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DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~No.86

モテクリエイターから学ぶ、「共感」の生み出し方

2019/09/03

ブロガーにインスタグラマー、ユーチューバー、ティックトッカー。さまざまなSNSの台頭で、誰でも自由に世の中に発信ができるようになり、SNSを生業にして活躍する人たちも増えています。

たとえ無名の個人でも、SNSの発信を通してファンをつけていくことで、強力なメディアにもなり得る時代。子どもの「将来なりたい職業ランキング」でもユーチューバーがランクインするなど、憧れの「職業」として確固たる地位を確立しています。

そんなSNSの世界で活躍・成功しているインフルエンサーは、どのようにして多くの人たちの共感を得て、そのポジションを確立しているのでしょうか。

今回ご紹介したい書籍は、SNSを中心に「モテクリエイター」という肩書で活躍する「ゆうこす」さんの『共感SNS 丸く尖る発信で仕事を創る』(幻冬舎)です。

共感SNS

本書では、知名度ゼロだった元アイドル「ゆうこす」が、SNSの世界で再出発し、「モテクリエイター」として多くの女子から共感を得る存在へと成長するまでの自身の経験と、そこで得られたノウハウや戦略が惜しげもなく紹介されています。

「モテクリエイター ゆうこす」とは?

皆さんは、ゆうこすをご存じでしたか?

私が初めてゆうこすに注目したのは、「ゆうこすモテちゃんねる」という彼女のYouTubeチャンネルをたまたま見つけたときです。カワイイ!という初見の印象もありましたが、それよりも「モテ」というテーマを全面に押し出したYouTubeのサムネイルと、「モテるために生きてる!」とプロフィールで公言する潔さに衝撃を受けました。

そしてそこで発信されるコンテンツは、「モテ」という一貫したテーマのもと、女子たちのインサイトを絶妙に捉えたHow Toが満載。多くの女子は自ら公言はしなくても、心の中では「モテたい」「好きな人にカワイイって思ってもらいたい」という気持ちは少なからず持っていますもんね。そりゃ見たくなります!

その後、ゆうこすが登壇するセミナーで話を聞く機会があり、分かったのは、ゆうこすのブランディングや発信するコンテンツが、ただ「なんとなく」でつくられているものではないということ。自身の見せ方やそれを伝えるターゲット、そして発信する情報の伝え方や見せ方まで、すべてが綿密に分析され、つくられていることを知りました。

「単純に容姿のかわいさだけで人気になったインフルエンサーではない」「ゆうこすは、いまの若者の気持ちやアプローチの仕方を最も理解しているマーケターだ!」と感動したのを覚えています。

本書ではそんなゆうこすの考え方やアプローチの方法が詳細に紹介されていて、いまの若者たちがSNSを通してどんなことに共感し、どのようにしてファンになっていくのかを知ることができます。

ゆうこすから学ぶ、SNSで共感を得るためのポイント

①自分がワクワクできるテーマを設定する!

まず、SNSでどんな自分になりたいか?のテーマを設定します。そこで重要なのは何より「自分が熱量をもって追いかけたいテーマ」を選ぶこと。共感に重要なのは熱量。発信する自分が熱量をもてないと、それがフォロワーにも伝わってしまうし、なにより自分自身も続けていくことが難しくなります。

ゆうこすにとって「モテ」というテーマが心からワクワクして発信し続けられるものだったからこそ、それが彼女の「強み」にもなり、発信力のあるアカウントにまで成長させることができています。

 ②共感してもらえるターゲットを設定する!

どんな人たちに向けて発信していきたいか?のターゲット設定を行います。この時、ゆうこすは単純に「モテ」だから男性、とか漠然と「女子全般」とするのではなく、「自分と同じようにモテたい、ぶりっ子したいと思っている女の子たち」とターゲットを絞りました。

その上で、そのターゲットたちが見たい情報を発信し続けることで、着実に共感してくれるファンを増やすことに成功しています。

今やフォロワーだってお金で買える時代。数字上のフォロワー数を増やすことには何の意味もなく、自分や自分の発信する内容に心から共感して熱量を持ってくれるファンを大切にし、彼らと真摯に向き合うことで、ファンがファンを呼んできてくれる流れをつくり出すことができています。

③誰ともかぶらない、唯一無二の肩書をつくる!

今や、「インフルエンサー」という言葉も一般化し、世の中にはたくさんのインフルエンサーが存在しています。またそういったインフルエンサーをマーケティングやプロモーションに活用する企業も増えています。

そんな中でゆうこすは、自身に「モテクリエイター」という唯一無二、 かつ自身の強みを的確に伝えられる肩書を与えました。そのことによって、「インフルエンサー」という大きなカテゴリのOne of themになるのではなく、自分だけのOnly oneのポジションを確立することができ、職業「モテクリエイター」としてビジネスにもつなげることができています。

④自分の立ち位置を把握し、ぶれない発信をする!

例えば、SNS発信の定番である「ファッションコーディネート」。ここでもゆうこすは、単純にコーディネートを投稿しているのではありません。

まずは俯瞰して自分の強みと立ち位置を把握した上で、投稿のテーマを「憧れ」ではなく「まねしやすい」ことに決めたゆうこすは、さらにそこに“モテポイント”を必ず一つ入れることで、オリジナリティーがあり、かつフォロワーからも共感を得られる発信を行っています。

自分の立ち位置を無理に上げるのではなく、「自分にできること」を全力でやる。そしてフォロワーたちと目線を合わせることで、自分が無理することなく、共感してもらえる発信を続けることができています。

階層分けと、SNSの選び方

SNSで共感を得るためのポイントをいくつかご紹介しましたが、さらにゆうこすのすごいところは、SNSも一くくりでは考えていないこと。

現在ゆうこすが発信をしているSNSは、YouTube、Twitter、Instagram、ブログ、生配信(LINE LIVEやShowroom)があります。そこで彼女は、まず自分の情報を受け取ってくれる人を以下の5階層に分け、それぞれの階層の人たちがどのSNSで自分の情報に触れているのかを把握し、発信の内容を変えています。

  1. 新規層-自分を全く知らない人
  2. 新規層-自分の名前は聞いたことがある人 
  3. ライトファン層-とりあえずフォローしていて、投稿をたまに見てくれている人
  4. コアファン層-「いいね」やリツイート、コメントを積極的にしてくれて。生配信など他のコンテンツも見てくれる人
  5. マニア層-時間とお金を、ネット上でもリアルでも使ってくれるファン
新規流入ポイント
※本書P.133の図を参考に作成しました。

例えば、「関連動画」から色んな人の動画が見られるYouTubeでは、偶然入ってくる新規の人たちも多いことから、誰でもサクッと見られる動画づくりを行う。

逆に、生配信のようにしっかり時間を割いて見てもらうものに関しては、熱量の高いコアファン向けのコンテンツになるため、みんなが知らない裏話や秘密を共有することで、よりファンとの繋がりを強固にする場として活用する。

InstagramやTwitterに関しても同様に、媒体の特性や情報の広がり方、そこにいる人たちの熱量や求めていることなどを的確に把握し、それに合わせて発信する情報を変えています。

SNSごとに発信を使い分けることで、フォロワー全員の満足度をあげ、着実にフォロワーをコアなファンに昇華させていける可能性を高めているわけです。

SNSでのブランディングにおいて「共感」が重要なキーワードであることは、多くの人が理解しているかと思います。しかし、実際に自分が担当するブランドや商品を、SNSを通して「共感」され、愛される存在にまでもっていくことが決して容易でない、と実感されている方も多いのではないでしょうか。

いまの若者たちが何を求め、どうすれば共感してくれるのかを、20代の女子ゆうこすがまっすぐな目線で見つめ、トライアンドエラーを繰り返しながら得られた知見が詰まった本書は、SNSに携わる方はもちろん、若者をターゲットにしたブランディングやコミュニケーションに携わる人たちにとっても、教科書のような1冊になるかと思います。

ぜひ、ゆうこすから若者たちの共感の生み出し方を学んでみてください!

 

電通モダンコミュニケーションラボ

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