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サステナブルファッションの「新基準」No.1

ファッション産業の価値基準を変える新・認証システム

2025/07/09

re-creation

ファッション産業におけるサステナビリティの重要性が高まる中、企業やブランドの取り組みを“見える化”し、生活者や社会との新たな関係を築こうとする動きが生まれています。伊藤忠ファッションシステムが立ち上げた「Re-Creation」も、その挑戦の一つです。

本プロジェクトでは、企業のサステナブルな取り組みを可視化し、信頼できる仕組みとして社会に提示する認証スキームを開発。生活者が商品を手に取るときに、価格やデザインだけではなく「環境や生産現場に配慮できる選択かどうか」を考えるきっかけをつくり、業界全体はもちろん、生活者も共にバリューチェーンを再創造することを目指しています。

なぜ伊藤忠ファッションシステムが旗を上げ、新たな認証基準の開発に至ったのか。そして、その認証の導入企業第一弾となったアーバンリサーチの思いとは?

伊藤忠ファッションシステム ifs未来研究所の山下徹也氏、アーバンリサーチ執行役員の萩原直樹氏、Re-Creationのコミュニケーション設計に伴走し、委員会組織にも参画している電通の外崎郁美氏が語り合いました。

<目次>
新たな認証基準で挑む社会変革
素材・価格・デザインの先にある「誰かの幸せ」を選択肢に
業界に先駆けてサステナビリティを掲げてきたアーバンリサーチ
行動変容は“気づき”から。生活者が変わるきっかけをどうつくるか
信頼される認証として、生活者の選択に寄り添い続けるために

新たな認証基準で挑む社会変革

外崎:まず、Re-Creationがどのような組織なのか、改めて教えていただけますか。

山下:Re-Creationは、伊藤忠ファッションシステムが設立した一般社団法人で、2024年の秋からファッション業界を皮切りに、アパレルや服飾雑貨を対象とした独自のサステナビリティ認証を開始しました。企業単位ではなく製品単位で審査を行い、基準を満たしたものに二次元バーコードを付与することで、生活者に情報を届け、行動変容を促す仕組みです。認証項目はウェブサイトでも公開しており、企業の取り組みを可視化することで、生活者が商品を選びやすくしています。この取り組みを通じて、生産者と生活者双方の、信頼性と透明性のあるコミュニケーションを目指しています。

外崎:構想段階から非常に綿密に準備されていたと伺っていますが、立ち上げに至るまでの背景についてお聞かせください。

山下:構想自体は3年前にさかのぼります。ファッション業界に関わる方々、延べ400〜500人ほどにヒアリングを行いながら、課題の整理と方向性の検討を進めてきました。その中で明らかになったのが、業界の構造的課題を解決するには、企業側の取り組みだけでなく、生活者の行動も一体となって変わる必要があるということでした。2023年4月に展示会で構想を発表したところ、予想を上回る反響があり、業界内外から関心を寄せていただきました。半年後、さらに大きなイベントでの登壇依頼をいただき、以前からSDGsの研究をご一緒していた慶應義塾大学の蟹江憲史教授と共に発表の機会を得ました。この場をきっかけに、大学やメディア、広告会社、国際認証機関、行政、金融など多様なステークホルダーとの協働が徐々に生まれていきました。

外崎:今回、Re-Creationを株式会社ではなく、一般社団法人として立ち上げた理由はどのような点にあったのでしょう。

山下:株式会社だと、どうしても営利的な印象を持たれがちですし、企業や業界の垣根を越えて活動する上での心理的なハードルもあります。一方で社団法人であれば、利益を株主ではなく活動に還元できる構造になっており、目的が明確であればあるほど、より多くの方に参加していただきやすくなると考えました。また、伊藤忠グループとしても初の一般社団法人であることに意味があります。私たちはこの取り組みを非財務情報、いわば「未来財務」として位置づけています。利益を求めていたら株式会社にしていたはずですが、一般社団法人たるRe-Creationでは社会的価値をどう生み出すかを第一に考えています。
 
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外崎:今回、認証基準を開発した背景や目的についてもお伺いしたいです。

山下:ファッションは本来、生活を彩り、気持ちを豊かにするものだと思っています。ただ近年は、過剰在庫や環境汚染、労働問題といった複合的な課題が結びつき、業界全体にネガティブな印象を与えているのも事実です。その背景には、正しい評価のための仕組みがなかったことがあると感じています。Re-Creationの認証基準は、そうした課題に対して明確な基準を設け、生活者にも分かりやすく伝えるための新しい指標として開発しました。

外崎:その指標となるのが、10種類の認証基準項目ですね。設計にあたっては、どういった点を重視されたのでしょうか。

re-creation
認証基準項目は、外部専門家とともに、サプライチェーンの課題を洗い出した上で、SDGs17のゴールと照らし合わせて独自の基準を策定。SDGsの上位概念である「5つのP」のうち、「人間(People)」「地球(Planet)」「繁栄(Prosperity)」をもとに、「社会」「環境」「動物福祉」「トレーサビリティ」「ジャパンメイド」の観点から、ファッション業界における上記Ver1.0の認証基準を策定している。詳しくはこちら

山下:重視したのは、単なるチェックリストではなく、重要課題に根ざした設計にすることです。たとえばオーガニックコットンは、日本では「肌にやさしい素材」として広く知られていますが、本来の意義は農薬使用の抑制や水質・土壌への配慮、そして生産者の労働環境改善にあります。Re-Creationでは、そうした本質的な視点に立ち返り、背景にある重要課題をしっかりと伝えることを意識しました。

外崎:国際的な認証基準との整合性についても考えたのでしょうか?

山下:日本の市場に流通している衣料の98%が海外で生産されているという現実を踏まえると、グローバルスタンダードな視点を持つことは必須でした。既存の国際的な規格や科学的なエビデンスも多数参照しながら、生活者が納得する視点でていねいに設計していきました。ただ、国際認証は取得のハードルが高く、そのために生活者にもあまり認知されていないという課題もあります。そこで、Re-Creationではコストの最適化や手間を省いて効率化するための視点も反映させています。

素材・価格・デザインの先にある「誰かの幸せ」を選択肢に

外崎:Re-Creationの立ち上げに際して、私たちもコミュニケーション設計に伴走させていただきました。その中で生まれたのが、「その一着で、世界をあたらしく。」というコンセプトです。改めて、この言葉に込めた思いをお聞かせください。

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山下:「一着」という言葉には、かなりこだわりました。「衣食住」と言われるようにファッションは日常の暮らしに根付いており、無意識のうちに選んだ一着が、実は社会や環境に影響を与えているという事実があります。だからこそ、自分の意思で手に取ったその一着が、世界を少し変えるきっかけになっていく。その実感を持っていただきたいという思いがありました。日々の選択の優先順位が少し変わるだけで、社会のあり方も自然と変わっていく。Re-Creationは、そんな変化を支える仕組みでありたいと考えています。

外崎:服を選ぶとき、色やデザイン、価格といった要素が判断軸になるのは当然ですが、その服がどういう環境で、どんな人たちの手によって作られているのかまで想像する人は、まだまだ多くないのが現状です。そうした“見えない背景”にも意識を向けてもらいたいという思いが、まさにこのコンセプトの中に込められていますよね。そんな思いを視覚的にも伝えたのが、今回制作したコンセプトムービーでした。

https://www.youtube.com/watch?v=K1VK_IvqjnY
【Re-Creation】concept movie 2025 Staff List:〈dentsu team〉CD/CW 外崎郁美、PL/CW 大澤希美恵、AD 山口さくら、BP 島田諒/秋山駿 〈movie〉Producer 須藤江理/臼井明里、PM 横山街、監督/editor 川島真美、カメラマン 柏井彰太、スタイリスト 田中寿希、キャスティング 柴田芽育/NA Hattie Mortimer、カラリスト 安田真理、ミキサー/MA録音作業 浅田将助、オンラインeditor 稲本真帆

外崎:制作の過程では、山下さんをはじめアパレルの現場を経験してきた皆さんの声もたくさん伺いました。「暮らしを楽しくしたい」「日常に彩りを与えたい」という純粋な思いでファッションの仕事に携わる方が多い中で、実は自分たちが関わっている産業の裏側で起きている環境破壊や人権問題を知って、ショックを受けたという声も少なくありませんでした。だからこそ、生活者も生産者も、お互いに思いを馳せられるような視点を持てるきっかけをつくりたいというのが、ムービーの制作意図でもありました。

山下:あまり理屈っぽく説明するのではなくて、見た人に直感的に感じ取ってもらえるような映像になっていますよね。

外崎:伊藤忠ファッションシステムの海外の取引先企業にもご協力いただいて、実際の映像素材を取り寄せるなど、リアリティのある内容にしましたね。押し付けがましくなく、でも確かに伝わるように。そういった距離感は大事だと感じます。

山下:若い世代からの反響も多くて、うれしい驚きがありましたね。それから、コンセプトの中にある「未来を変えるのは、私たちの今の選択だ。」という一文。外崎さんに書いていただいたものですが、チームのメンバーがとても共感してくれたフレーズでした。自分たちの意思で動きたい、自分ごととしてこの活動に関わりたいという思いが、言葉に宿ったのだと思います。そうやって一緒に考えながら形にできたのが、すごく良かったと感じています。

業界に先駆けてサステナビリティを掲げてきたアーバンリサーチ

外崎:今回、アーバンリサーチが第一弾企業として、Re-Creationの認証を導入した背景についてお聞かせください。

萩原:最初の接点は、2022年に当社が「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」という団体に正会員として参画したときです。当時、山下さんが事務局を務められていて、そこからご一緒する機会が増えました。課題解決に向けて一緒に汗をかいた仲間というか、個人的にも非常に信頼している方です。その後、Re-Creationを立ち上げるというお話を聞いたときに、基準評価委員会のメンバーとして声をかけていただき、私ともう1名で参加することになりました。委員会で議論を重ねる中で、取り組みの意義や内容に深く共感していましたので、迷わず「やってみよう」と即決しました。

外崎:御社では、サステナビリティへの意識はいつ頃から高まり始めたのでしょうか。

萩原:私は2013年に入社したのですが、社内ではそれ以前から動きがあったようです。たとえば2011年の震災後、東北エリアでコットンを育てて、そのコットンを使って商品を作り、地域を盛り上げていく「東北コットンプロジェクト」に発起人の一社として参加していました。また、使用済みの羽毛を回収・再生する「Green Down Project」にも初期から参加しています。いずれも自発的にメンバーが集ってプロジェクトを牽引・発展させていった印象があります。

外崎:現在のように全社的な取り組みとして広がっていったのは、いつ頃からでしょうか。

萩原:2018年にSDGsへの本格的な対応を掲げて、ウェブサイトでいち早くリリースを出しました。当時、他の企業がまだそこまで発信していなかった中で、私たちが先陣を切って走ろうと、SDGsとアーバンリサーチの“R”を組み合わせた「SDR」というサステナビリティチームを立ち上げたんです。社内口コミでメンバーを募り、バイヤー、ウェブ担当、バックオフィスなど部門を超えた15人ほどのメンバーが集まりました。毎週ミーティングを重ね、2019年に「アーバンリサーチSDGs基本方針(3C)」を策定しました。

山下:当時、国内アパレルメーカーではあまりサステナビリティを全面に掲げる動きがなかったので、すごく印象に残っています。

外崎:そのチームでは具体的にどのような活動を展開していたのですか?

萩原:たとえば社外向けにサステナブルと表現する際に本当に問題ないことを確認したり、社内のサステナビリティ意識向上のため活動をしたり、一部ブランドで行っていた「Green Down Project」を全社的に横展開したりしました。2020年にはSDRメンバーが「THE GOODLAND MARKET」というサステナビリティに特化した店舗を立ち上げました。その流れで最近では大阪・関西万博にアップサイクル系の雑貨やアパレルを販売する店舗を出店しています。

the goodland market

外崎:サステナビリティへの取り組みは必ずしも短期的な利益にはつながらないこともある中で、これだけ活動が発展していくまでには社内調整も大変だったのではないかと想像します。どのようにして機運が高まっていったのでしょうか。

萩原:大きなターニングポイントの一つになったのが、「commpost」という廃棄衣料のアップサイクルブランドの開発です。これが環境省のグッドライフアワードをはじめとする複数のアワードを受賞し、障害者のインクルージョン推進に取り組む世界的な活動「The Valuable 500」に加盟するきっかけになるなど、社会的評価につながったことで、社内でも納得感や期待感が醸成されたのではないかと思います。

外崎:そのような取り組みを脈々と続けてこられたからこそ、Re-Creationの導入も自然な流れとして決まったのですね。今回認証を取得された商品について教えていただけますか。

萩原:先ほど申し上げた「commpost」ブランドのウェアで、再生コットンを30%、バージンコットンを70%使用しています。

commpost

外崎:再生素材はどのように調達されているのですか?

萩原:主に自社の不良品など廃棄予定のアイテムです。たとえば、製造工程で破損したものや、店舗で日焼けしてしまったものなど、販売が難しくなった製品です。さらに、それだけでは足りないということで、今回は今治の老舗タオルメーカー・藤高さんの販売できないタオルを原料として活用させていただきました。藤高さんにとっても、廃棄されずに商品として活用されるのはプラスですし、われわれとしても資源の再利用を推進できるので、まさに双方にとって価値のある循環が成立しています。

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外崎:今回申請された認証項目についても教えていただけますか。

萩原:2項目を申請しました。一つは「雇用倫理」で、これは生産プロセスの全工程が国内で完結しており、一番高いレベル3の基準を満たしています。もう一つは「資源循環」で、リサイクル素材の使用について申請しています。国内生産はコストもかかりますが、だからこそ高めた付加価値をしっかり伝えるのが私たちの役割だと考えています。今回のRe-Creationの認証も、その価値を伝える手段になればと期待しています。

行動変容は“気づき”から。生活者が変わるきっかけをどうつくるか

外崎:Re-Creationの認証項目にも含まれている「雇用倫理」は、環境に比べて少しイメージが湧きづらい側面もあると感じます。生活者にとってはどのように伝えていけると良いのでしょうか。

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山下:私たちの調査では、雇用倫理のような“見えづらいテーマ”が可視化されたとき、イメージしていた現場の姿と実態が異なれば、大きなインパクトにつながることが分かっています。実際に、自分の選択が生産者の働き方に影響を及ぼすことが理解できると、価格が多少高くても雇用倫理に配慮された商品を購入したいと考える人は一定数います。ただし、そのためには情報の正確性が非常に重要です。だからこそ、信頼できる認証を通じて、裏付けされた情報を届ける必要があると考えています。

萩原:おっしゃる通りで、たとえばA商品とB商品があって、A商品は通常の生産で1万円、B商品は雇用倫理や環境への配慮を重ねた結果、1万2千円だったとしたら、今のところ、多くの方はその違いを知る機会がないため、価格だけでA商品を選んでしまうことが多いと思います。でも、その2千円の差がどうして生まれているのかを知ることができれば、B商品を選ぶ理由になるかもしれません。Re-Creationのような認証によって製品の背景が可視化されれば、価格差に納得感が生まれる。認証制度はその手がかりになる仕組みだと思います。今はその実態や背景が見えづらいからこそ、グリーンウォッシュのような話題が出ることがあるのかもしれません。こうした認証があることで、しっかり取り組んでいることが証明される意義は大きいと思います。

山下:私たちも、多くの企業が誠実に取り組まれていると実感しています。ただ、それを示す手段が非常に限られているのが実情です。海外の認証制度もありますが、取得コストが高額で、さらに1年で更新が必要なものも多い。そこでRe-Creationでは、認証の有効期限を設けず、製品が生まれた時点の状態を審査するという方式をとっています。その結果、取得にかかるコストも抑えられ、持続可能な仕組みとなっています。

外崎:企業単位やブランド単位ではなく、製品単位で登録できることも、参加のハードルを下げる要素になりそうですね。

山下:そう思います。ただし、認証基準のレベル自体は下げていません。たとえば工場監査を必須とはせず、提出された情報を精査することで判断する仕組みにしていますが、必要があればインタビューや追加確認も行い、信頼性を担保します。その柔軟性によって、審査にかかるコストを抑えつつ、質の高い認証が実現できているという点は、Re-Creationならではの特徴です。

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外崎:アーバンリサーチのお客さまと日々接する中で、「多少高くても、背景に共感できる商品を選びたい」という声は増えていると感じますか?

萩原:個人的な感覚としては、そういった声は徐々に増えてきているように思います。特にSDGs教育を受けて育った若い世代からは、そうした意識が強く感じられます。「安いから」ではなく「意味があるから」選ぶという考え方が根付いている印象です。

山下:Re-Creationの設計にあたって、インターンの大学生たちにもヒアリングを行いました。「服の内側についている品質表示タグに、認証情報を確認できるQRコードが入っているのはどうか?」という問いには、ほとんどの学生が「問題ない」と答えましたが、「下げ札につけるのは?」と聞いたら、それは「すぐに捨ててしまうものだし、紙がもったいない」と否定的でした。また、品質表示タグにつけることで、二次流通でも価値が伝わるし、買う前にスマホで調べてから店舗に足を運ぶという購買行動にもつながるという話が出てきました。それ自体が「新しい買い物体験」だと彼らは表現していました。

外崎:まさに今の時代を象徴するような新しい買い物体験ですね。

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信頼される認証として、生活者の選択に寄り添い続けるために

外崎:第一弾の導入企業であるアーバンリサーチとして、Re-Creationにどのような期待を寄せているのか、そしてRe-Creationとしての今後の展望について、それぞれお聞かせください。

萩原:Re-Creationがさまざまなブランドの商品をしっかり認証していき、認証を受けたことの価値が業界でどんどん高まっていくと良いなと思っています。認証機関としての信頼性が上がれば、登録する側としても参加の意義がより明確になりますし、そのような可能性のある取り組みに最初から関わらせてもらえたことはラッキーでした。今後、参加企業を増やすための取り組みがあれば、ぜひ協力したいと思っています。

その一方で、私たちとしてはサステナブルであることに甘えてはいけないとも思っているんです。「サステナだから高くてもいいでしょ」ではなくて、まずは商品としての魅力があることが大前提。その上でA商品が1万円、B商品が1万2千円だったときに、たとえば「Bはサステナブルなだけじゃなくて、素材やデザインにも価値があるからこの価格なんだ」と納得してもらえるような工夫をしていきたいです。店頭で素材やデザインに惹かれて手に取ってみたら、実は環境にも配慮された商品であることをスタッフがさりげなく教えてくれる。そのようなスタンスが私たちの考える“かっこよさ”でもあるので、そこを追求していきたいと思っています。

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山下:私たちとしては、まずは信頼して参加してくださった皆さんに対して、約束したことをきちんと果たしていく。それが何よりも大事だと思っています。認証の信頼性を高めるという意味でも、そこは最優先で取り組むべき部分です。

中長期的な視点では、Re-Creationを国際的な基準として確立していきたいという構想もあります。現在、各国が独自に規制を進めていますが、それぞれがバラバラで対応が難しい状況です。私たちが目指すのは、それらを横断して柔軟に対応できる、普遍的で信頼性の高い基準づくりです。

それから、ESGの観点では今後、金融や投資の領域ともつながっていく可能性があります。実際、統合報告書においても、私たちの認証がESGやサステナビリティに関する指標として活用できるという評価をいただくようになってきています。日本は統合報告書の公開件数が世界でもトップクラスなので、そうした場でRe-Creationの価値が発揮されるよう整備を進めていきたいと考えています。

外崎:世界にも通じる共通の指標があることで、評価や比較もスムーズに行えるようになりそうですよね。

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山下:おっしゃる通りです。もう一つ大切にしたいのは、生活者との接点です。たとえばアーバンリサーチのように、お客様との関係性を大切にしているブランドにとって、その先にいる生活者にも自然に価値が伝わる仕組みである必要があります。

ファッション業界では、トレンドを消費して使い捨てる流れが長らく続いてきました。これはグローバルSPA(製造から小売りまで自社で手掛けるビジネスモデルで海外展開している企業)の台頭など、経済メカニズムの変化によって起きたことでもあるので、否定するつもりはありません。ただ、今改めて「良いものを長く使いたい」という感覚が若い世代の中でも生まれてきていると感じます。Re-Creationは、そのような生活者意識の変化に合わせて、ロングライフの視点も取り入れています。

循環型社会に向けた議論でも、技術的には今すぐに実現できたとしても、それを推進するためのルールや経済合理性、インセンティブの仕組みなどが必要になります。また、キャパシティ問題を解決するために国内で処理せずに海外に出すと、それはそれでCO2排出の問題が発生します。つまり、短期的に取り組むべきことと、中長期的に整備すべきことの両方に目を向けなければなりません。Re-Creationは、その両方の視点を併せ持ち、企業の実践や生活者の意志をしっかりと拾い上げられる仕組みでありたい。進化を止めず、時代に合った認証であり続けたいと思っています。

萩原:アパレル業界は「世界で2番目の環境汚染産業」とも言われていて、その責任も重い。だからこそ、横のつながりを強めて、業界全体でこうした課題に取り組んでいけるような機運が必要であると感じています。Re-Creationがその旗振り役になってくれるとうれしいですね。

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