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LGBTQ+調査2023No.5

LGBTQ+当事者が本当に求める企業の取り組みとは?

2024/07/24

電通では昨年で5回目となる「LGBTQ+調査2023」を実施しました。本連載では調査結果をさまざまな切り口から分析します(前回の記事は、こちら)。

昨今では、企業がLGBTQ+支援を宣言したり、LGBTQ+のプライドを表現するレインボーがデザインされた商品を発売したり、各業界でさまざまな取り組みが行われています。

そこで、今回の調査では、実際にLGBTQ+当事者は企業に対してどのような取り組みやサービスを求めているのかを明らかにしました。本記事では、各業界が今後取り組むべきことは何か、メディアや職場・学校にはどのような変化を求めているのか、調査結果からひもといていきます。

「差別的な言動の店員がいる店」は当事者・非当事者とも使いたくないが8割を超える

LGBTQ+当事者に、「利用したいと思う商品・サービス」を聞いたところ、「店員がLGBTQ+研修を受け、言葉づかいやサービス提供に配慮がある店」(69.5%)、「LGBTQ+支援を宣言している店や企業の商品・サービス」(65.2%)、「同性婚(婚姻の平等)の法制化に賛成する企業の商品・サービス(64.7%)」の順でスコアが高い結果となりました。

LGBTQ+

一方で、「利用したくないと思う商品・サービス」としては、「店員がLGBTQ+に対して差別的な言動をとる店」(全体80.8%)が最も高く、LGBTQ+当事者層で81.4%、非当事者層で80.8%と、非当事者層からも忌避されることがわかります。

次いで、「LGBTQ+を差別・排除するような広告をおこなう商品・ブランド・サービス」(全体69.2%)、「LGBTQ+支援をうたいながら、実質的な取り組みは行っていない企業の商品・サービス」(全体67.1%)という結果になりました。

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店員の言葉づかいや態度など、サービス提供に関する項目のスコアが高い傾向にあり、企業の取り組みの第一歩としてはLGBQ+研修の実施など、働く人一人一人が知識をつけることが重要であると考えられます。

同性パートナー・カップルでも契約できる、保険や住まいのサービスが求められる

金融業界や住まい・不動産に対しては、どんな取り組みが望まれているのでしょうか。

「金融業界に対して望むこと」としては、「同性パートナーを生命保険の受取人に指定できるようにしてほしい」(31.7%)が最も高く、次いで「同性パートナーと住宅ローン(ペアローンや収支合算ローンなど)を組めるようにしてほしい」(27.7%)という結果となりました。

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「住まいや不動産に関して望むこと」としては、「同性カップルでもスムーズに賃貸契約ができるようにしてほしい」(36.6%)が最も高く、次いで「同性パートナーでも賃貸借契約の保証人になれるようにしてほしい」(33.4%)となり、賃貸契約の制度が同性カップルも想定した内容になることが求められていると考えられます。

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実際に、LGBTQ+当事者であることを理由に管理会社やオーナーから断られるといった入居差別が存在しています。また、同性カップルということで不動産会社の窓口で偏見を持たれたり、関係性を探られることで嫌な思いをするケースもあります。

不動産会社の中には、こうした問題に対し、当事者が抱える住まいの課題に関する情報発信、LGBTQ+フレンドリーな住居の検索機能の搭載、同性カップル向けの個別相談会の開催など、さまざまな取り組みを行っている企業もあります。

スタッフ視点で勝手に判断しないサービス・接客を

さらに、「ホテルやレジャーなど観光業界や、レストランなどの外食産業に対して望むこと」として、「カップル割などカップル向けのサービスは同性・異性にかかわらず利用を適用してほしい」(31.9%)、「2人で利用した際は、同性・異性同士にかかわらず、スタッフは関係性を聞かないでほしい」(30.1%)、「見た目の性別で判断しない接客をしてほしい」(29.4%)の順でスコアが高い結果となりました。

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調査結果から、見た目だけで勝手に判断し接客をすること、同性パートナーであることでサービスが受けられないことへの課題が見られました。今後は、多様な人がいることを前提にした接客、同性・異性同士にかかわらずカップル割が利用できるといったルールの見直しが必要であると考えられます。

メディアが与える影響力を意識することが必要

「メディアに関する団体や企業に望むこと」としては、「ホモネタなど性自認・性的指向を笑いのネタにした表現はやめてほしい」(36.9%)が最も高く、次いで「古いジェンダー観や家族観に基づいて、有名人のプライベートを報道するのをやめてほしい」(29.6%)、「LGBTQ+に差別的な発言を繰り返す出演者はキャスティングしないでほしい」(29.4%)という結果となりました。メディアが与える影響力を意識し、情報発信をきっかけに当事者に対して不利益や差別的な考えが広がらないような表現を行うことが重要です。

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性自認や性的指向が、採用・配属の判断基準にならない職場を

「職場環境に対して望むこと」としては、「性自認や性的指向にかかわらず公平に評価してほしい」(35.2%)、「性自認や性的指向にかかわらず採用・配属をおこなってほしい」(30.0%)のスコアが高い結果となり、本来、評価や配属には関係がないはずの性自認や性的指向が判断基準の一つにならないことが求められています。

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服装に関しては、「制服がある場合は、性別に関係なく選べるようにしたり、性別に関係のないデザインにしてほしい」(24.2%)のスコアが高い傾向にあります。実際に、制服のある企業の一部では、自分らしくいられるアイテムの組み合わせを選べるようにしたり、男女で分かれていたヘアスタイルに関するマニュアルを統一したり、さまざまな取り組みが進んでいます。

「LGBTQ+支援をうたいながら、実質的な取り組みは行っていない企業は利用したくない」と考える人がおよそ7割という結果から、当事者が本当に求めていることは何かという視点を持ち続け、アクションを起こすことが大切です。さらに、その企業で働く一人一人がLGBTQ+の正しい知識を持てるようサポートすることが求められているのではないでしょうか。

【調査概要】
「電通LGBTQ+調査2023」概要
調査主体:dJサステナビリティ推進オフィス
調査協力:電通ダイバーシティ・ラボ

<スクリーニング調査>
 調査対象:20~59歳の個人5万7500人
 調査対象エリア:全国
 調査時期:2023年6月14日~19日
 調査方法:インターネット調査

<本調査>
 調査対象:20~59歳の個人6240人(LGBTQ+層該当者600人/非LGBTQ+層該当者5640人)
 調査対象エリア:全国
 調査時期:2023年6月14日~19日
 調査方法:インターネット調査

※LGBTQ+当事者層割合、人口構成比に併せて、都道府県、性別、年代(20〜30代/40〜50代区切り)でウェイトバックをかけています。
※当事者の子どもを持つ親のデータについては回答数が少ないためウェイトバックはかけていません。
 

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