「半沢直樹」から考察する、「テレビを見ながらTwitterを楽しむ人」の特徴とは
2021/02/08
昨年、多くのファンを魅了したTBS日曜劇場ドラマ「半沢直樹」。
最終回のリアルタイム平均視聴率は32.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、総合視聴率(リアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率の合計、重複はカウント1として集計)は44.1%と、共に令和時代においてドラマ部門1位となりました。
Twitterでのツイート数も毎週世界トレンド1位を獲得するなど、SNS上でもとても反響の高いドラマだったことは、皆さんの記憶にもまだ新しいと思います。
申し遅れました、電通第2統合ソリューション局の入澤健太郎です。私は日々の業務の中で、テレビとSNSの関係について研究しています。
生活者のメディア接触の多様化とともに、テレビ視聴の在り方も変化しており、「テレビ番組を見ながらSNSを楽しむ」という視聴スタイルが当たり前になっています。
テレビや広告の世界では、SNSでの盛り上がりが番組の視聴率や満足度を左右するともいわれており、コロナ禍の影響で、さらにその傾向は加速。各テレビ局のSNS活用がより活発になっています。
中でもリアルタイムでのコミュニケーションに強いTwitterでは、「テレビを見ながら、番組への意見や感想をツイートし合ったり、他のユーザーのツイートを楽しんだりする」という行動が、以前から多く見られました。
広告主のマーケティング活動でもオンラインとオフラインの統合が主流になる中で、電通と電通デジタルは、Twitter Japanと共同で「TV×Twitter」プロジェクトを発足。メディアプランニング、クリエイティブ、リサーチなど複数の観点から、「テレビとTwitterを掛け合わせた広告効果最大化」へのアプローチを開始しました。
本稿では、「半沢直樹」視聴者に対して実施した「テレビを見ながらTwitterを楽しむ人の実態調査」について、私たちプロジェクトメンバーが紹介します。
ここからは、「テレビを見ながらTwitterを楽しむ人」の特徴について、Twitter Japanの佐藤建一郎が紹介します。
われわれは首都圏居住の「半沢直樹」視聴者(=ほぼ全話見た人)に対し、まず「テレビとTwitter」の関係についてアンケート調査を行いました。その結果、「半沢直樹」視聴者の半数以上がTwitterを利用していたことが分かりました。
さらに、「番組を見ようと思ったきっかけ」を尋ねたところ、Twitterがネットメディアの中で2位にランクインしており、多くの視聴者がTwitter上の情報から番組に関心を持ったことがうかがえます。特に20代では、Twitterをきっかけに番組視聴した人が最多数でした。
「半沢直樹」への「熱狂度」(ハマり具合)を見ると、軒並みTwitter利用者のスコアが非利用者よりも高い結果となっています。 例えば「番組が終わったら『半沢ロス』になりそう」と感じている人は非利用者の1.6倍に上ります。
また、「家族や友人と番組について会話が盛り上がるようになった」「番組の内容や感想を誰かに話したくなった」など、番組に関して他の人とコミュニケーションを図りたい人も、Twitter利用者の方が圧倒的に多いことが分かりました。
「半沢直樹」に限らず、テレビを見ながらTwitterを楽しむ視聴スタイルは、数年前から一般化しているようです。例えば、2019年4~9月に放送されたドラマ「あなたの番です」では、ストーリーや人間関係の行方について自説を展開する「考察班」と呼ばれる人がTwitter上に多数現れて、番組を大いに盛り上げました。
Twitterを通じたテレビの楽しみ方には大きく2パターンがあります。ひとつは、みんなと一緒に同じタイミングで番組を視聴すること自体を楽しむ「スタジアム/劇場型」。もうひとつは、ドラマなど次の展開へ期待や考察、解説など自分の見解を披露したり、同じ番組を見ている人の見方や感想を読んで番組に対する趣味サークル感やコミュニティー感を楽しんだりする「同好会/サークル型」です。
一人でテレビを見ていても、「誰かに自分の感想を聞いてほしい」「誰かと感動を分かち合いたい」と思う瞬間は誰にでもあるのではないでしょうか。そんな「気持ちの受け皿」としてTwitterが機能していると考察できます。
今回の調査では、番組放送中に流れるCMの商品・サービスへの好意度や関心度も聴取しました。その結果、Twitter利用者は非利用者と比較して、スポンサーのCMやサービスに対して、より好意的であることが分かりました。
近頃は、番組放送中のCMに出演者を起用するなど、テレビCMと番組の連動も多くなり、視聴者が「あっ!!」と気づく瞬間も増えてきたと思います。その気づきをTwitter上に誰かが書き込んで、またその書き込みを見た人が、意識してCMを見るようになる…というサイクルが生まれています。
このようにCMも含めてみんなと一緒に楽しめるので、その分、番組に対する思い入れや熱量が高まり、どんどんコンテンツに引き込まれているのではないでしょうか。
CMの話題がTwitter上で大いに盛り上がったことは、CMの商品・サービスに対するTwitter利用者のポジティブな態度につながった要因のひとつと考えられます。
ここからは電通サイエンスジャムの木幡容子がお伝えします。
「テレビを見ながらTwitterを楽しむ人」の特徴をさらに探るため、本プロジェクトメンバーからの要請を受けた私たち電通サイエンスジャムは、自社で開発した在宅型ニューロリサーチ(※)を活用した調査を実施。
※電通サイエンスジャムが保有する「脳波測定による感性把握技術」を活用した感性評価システム。協力者の自宅に計測装置を配布し、在宅中のリラックスした状態でリアルタイムにテレビを楽しんでいただき、脳波データを取得。専用サーバーで解析する。
首都圏のモニター家庭2グループに専用の計測装置を配布し、「半沢直樹」最終回において視聴者の脳波にどのような影響が出るか、比較実験を行いました。以下に、ニューロリサーチで浮き彫りになったポイントをまとめます。
私たちは「半沢直樹」最終回で、次の二つのグループに分けて実査を行いました。
・テレビ番組のみを視聴するグループ
・テレビ番組を見ながらTwitterを楽しむグループ(ハッシュタグ「#半沢直樹」の使用など)
番組視聴中の脳波を分析した結果、「テレビ番組のみを視聴するグループ」と比べて「テレビ番組を見ながらTwitterを楽しむグループ」の方が、番組による「満足度」や「ポジティブ度」が高くなりました。反対に「ストレス度」が低いことも明らかとなりました。
また、脳波から感情を分刻みで見ると、ほぼ全ての時間帯やシーンで、Twitter利用者の「満足度」がテレビ番組のみを視聴するグループと比べて高かったことも分かりました。
「テレビ番組を見ながらTwitterを使うと、より番組が楽しめる」ということは、これまでも指摘されてきましたが、今回、脳波計測によって改めてその傾向が裏付けられました。
Twitterを併用しながらテレビを見ることで、情報量がより多くなります。また、その内容が自分にとって意義がある・有用であることからポジティブな脳への刺激も増え、満足度の上昇につながった可能性があります。
もちろん、番組の内容によって感情の変化は異なりますが、今回の「半沢直樹」に関しては非常にTwitterとの相性も良く、感情の高まりに関与したと考えられます。
調査を通じ、改めて分かったことは、テレビとTwitterの相性の良さ。もっと言ってしまえば、Twitterは単なるSNSではなく、「テレビ番組を楽しむプラットフォーム」でもあるということです。これこそがTwitterならではの特徴であり強みです。Twitterは番組視聴のきっかけにもなっていることから、テレビ番組のTwitter活用もより増えていくでしょう。
・Twitterでの話題は番組視聴のきっかけとなり、若年層では特に顕著。番組に対する「熱狂度」(ハマり具合)はTwitter利用者が非利用者を大きく上回る
・Twitter上ではテレビCMも話題になり、商品・サービスに対するポジティブな態度につながっている
・テレビとTwitterを使いながら番組を楽しむグループは番組中、総じて「ポジティブ」であり「満足度」も高い
テレビ番組のみを視聴するのではなく、Twitterで番組に関する話題を追いかけたり、同じ番組を見ている人の感想やコメントを見ることで、みんなで一緒に番組を楽しめます。これはドラマに限らずスポーツやバラエティーでも多く見受けられ、テレビとスマートフォンを活用した視聴スタイルの特徴です。
今回の調査結果で得られた示唆は大ヒットドラマ「半沢直樹」ならではの特徴なのでしょうか?われわれは「テレビを見ながらTwitterを楽しむ人」の理解を更に深めるため、昨年末に放送された、いくつかの人気番組で再び調査を行いました。
次回は、違う番組での「TV×Twitter」の調査結果を紹介しながら考察を続けます。