loading...

ゆうこすとMERYが語る、イマドキ女子の消費をもたらす「共感」の力

2019/10/03

“インスタ映え”という言葉や、空前のタピオカブーム。10代~20代のイマドキ女子たちの選択から生まれるブームは、市場にも大きな影響を与えます。TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアを使いこなし、情報の発信と受信を繰り返している彼女たち。そんな彼女たちの消費インサイトは、一体どこから生まれるのでしょうか。

今回は、「モテクリエイター」として10~20代の女性から絶大な支持を得ている「ゆうこす」こと菅本裕子さんと、U25の女性をターゲットとした情報メディア「MERY」でライターのマネジメントを担当する望月菜穂子さんに、等身大の視点で「10~20代のイマドキ女子の消費インサイト」について、語ってもらいました。

ゆうこすさん(左)と望月菜穂子さん
ゆうこすさん(左)と望月菜穂子さん

若者の間に生まれている「小さな経済圏」にどうアプローチするか

望月:私は大学時代からMERYのライターをしていて、今は18~25歳のMERY公認ライターのマネジメントを担当しています。その中で感じるのは、情報があふれる今、嗜好も細分化していて「これをすれば読者に刺さる」という正解はないということです。

例えば「かわいい」もさまざまで、ガーリーなものを「かわいい」という人もいれば、ベージュでシンプルなものを「かわいい」という人もいる。だから私たちにとって「かわいい」は「女の子にとって理想的な姿のもの」だと思っています。モードでかっこいいものも、海外セレブのゴージャスなテイストも「かわいい」です。

MERYに100人もの公認ライターが在籍している理由も、100人いれば100人の「かわいい」があると考えているから。それでも女の子って、日々の気分次第で好きなものが変わるところもあるので、すべての女の子に刺さる記事をそろえようと思ったら、100人いてもまだまだ足りないですね。

ゆうこす:確かに、最近の若い子たちって「ぶりっこ族」とか「サバサバ族」のように「小さな経済圏」がたくさんできているように感じます。なので「みんな買ってください!」と言うより「ぶりっこ女子、買ってください!」というように、「この人に見てほしい、買ってほしい」と明確にした方がいいと思っています。

それから、今に限らずかもしれませんが、10~20代の女性はかなり人の目を気にしていますよね。SNSも自分のブランディング用になっている。だから何かを買って発信するときも、言い訳になるようなハッシュタグを付けたり。例えば自分が関わった商品の販売でも「ゆうこすが売ってます!デザインしました!」というと、モテたいの?と思われる可能性があるから買いづらくなってしまう。「大人つや肌メイク」とか、ゆうこすがいなくても成立するようなコンセプトを立てて、買ってもらいやすくすることも意識しています。

ゆうこすさん

代弁とストーリーから生まれる「共感」が消費のトリガー

望月:MERYのユーザーが、モノを買うときのトリガーになるものは、

①明確な目的・ニーズがあるもの  ②潜在的な憧れ  ③日常的な悩み

と、大きく分けて三つあると感じています。

まず一つ目は純粋に「明確な目的・ニーズがあるもの」。例えば、旅行でいえば、パッキングが面倒で嫌だと思っている子がいるとします。それを解決するアイテムが紹介されていれば、買ってみようと思いますよね。

もう一つは「潜在的な憧れ」です。自分では言語化できていなかった、潜在的な憧れを代弁してくれる記事があると「私もこれに憧れてた!」と共感できます。例えば「人生で可愛くなりたい瞬間は二度訪れる」という記事のように、その憧れに近づくための方法が一緒に書いてあれば、実践してくれるんです。

最後は「日常的な悩み」。日常的な悩みは人によってさまざまですが、一番身近でささいなことだからこそ、行動に移しやすいのだと思います。

ここをうまく突いた記事で、スマートフォンのケースが人とカブりやすいという悩みを持っている人に向けて、あるブランドのケースを紹介するものがあったのですが、記事掲載後に通常の50倍から70倍くらいの発注があったそうです。

悩みに寄り添うだけでなく、「キラキラ好きにはコレ」「彼氏とおそろいで持ちたい人にはコレ」といろんな層に刺さるよう、タイプの違うケースを紹介していたのも反響の大きかった理由だと思います。

また、ただ商品を紹介するだけではなくて共感できるストーリーの中で紹介したことも、買うきっかけになったのではないでしょうか。

望月菜穂子さん

ゆうこす:「代弁」は、共感につながる大事なポイントですよね。例えば「ぶりっ子して、男の人にモテたい!と思っているけど、そんなこと言ったら叩かれちゃうよね…」という女子の代弁者として、私がSNSで「ぶりっ子あるある」発言をすると、意外とみんな「いいね」を押してくれたりして。「自分じゃ言えないけど、言ってくれた」「わかるわかる!」って共感してもらうことが、フォローにつながっていると感じています。

それと、「ストーリーの中で紹介する」のも大事ですが、商品自体にストーリーがあるとより一層欲しくなりますよね。私自身がモノを買う基準は「どれだけ掘り下げることができるか」だったりします。

例えば、電動歯ブラシひとつとっても、店頭で得られる情報って、値段と性能くらいじゃないですか。でも、公式サイトを見に行くと、デザイナーのインタビューが載っていたりして、作った人の思いを知ることができます。

Appleにファンが多いのも、商品にストーリーがあるからだと思いますが、そういう熱量のある思いって人に語りたくなるんですよね。そういう商品の方が、情報発信しやすいですし、「めっちゃよくない?」と共感が生まれれば、欲しいにつながると思います。

望月:MERYの記事も共感を常に意識していて、それが読者との信頼関係にもつながっていくと考えています。記事のタイトルには「共感ワード+分かりやすいキーワード」という組み合わせが多いですね。

ゆうこす:それにしても、MERYの記事って本当にレベルが高いですよね!書いている人が同年代だからこそ、それだけ共感できる内容がピックアップできるんだと思います。この「彼が来るまであと少し」って記事タイトルめっちゃよくないですか!「こんなものが流行ってるんだ!」とか、写真の撮り方とか、加工とかすごい参考にさせてもらっています。(笑)

SNSを使い分けることで、効果的に情報を発信

望月:MERYは、女の子の安心のよりどころとなれるように、前向きになれる情報を発信することを大切にしていて、親しみを持ってもらうために、「同じ目線で、友達とおしゃべりするみたいに書く」ことを心掛けているのですが、ゆうこすさんが情報発信する上で気を付けていることはありますか?

ゆうこす:ライトなファンとコアなファンって、求めている情報の質や共感ポイントも全然違うので、SNSを使い分けることは意識しています。

例えば、YouTubeはコメント機能がありますが、圧倒的に見るだけの人が多いので、基本的にはコミュニケーションが取れないものだと思っています。なので「ゆうこすとコミュニケーションは取りたくないけど、発信しているメイクの情報は知りたい」みたいなライトなファン向けにはとても有効です。

そこから少しゆうこす自身に興味を持ち始めた人用に、TwitterやInstagramっていう、コメントを投げることができたり、少しコミュニケーションが取れる場所があって。そこの情報だけじゃ物足りない人が、最終的に生配信やブログを見てくれるようになるんです。

生配信ってリアルタイムでコミュニケーションがとれるじゃないですか。私は毎日午後11時から生配信をしているのですが、その時間を奪えるって実はめちゃくちゃすごいことですよね。そこに集まるコアなファンって、YouTubeで題材にできないような、ゆうこすの掘り下げた話題をすればするほど喜んでくれるんです。

コアなファンって、私自身や発信の内容に共感してくれているからこそ生まれる存在だと思うんですよね。でも、生配信やブログだけだと宗教みたいになっちゃうので、掘り下げる場所とライトな場所、両方の特性を生かして、いろいろな層にバランスよく発信するようにしています。

ゆうこすさん(左)と望月菜穂子さん

「共感」を生で届けられる場所をつくる

ゆうこす:これからも「小さな経済圏」は細分化していくと思うので、生配信が大きなポイントになってくると考えています。その経済圏にいる人と、より密にコミュニケーションを取れる場所が大切です。

生配信はECサイトと店舗のちょうど中間ですよね。ライブでコミュニケーションが取れるので、買いやすいし発信しやすい環境だと思います。

私も、自分のスキンケアブランドをライブコマースで販売しました。自分の商品に懸ける思いとか、フォロワーさんと一緒に商品を作ってきたストーリーとか、そういった共感してもらえる話題を、生で届けることができるのがライブコマースのいいところです。

今後は生配信をするライバーさんが増えて、この人が配信しているから買いたくなる、という小さな盛り上がりがたくさん出てくると思うんです。例えば、電気量販店のおじさんや酪農家のおじいさんが自分で商品を紹介するような。どんどんそういう個人のライブコマースが増えてほしいと思います。

望月:私たちも、情報を発信することで共感を生んでいますが、それだけでなく積極的にリアルイベントを展開したり、ユーザーに人気のブランドとコラボ商品を販売するECサイト「MERY shop」を新たに始めており、手段を拡大しています。

「小さな経済圏」がたくさん生まれる中で、どの世界観が自分の「好き」とつながるのか。共感に出合える場所をもっと増やすことで、MERYをすべての女の子が自分の好きなものをちゃんと見つけられる場所にしていきたいと考えています。