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電通グロースデザインユニットが提供する「スタートアップ360度支援」No.1

スタートアップをグロースさせる電通グロースデザインメソッドとは?

2019/10/03

電通が培ってきたコミュニケーションとマーケティングの力をスタートアップの事業グロースへと生かす、「360度事業支援サービス」電通グロースデザインユニット(以下、DGDU)のサービスや事例を紹介する本連載。

第1回は、DGDUの設立背景から提供サービスまでをユニット推進リーダーである、わたくし伊藤契太がお伝えします。

<目次>
資金ではなく、スキルを持った「ヒト」を投資
スタートアップの事業成長に寄与する「電通グロースデザインメソッド™
ギルド型ユニットで効率化、職能により最適なチームメンバーをアサイン

 

資金ではなく、スキルを持った「ヒト」を投資

現在、数多くのスタートアップ企業が生まれ、それを支援する投資の動きも大きくなってきました。実際に2018年は、1426社のスタートアップ企業が約3880億円もの資金を調達しています。

一方で、資金調達はしたものの、「採用拡大により人が増え過ぎて今まで通りに事業が回らない」「事業計画通りに事業がグロースできていない」といった声は少なくありません。

事業がグロースするためには、立ち上げ期ではスキルを持った「ヒト」が「モノ」つまり事業を構築し、「カネ」つまり資金を調達するといったサイクル、そして拡大期では「ヒト」を基点に「カネ」を調達し、「モノ」を進化させるといったサイクルを回す必要があります。

しかし、スタートアップ企業においては「ヒト」「モノ」「カネ」のいずれもが十分ではありません。中でも事業をつかさどる「ヒト」の量・質の不足がウイークポイントになっているケースがよくあります。

そこで、DGDUでは、スタートアップの各成長フェーズで足りないアセットに対して、それを解決し得るスキル(※下記図参照)を持つ「ヒト」を投資することでスタートアップのグロースを支援しています。

具体的には、今までの電通のコミュニケーションビジネスを筆頭に、スタートアップ向けのメンタリングサービス(※1)、アクセラレーションプログラム(※2)、グロースハックプロジェクト(※3)などのソリューションを通じて知見・ノウハウを蓄積した専門家が、スタートアップ企業の持つ多様な企業課題に360度で対応します。

図版1
※1 メンタリングサービス
人やチームの成長支援方法の一つ。「メンター」と呼ばれる支援者が、ヒトや事業の成長に必要な要素を助言に基づき支援していく取り組み。
 
※2 アクセラレーションプログラム
優れた技術、プロダクト、ビジネスアイデアを持つスタートアップを募り、さまざまな支援を行うことで事業成長を加速(アクセラレート)させていく取り組み
 
※3 グロースハックプロジェクト
事業設計からKPI/KGIのデザイン、運用に合った最適なツールやリソースの提供、ABテストなど細かい打ち手の分析・運用などアプリやサービスを改善する取り組み

 

つまり、DGDUがスタートアップに投資するのは、資金ではなく、「ヒト」です。

スタートアップ企業内に経験を持った専門家がいないが故にグロースできていなかった機会損失を、スキルを持ったヒトを“投資”することでなくすことができると考え、DGDUを設立しました。

DGDUは主にシード/アーリー/ミドルステージのスタートアップ企業を対象にしています。

特に、以下のようなケースで活用いただけると考えています。

CASE1. シードフェーズ例
起業した後にサービス自体のPMF(Product Market Fit)を達成するまでは、事業自体のキャッシュフローは赤字(死の谷)になるものであるが、死の谷を抜け出し、Jカーブを駆け上がるまでの期間が読めない。そのため、目先の利益を優先した組織体制を構築してしまい、中長期的な視点での事業計画が立てられていない場合。

CASE2. アーリーフェーズ例
調達時にベンチャーキャピタルや事業会社が求めている事業計画や、ERP(Enterpise Resource Planning)、LTV(Life Time Value)などの管理指標がそろっておらず、実態と企業評価額に乖離が大きい場合。

CASE3. ミドルフェーズ例
Bラウンド(事業として成功させることを目的とした資金調達)に大きく成功した後、EXIT(IPO or M&A)への道筋が見えておらず、将来の目標を見据えた上での成長戦略が描き切れない場合。

図版2

スタートアップの事業成長に寄与する「電通グロースデザインメソッド™」を開発

DGDUの目的は、スタートアップ企業の事業の成長を支援し、パートナーとして継続的なお付き合いができるようになることです。そのため、受注した依頼内容がスタートアップの事業グロースに寄与する可能性が低いと考えられる場合は、それより優先してやるべきことを提案します。

電通は広告会社なので、DGDUに対してもコミュニケーション戦略の相談を受ける機会が多いのですが、私たちはコミュニケーションを考える前にもっと大切なことがあると考えています。

それはサービス自体のPMF (Product Market Fit:課題を解決できるプロダクトが提供され、市場にも受け入れられている状態)の達成です。そのため、プロダクトアウトではなく、マーケットインベースでの開発を通して、マネタイズを含めた成長戦略をまずは描くことを重視しています。

そこで、DGDUは「電通グロースデザインメソッド™」を開発。コミュニケーション領域だけでは解決できない、プロダクト領域も対象にスタートアップを支援しています。

図版3

「電通グロースデザインメソッド™」には下記のような特徴があります。

・事業の見直しを提案することも
例えば、バーティカル(特化型)メディア系スタートアップから「広告枠の売り上げが上がらないので、どうすれば広告が売れるようになるかアドバイスが欲しい」と相談を受けることがあります。私自身の経験上、プラットフォーマーでない限り、ユーザーの増加にビジネスの成長が比例することがないため、ユーザー増=広告売上増=企業価値増にはならないケースがほとんどだと考えています。

なぜならバーティカル(特化型)メディアの場合は、特定の分野に特化して深い情報を提供している半面、ユーザーの母数がプラットフォーマーに比べて限りがあるためインプレッションに依存したアドネットワークでの収益化が難しく、また純広の在庫にも限りがあるため、一定量を超えてマネタイズに成功しているメディアは少ないように感じているからです。

この相談をした企業が、成長が鈍化してきているスタートアップである場合、まず「誰のどのような課題」を解決するためのサービスなのか(PSF:Product Solution Fit)を再度検証し、その課題を解消可能なサービスプロダクトのユーザー受容度(PMF:Product Market Fit)を見ていくことからスタートする場合が多いです。

PSF、PMFが達成されてユーザー満足度に貢献できる状態になれば、従来型のクライアント側からの純広告型だけでなく、ユーザーも巻き込んだ多角的なマネタイズ戦略の構築余地が出てくると考えているためです。

・非連続な事業成長目標支援
昨今、非連続的な事業成長を果たすために、事業の多角化を検討する企業が増加しています。その際によく聞く失敗談が「流行に乗って事業投資を行い、新規事業を立てたが、PMFを達成できず立ち上げてはたたむことを繰り返しているケース」です。

以下の図は、メディア企業におけるグロース戦略の一例です。

まずは事業計画から達成すべきフェーズを個別にKPIとしておき(下記図内青色箇所)、コンテンツ事業、メディアの広告事業、フォーメーションの最適化と順を追って堅実な土台づくりを行っていきます。

そして、収益基盤が安定したタイミングでグロスアップ(メディアのプレミアム化)やクロスセル(自社ブランドアセットを活用した隣接事業<Brand StudioやD2C>)へ多角化を行います。

図版4

・目線をそろえる共創事業に適した報酬体系
「電通グロースデザインメソッド™」を可能にする方法として、報酬体系は「業績連動型レベニューシェア(RS)」や「ストックオプション(SO)」をベースとしています。

下記図で示すように、事業の収入/支出/ユニットエコノミクス/販管費を共有いただき、共同管理する指標を整えた上で事業計画を策定。事業の成長評価を定点的に行うのですが、単に固定フィーで取り組むよりもRSやSOで取り組んだ方が利益目標の目線が合致し、成長にコミットできると考えるためです。

図版5

さらに広告投資を含む事業投資の検討時も、同じ目線で現状の経営状況から共に目標ROIを設定し、投資計画の妥当性を議論することができます。

ギルド型ユニットで効率化、職能により最適なチームメンバーをアサイン

DGDUは、スタートアップ支援に必要な職能を持ったさまざまなプロフェッショナルを電通社内外から集結した体制をとっています。

ユニット内には下記の図のように、「ベンチャーアーキテクト」「ビジネスデザイナー」「ファイナンスアドバイザー」「BizDev」「マーケティングプロフェッショナル」「クリエーティブディレクター」「コピーライター」「コミュニケーションデザイナー」の職能を持ったメンバーが在籍し、各事業形態や課題に合わせてアサイン、プロジェクトチーム化します。

例えば某Customer Generated Community(インターネットを活用して消費者自身が主体となって生成していくコミュニティ)サービスを提供するスタートアップでは、その特異性から受容性構築に向けて「ビジネスデザイナー」「マーケティングプロフェッショナル」とマネタイズモデル構築に向けて「ビジネスデザイナー」「ベンチャーアーキテクト」の計4人を主にコンパクトな体制で取り組んでいます。

このように、コンパクトな体制にすることで、スピード感を持ち、効率よく事業の成長を支援することができます。

図版6

また、私たちはスタートアップの各フェーズのさまざまな課題感を聞き、問題が起こり得るポイントを発見し、解消してきました。あらゆる事業のグロースに対応すべく、電通グループ内外で更なる協業体制を構築し、プロジェクトを推進しています。

図版7

今回は、「DGDUってスタートアップの何を支援しているの?」と聞かれることが多いので、ユニット自体の説明をしました。

今後はDGDUが各外部パートナーと共同で開発しているメソッド紹介や、電通グロースデザインメソッド™を活用した事例などを各DGDU担当者から紹介していきます。

スタートアップ企業の方や大企業の事業開発を担当されている方で、電通グロースデザインユニットに興味を持たれた方は、ぜひご一報ください。

お問い合わせ:dgdu@dentsu.co.jp