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オーディオアドの新時代がやってきた!No.1

“音”による広告は今、なぜ価値を持つのか

2019/09/30

スマートスピーカー

音楽のストリーミング配信や、インターネットラジオの普及に伴い、「オーディオアド」の価値が注目されています。そんな中、電通グループでは、オーディオアド配信サービス「Premium Audio広告」を提供開始しました。

オーディオ市場がどう変わりつつあるのか、その中でPremium Audio広告がどんな役割を果たすのか、解説します。


音声コンテンツのオンライン化で音声市場は急成長

音声広告と聞くと、ラジオ広告がイメージされると思いますが、実は今「オーディオアド」という名前で、全く新しい形に生まれ変わろうとしています。まずは、背景にあるオーディオコンテンツの進化から整理してみましょう。

背景①音楽聴取はCD・ダウンロードからストリーミングへ

音楽の聴取スタイルは、通信環境の拡充にともなって、CDからダウンロード形式へ移り変わり、今はオンライン配信で聴くストリーミング形式が主流になってきました。RIAA(米レコード協会)の調査によると、音楽コンテンツの75%の収益は、ストリーミング形式が占めています。

アメリカレコード協会(RIAA)のレポートを元に作図。音楽業界の収益を支えるのは、ストリーミング。
アメリカレコード協会(RIAA)のレポートを元に作図。音楽業界の収益を支えるのは、ストリーミング。

音楽をいつでもどこでも楽しめる「Spotify」などの音楽ストリーミングサービスは、日本でも急速にユーザー数を伸ばしています。

こうしたサービスでは、曲間にオーディオアドを挿入して、その広告収益を権利元の音楽レーベルやアーティストに還元しています。つまり楽曲をプラットフォームに提供したアーティストは、コンテンツが楽しまれた量によって評価され、その分の収益を得られるというエコシステムになっています。

背景②オンライン化でラジオ広告市場も活性化

従来のラジオ放送も、オンライン化にともなって市場拡大のチャンスを迎えています。

ラジオを移動中の車内や家庭で聴く習慣は、アメリカを中心に世界中でありましたが、通信環境やデバイスが普及したことで、より場所を選ばず楽しまれるようになり、聴取数は急増しました。

これに伴い、デジタルオーディオアドの収益は、世界的に右肩上がりで推移しています。日本でもラジオ放送番組を気軽に楽しめる「radiko」(ラジコ)が定着し、新たな広告市場を生み出しました。

IAB/PwC Internet Ad Revenue Report, FY 2018を元に作図。デジタルオーディオアドはラジオなどトーク系コンテンツの広告収益に後押しされ、前年比22.9%成長。
IAB/PwC Internet Ad Revenue Report, FY 2018を元に作図。アメリカにおけるデジタルオーディオアドはラジオなどトーク系コンテンツの広告収益に後押しされ、前年比22.9%成長。

背景③ニュースや英会話―形式にとらわれないポッドキャストの登場

ここ数年で存在感を増している「ポッドキャスト」も注目の存在です。音声番組をインターネットで手軽に配信できる形態にしたもので、リスナーはスマホアプリなどを通じて気になる番組をチェックできます。

中には著名人や企業によるポッドキャストもあり、最近ではマーク・ザッカーバーグ氏や、オバマ前アメリカ大統領夫妻が立ち上げたコンテンツ制作会社が提供を開始すると発表しました。音楽ストリーミング大手Spotifyも、直近で2社のポッドキャスト会社を買収するなど、この領域に力を入れています。

FacebookのザッカーバーグCEOはテクノロジーと社会に関する議論をポッドキャストコンテンツとして発信
FacebookのザッカーバーグCEOはテクノロジーと社会に関する議論をポッドキャストコンテンツとして発信。

また、昨年6月にはGoogleがポッドキャストアプリをリリースし、Appleもオリジナル番組を制作中と報道されるなど、各社がコンテンツ強化に資金を投じています。日本でも「Voicy」(ボイシー)が日本経済新聞社と業務提携し、「ながら日経」という音声番組を共同制作するなど、新たな取り組みが活性化しています。

背景④聴取デバイスの普及とグローバルプラットフォーマーの動向

音声コンテンツを聴く環境も引き続き変化を続けています。

Amazon EchoやGoogle Homeなど、音声で操作する「スマートスピーカー」は、アメリカで3人に1人が所有しており、オーディオアドには4人に1人が接触するなど、生活者への新たなコンタクトポイントとして確立されています。

Adobe Digital Insightsの調査結果を元に作図。アメリカでは、テレビやディスプレー広告よりもオーディオアドが人々の興味を引くという調査結果も。
Adobe Digital Insightsの調査結果を元に作図。アメリカでは、テレビやディスプレー広告よりもオーディオアドが人々の興味を引くという調査結果も。

声の操作はタイピングよりも気軽なため、音声データは生活者のより本音に近い嗜好・行動が把握できるといわれています。そこで、大手グローバルプラットフォーマーたちは、これまでオフラインと捉えられていた生活導線上にセンサーを設置し、マーケティング情報を収集することに巨額の資本投下を始めています。

例えばAmazonは、自社で展開する不動産情報サービス「TurnKey」経由で契約成立した人に、スマートスピーカーEcho DotやEcho Show、スマートドアベルのRing Video Doorbell合計数万円分を無料で設置する特典を提供しています。

生活者とのオフラインでの接触をデータとして捕捉し、効果的なマーケティング戦略を立案していくという流れは、大手プラットフォーマーに限らず今後も加速していくでしょう。

オーディオアドのブランディング活用が加速する!

このように「メディア」と「視聴環境」の変化を背景に、オーディオアド市場は盛り上がりを見せています。

そんな市場変化をよく表したのが、2019年のカンヌライオンズです。ラジオ&オーディオ部門では、従来のラジオ広告を抑えて、Amazon Echoを使ったHBOの人気SFドラマ「WEST WORLD」のキャンペーンが、グランプリを受賞しました。

HBO制作の人気SFドラマ「WEST WORLD」のキャンペーン。
HBO制作の人気SFドラマ「WEST WORLD」のキャンペーン。

Alexaに話しかけると、「WEST WORLD」の登場人物の声で会話が始まり、1万1000種類のセリフで、60種類のストーリー展開を楽しめるというインタラクティブな施策です。

このキャンペーンは“音声のやりとりを通じてユーザーのエンゲージメントを高める”というオーディオメディアの新しい在り方を提示しました。

ユーザーは音声コマンドで選択して、次の展開へ進んでいく。平均15分もの時間プレーされた。

 

ここで注目したいのは、施策のインタラクティブ性もさることながら、“没入感”の高さです。

音声は情報が絞られた、ある種「二次元的」な媒体です。それゆえ、内容理解のために集中するユーザーに独特の”没入感”と、物語がすぐそばで展開されているかのような”親密感”を与えるのです。

ここまでのまとめ
音声市場が急成長した背景にあるのは…

  • 背景①音楽聴取形態がフィジカルからストリーミングに移行し、場所・空間の制限がなくなった
  • 背景②既存のラジオ市場もオンライン化に伴って活性化、新たなプレーヤーも登場
  • 背景③ニュースや英会話、形式にとらわれないポッドキャストが登場。さらに聴取時間を押し上げ
  • 背景④グローバルプラットフォーマーが聴取デバイスの普及、コンテンツ制作に本気の資本投下を開始

ここからは、今後オーディオアドに注目すべき理由と、最新のオーディオアド配信サービスである電通のPremium Audio広告について具体的に見ていきましょう。

Premium Audio広告

Premium Audio広告は現在radikoとSpotifyをパートナーに迎え、オーディオアドを配信しています。

プラットフォーマー

今後オーディオアドに注目すべき理由と電通のPremium Audio広告

・注目すべき理由①「ながらのユーザー」にアプローチが可能になる

まず、音声は「新たなコンタクトポイント」になります。動画やバナー広告は“視覚の奪い合い”ですが、音声は読書、家事、運転など、何か別の作業をしている「ながら」のユーザーへ、アプローチが可能です。

つまり、動画やバナーにプラスしてリーチ機会を“純増”できます。スマホをポケットに入れて歩いている時でも、音であれば、さまざまな状況でユーザーに接触できるようになります。

・注目すべき理由②音声ならではのブランディング効果

バナー広告は画像のみで、ブランディングに使うには情報量が少なくなります。動画広告は情報量が多いものの、集中して映像を見続けなくてはならないし、どの部分に注目するかで内容理解に個人差が出ます。

その点オーディオアドならば、企業のサウンドロゴを3秒流しただけでも「あ、あのCMだ!」と想起させるブランディング効果が見込めます。音だからこそ伝わる親しみや覚えやすさを活用して、今まで埋められなかった「中間レイヤー」を補えるようになるわけです。

・注目すべき理由③ユーザーの聴取態度

radikoやSpotifyは、ユーザーが「能動的に」聴く傾向にあるメディアです。こうしたメディア上で耳にする広告は、ネガティブな感情が生まれにくいという調査結果があります。Premium Audio広告ではこうしたプレミアムなメディアのみに広告を配信できます。

・注目すべき理由④ターゲティングと効果測定

Premium Audio広告はデジタル運用型広告なので、ターゲティングや効果測定ができます。

例えば、「今、90年代のJ-POPを聴いているユーザー」や「通勤中で電車移動しているユーザー」に向けて広告を打つことができます。なおかつ、統計化・匿名化されたデータから、そのユーザーたちに「何回同じCMを当てると興味を示してくれるのか?」あるいは「購入検討してくれるのか?」といった効果分析も可能です。

さらに…

  • スマホアプリへの接触頻度が高いユーザーに向けた広告を打つ
  • 同じ番組を聴いている人でも、属性や嗜好の違いに合わせて届ける広告クリエーティブを変える
  • テレビCMを見たユーザーに対して、CMを放送しない時期に企業のサウンドロゴを聴かせてリテンションを図る

など、組み合わせ次第でこれまでにないメディアプランニングができます。

もちろんユーザーデータ以外にも、時間や位置情報、天気のような外部データと掛け合わせたターゲティングも考えられます。

・理由⑤プラットフォームの安全性と品質

この数年、広告が意図せず公序良俗に反するサイトやコンテンツに配信されることが、社会問題となりました。

Premium Audio広告では、radikoなら放送局、Spotifyなら音楽レーベルの許諾を得た環境でコンテンツを発信しているため、広告主のブランド価値を損なわない、安全性と品質が担保されています。

ここまでのまとめ
今後オーディオアド、Premium Audio広告に注目すべき理由

  • 理由①「ながらユーザー」へのアプローチが可能になる
  • 理由②情報量をコントロールして、音声ならではのブランディング効果が見込める
  • 理由③能動的にコンテンツを楽しむ聴取態度が良いユーザーへ接触できる
  • 理由④ターゲティングや効果測定ができる
  • 理由⑤プラットフォームの安全性と品質が保たれている

以上、オーディオアドの可能性や価値を高め、より効果を上げていくPremium Audio 広告ですが、これらを可能にしているのは、電通グループに新たに加わったVOYAGE GROUPが構築する配信プラットフォームです。

次回はVOYAGE GROUPから、Premium Audio広告を支える技術について紹介します。