セカイメガネNo.69
カクテルをサーバーで再発明する
2018/06/20
2018年1月、台北にアジア初のドラフト・カクテル・バーがオープンした。カクテルを生ビールと同じようにサーバーからグラスに注ぐ。16年、ニューヨークのブルックリンで開店した「Yours Sincerely」がこのジャンルの草分けで知られている。
僕のカクテルのイメージは、雰囲気のあるバーでバーテンダーに注文して一杯ずつ作ってもらう酒だ。一方ビールは、バーで飲むとは限らない。家でも、ビアホールでも、公園の一角だって構わない。カクテルをビール感覚で、しかもバーまでやって来て楽しんでもらえるか。それが、ドラフト・カクテル・バーの挑戦だ。
人気のクラフトビールバーを思わせる簡素な店内設計。たるの中にはビールではなく、5カテゴリー18種類のカクテルが装填されている。フィズ。パンチ。コブラ―。オリジナルカクテル。ノンアルコール。炭酸水はあくまで自家製にこだわる。サーバーから直接注ぐことで鮮度を保ち、品質のばらつきを減らし、客の注文にスピーディーに応えられる。
これまでより安価に提供できるのも強みだ。多種類の酒をストックする必要がなくなり、在庫コストを削減した。従来のバーなら1杯400台湾ドル(約1500円)のカクテルが、半分以下の150~200台湾ドル(約550~750円)で飲める。メニューはコンテスト優勝歴のあるバーテンダーが考案。あっという間に台北の若者たちに受け入れられ、愛される場所になったのも無理はない。
サーバーの採用で、コンセプト・スピード・価格に違いを出せるようになった。カクテルを楽しむためにバーに行く人を増やす試みが、この街で始まっている。ちなみに僕がいまハマっているのは、No.4のファンシー・ジン・カクテル。ジャスミンティーの味わいに、シェリー酒の甘味を感じる一杯だ。エレガントで、キメが細かいのが気に入っている。
ドラフト・カクテル・バーが、ビール党まで足を運ばせるトレンドになれるのか。グラスを傾け、じっと注目している。
(写真提供:台北Draft Land、二点とも)
(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)