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電通ワカモン「若者まるわかりナレッジ」No.2

「信頼できる情報源はない」と感じる若者。これからのメディアはどうあるべきか?

2025/08/20

電通若者研究部(以下、電通ワカモン)は高校生、大学生、社会人1~3年目の若年層を中心に2年ぶりとなる大規模調査を実施(調査概要はこちら)。その調査結果をもとに若者のメディアとの関わりをひもといた「若者まるわかりナレッジ2025(メディア篇)」を作成しました。(お問い合わせはこちら)

本記事では、調査から得られたファインディングスを紹介しながら、若者のメディアとの関わりについて見ていきます。

SNSは、「ほぼ世論」

インターネットの普及により、メディア環境は大きく変化しています。新聞・雑誌・ラジオ・テレビといった「4マス」への接触率はインターネットを下回り、「マスメディア」という言葉自体の再定義が求められる時代に突入しました。

特に若者にとっては自由に使える時間は意外と限られています。バイトやインターン、部活動、課題、そして友人との時間など、多くのことに忙殺されており、「テレビを見るための時間を作る」という考えそのものが選択肢から外れている若者が多くなっています。

若者は倍速視聴、切り抜き動画、さらにAIによる要約やレコメンドなどを駆使して、自分に必要な情報だけを効率よく取捨選択しています。このような「自分軸」で情報を選ぶ姿勢が、すでに当たり前の感覚となっているのです。

また、若者にとってSNSを「世論そのもの」と捉える感覚が急速に強まっています。高校生の実に6割以上が「だいたいの世論はSNSを見ればわかる」と回答。ニュースがSNSで炎上し、それをテレビが取り上げる光景を幼少期から見てきた世代にとって、「SNSで話題になること=世間で話題になること」という構図は、ごく自然な感覚なのです。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

情報収集時も、参考にするのはSNSでの反応や友人との会話が主であり、情報選択の基準は「自分ゴト化できるかどうか」に集約されています。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

信頼できる情報源はない

一方で、若者にとって信頼できる情報源がほとんど存在しない現状も見逃せません。「参考にしている」と回答されたSNSも、「信頼できる情報源」としての評価は10%前後と低く、さらに約4人に1人が「信頼できる情報源は一つもない」と回答しています。これは若者が、特定の情報源を無条件に信じるという前提を持たず、自らの情報リテラシーを鍛えながら複数の情報源を比較し、自分なりの「納得解」を追求していることを意味します。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

また、マスメディアへの不信感は年々強まっています。特に若者はリスクや表現に敏感で、テレビなどの過剰な演出や不快な表現に強く反応します。実際に大学生へのヒアリングでも、「テレビのコメンテーターが時代遅れな発言をしていると嫌な気持ちになる」「若者のことが分からないまま発信していて置いて行かれる気がする」といった声があがっており、「情報が自分に向けられていない」と感じた瞬間に視聴意欲も共感も途絶えてしまうと推察できます。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」「調査概要2」を参照ください

さらに、不祥事報道や偏った伝え方が続くことで、メディア全体への信頼も揺らいでいます。今、若者が重視しているのは「何を伝えるか」よりも「その情報にどう向き合っているか」というメディア側のスタンスです。発信内容だけでなく、その背景にあるスタンスや誠実な対応姿勢が信頼や共感を左右する決定的な要素となっています。

結局大切なのは、媒体そのものよりもコンテンツの面白さ

信頼できるメディアがない状況の中、メディアの種類に関係なく「コンテンツそのものが面白いかどうか」を重視する傾向が強まっています。つまり、媒体の力ではなく、コンテンツそのものの魅力が視聴や購読の決め手になっているのです。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

一方、若者は「時間を無駄にしたくない」という意識も非常に強いため、「せっかく見たのに面白くなかった」という状況はタイムパフォーマンス(タイパ)的に最悪です。そのため、本編を見る前にSNSの切り抜きや要約動画を使って事前に“面白さの保証”を求めることが日常化しています。

実際、「テレビ番組をテレビでは見ないが、SNSの切り抜きではよく見る」と回答した若者は61.8%と高く、短尺で興味を引く入り口設計が今後のコンテンツ開発において欠かせないポイントになっていくでしょう。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要1」を参照ください

SNSでバズったネタがテレビに取り上げられたり、テレビ発のコンテンツがSNSで拡散されたりと、メディアの行き来が当たり前に起きています。もはや「どちらが主か従か」という発想ではなく、テレビとSNSはお互いを高め合う“相互補完”の関係になっていくべきだと考えます。

これからのテレビの価値とは?

テレビ離れが進み、メディアへの信頼感も低下してきている昨今において、これからテレビが担っていくべき役割や価値はなにか?電通ワカモンは、今後テレビの2つの価値がますます重要になっていくと考えます。

①上の世代との「共通言語」へ
実はいま、多くの若者が「テレビは世の中への影響力が大きい」と感じていることが明らかになっています。興味深いことに、自分自身がテレビを見ているかどうかにかかわらず、こうした印象を抱いているのです。

なぜ、若者は「テレビを見ていないのに影響力がある」と感じるのか?その理由を聞いてみると、特に多かったのが「上の世代が見ているから」という声でした。「自分は見ないけれど、親や上司などの世代はよくテレビを見ている」「高齢化が進む中で、インターネットよりテレビに触れている人が多い」といったコメントが多く挙げられています。

つまり、若者は自分自身がテレビを見ていなくても、多くの人がテレビに触れているという事実を冷静に把握しており、それを通じてテレビの持つ社会的影響力を客観的に認識しているということです。

さらに、「テレビが親や上司との価値観のギャップを埋める役割を果たすと思うか?」という質問に対しては、実に7割以上が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答しました。これは、テレビが世代を超えて共有できる「共通言語」として、新たな役割を果たす可能性を示していると考えます。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要3」を参照ください

②機運醸成から「機運定着」へ
テレビはこれまで「機運をつくる(機運醸成)」メディアとして、大きな役割を果たしてきました。国民規模で同時に情報を届けるという強力なリーチ力を生かし、社会的なムードや価値観を広めていく「機運醸成」の場として機能してきたのです。

しかし、インターネットが普及し、テレビ離れが進んだことで、若者にとって「SNS=世論」という認識が広がりました。その結果、社会的な機運を醸成するメディアは、テレビだけではなくSNSや個別コンテンツを含めて極めて多様化しています。

このような状況の中で、これからのテレビが果たすべき役割とは一体なにか?それは、「機運を定着させること」だと、私たち電通ワカモンは考えています。

実際に、大学生の約9割が「テレビで繰り返し取り上げられることで、知らなかった価値観や考え方が『常識』になることがある」と感じており、さらに6割以上が「SNSで生まれた価値観でも、テレビで取り上げられなければ定着せず消えてしまうこともある」と答えています。例えば「LGBTQ」「メンズメイク」「男性の日傘」なども、テレビで取り上げられたことによって、自分にとっての当たり前が変化したと感じるという声が数多く見られました。

つまり、SNSで点在する形で生まれたムーブメントを、テレビがまとめて社会全体に「定着」させる。この役割こそが、今後テレビが担うべき新たな価値であると考えます。

電通若者研究部
出典については、記事末尾の「調査概要3」を参照ください

以上が調査から得られたファインディングスです。若者に情報を伝える際のメディア選定や、コンテンツ企画などにぜひお役立てください。

【調査概要1】
調査名:若者まるわかり調査
調査機関:電通マクロミルインサイト
調査時期:2024年12月
調査方法:インターネット調査
調査対象エリア:全国
調査対象・サンプル:高校生以上の未婚15~46歳男女 2000ss (以下セグメントごとに男女均等割付)
(内訳)高校生 400ss/大学生 400ss/社会人1~3年目 400ss/社会人4~10年目 500ss/社会人11~20年目 300ss
※上記サンプルの抽出にあたり、15~69歳の一般男女(高校生以上、未既婚・職業不問)を対象にスクリーニング調査を実施、その結果から人口構成比に基づいた10000ssを抽出し、別途分析に使用

【調査概要2】
調査名:サークルアップ調査
調査機関:電通若者研究部(ワカモン)
調査時期:2025年5月
調査方法:インターネット調査
調査対象エリア:全国
調査対象・サンプル:大学生 200ss

【調査概要3】
調査名:サークルアップ調査
調査機関:電通若者研究部(ワカモン)
調査時期:2025年7月
調査方法:インターネット調査
調査対象エリア:全国
調査対象・サンプル:大学生 500ss


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