケティング局と営業局で勤務の後、法務室に異動(部署名はいずれも当時)。2007年旧司法試験に合格し、司法修習を経て電通に復帰。弁護士・弁理士登録。著書に、『業界別・場面別 役員がしっておきたい法的責任-役員責任追及訴訟に学ぶ現場対応策-』(経済法令研究会、2014)(共著)、『経済刑事裁判例に学ぶ不正予防・対応策-法的・会計的視点から-』(経済法令研究会、2015)(共著)、『平成27年5月施行 会社法・同施行規則 主要改正条文の逐条解説』(新日本法規、2015)(共著)、『広告法規マニュアル第39号 不当表示規制の概要及び措置命令の最近の事例』(東京広告協会、2016)、『広告法』(商事法務、2017)(編集代表)。

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