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アイデアという名の少女に恋して

セカイメガネ №66

  • Joao Flores

2018/03/30

アイデアという名の少女に恋して

「ある日、男の子は、その女の子に出会った」

物語はそう始まる。クリエーティブの魅力あふれる世界が垣間見えたとき、少年は、恋に落ちた。4月のある晴れた日は、これまでになかった一日になった。少年はエレベーターに乗り、14階で降りる。晴れ渡る青空より青い目の、降り積もる雪より白い肌を持つ少女が微笑を浮かべ、少年を待っていた。少女と不思議な生物だけが生息する空間で、少女はアイデアと呼ばれていた。

少年は自分の情熱を見つけた。奇妙な感覚が彼を捉える。胸を締め付けられるようだ。二人は永遠の恋人になると感じた。少女は、都市にさまよう絶滅危惧種。芸術家。放浪者。どこに行っても他の人と違う。感じ方が違う。他のどこでも見つからない。深く刻まれる印象。退屈。不確か。プリマドンナ。彼女こそクリエーティブ王国の支配者。他にない世界に生きている。自分だけが住む世界に。

取り巻きたちは、限定された世界で彼女を甘やかし、理想化する。本心と裏腹の追従。略語と外国語交じりで話す人たち。ありとあらゆることを語り、何も語っていない。何でも知っていて、何も知らない。彼らは、エンターテイナー。俳優。道化。監督。細部にこだわり、フォーマットに拘泥し、商品カットに取りつかれている。商品カットとは何ぞやを知り尽くした、世にも珍しい人たち。

彼らが集まる場所は、まるでパレード。衣装を着飾る代わりに、エゴを着飾り、競い合う。自分は君より優れている。あなたより私は優れている。僕。私。自分。少女の周りで、永遠に、一秒単位で生きる人たち。一秒は24フレームで構成されると知る人たち。人生で起きることは、24フレームの中ですべて起こり得ると考える人たち。失敗も冒険も妥協もない。彼女に恋したとき、彼らにクレージーの称号が与えられる。クリエーティブな人と呼ばれる。

少年の瞳にクリエーティブの世界が映っている。少年はアイデアという名の少女に出会う。あらがえず、恋に落ちる。どこまでも、落ちていく。

 

(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター 

  イラストレーション:段 希子)