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“ひと休み”をアップデートせよ。未知の体験をどう共創したか?

2021/06/16

世界に「ひと休み」のアップデートを提案するBREATHERのブリージングデバイス「ZORN」と「ston」。
世界に「ひと休み」のアップデートを提案するBREATHERのブリージングデバイス「ZORN」と「ston」。

新規事業や新商品の開発には、企業によってさまざまな課題があります。

企画、プロトタイプ作製、PoC(実証実験)までは実行できても、商用化・量産化のノウハウがなく、実現に至らないケース。あるいは、量産できたとしても、発売後のコールセンターや修理などのカスタマーサービスをどうするかなど、多岐にわたる課題をクリアする必要があります。

本記事では、新規カテゴリー製品の価格受容性調査から、ODMメーカーアレンジ、工場立ち会い、プロダクトデザイン、パッケージデザイン、コールセンター会社のアレンジまで、“リアライズ(具現化)” 面を文字通り「一気通貫」に、多角的にサポートした電通の「リアライズコンサルティング」事例を紹介します。

今回取り上げるのは、 BREATHERが発売したブリージングデバイス「ston」と「ZORN」(※1)のリアライズです。

新規カテゴリー製品ならではの苦労、商用化に向けた取り組みについて、BREATHERのCTO・御神村友樹氏と、リアライズコンサルティングという形で本製品に携わった電通のビジネストランスフォーメーション・クリエーションセンターの堀田峰布子氏が語り合いました。

BREATHER 御神村友樹氏、電通 堀田峰布子氏
※1 ブリージングデバイス
BREATHERは2019年12月、頑張る人の「ひと休み」の質を高めることをコンセプトにした、ブリージングデバイス「ston」を発売。もうひと踏ん張りしたいときには、爽やかなミントフレーバーでカフェイン配合の「POWER」、気分を落ち着かせたいときには、心安らぐココナッツフレーバーでGABA配合の「CALM」の2種類の専用カートリッジを提供した。2021年6月、ひと休みセンサー搭載で「その人」に適切な休憩時間をレコメンドする新たなブリージングデバイス「ZORN」を発売。

<目次>
「新たな休憩体験」の開発。電通が量産化フェーズでの相談相手に
BREATHER第2弾製品「ZORN」では、デザイン段階から共創体制に!
リアライズコンサルティングの価値は、足りないところを全て補完してくれること


「新たな休憩体験」の開発。電通が量産化フェーズでの相談相手に

堀田:はじめに、BREATHERの紹介を改めてお願いできますか?

御神村:BREATHERは「頑張る人の、ひと休みをアップデートする。」というステートメントを掲げるスタートアップです。近年はDXをはじめ、「いかに効率良く働くか」に世の中の関心が集まっていますが、われわれが着目したのは「いかに戦略的に休むか」ということ。

頑張りたいときや落ち着きたいときなど、休憩にはさまざまなニーズや動機があります。そこで、一つのデバイスを気分やシーンに応じて使い分けられるプロダクトを検討した結果、「リキッドを蒸気化し、その蒸気を深く吸うことを愉しむブリージングデバイス」にたどり着きました。

堀田:“深呼吸”に着目した休憩は、多くの人にとって新しい体験になりますよね。これまでにないカテゴリーのプロダクトを開発する上で、どんな工夫をしたのでしょうか?

御神村:新たな休憩体験を提供することになるので、いかにユーザーの日常に溶け込めるかが重要です。そう考えると、無機質な工業品よりは自然物に近いものや、手になじむもののほうが親近感を覚えやすいなと。いろいろと試行錯誤した末、“小石”というモチーフで生まれたのが「ston」です。

2019年12月、ビジネスパーソンの「ひと休み」の質を高めることをコンセプトに、ブリージングデバイス「ston」を発売。
2019年12月、ビジネスパーソンの「ひと休み」の質を高めることをコンセプトに、ブリージングデバイス「ston」を発売。もうひと踏ん張りしたいときは、爽やかなミントフレーバーでカフェイン配合の「POWER」、気分を落ち着かせたいときは、心安らぐココナッツフレーバーでGABA配合の「CALM」と、2種類の専用カートリッジを使い分けられる。

堀田:これまでに見たことがない、ワクワクするようなデザインですよね。

御神村:はい、われわれもプロトタイプの段階で非常に素晴らしいプロダクトになると確信しました(笑)。しかし、いざ量産化するフェーズに入ると、考えなければならないことが非常に多く、どこから手をつけようか、といった感じでした。

特に、われわれのように研究開発に特化した企業ですとカスタマーサポート構築と広告表現規制に関しての知見が欠落していましたので。とにかく経験ある方に相談したいと、知人を介して堀田さんを紹介していただいたのが最初の出会いでしたね。

堀田:初めてお話を伺ったとき、すごく面白いことを考えていらっしゃるなと思いました。「戦略的に休憩を取ることで自分自身をマネジメントしていく」という着眼点が新しいですし、それをコーヒーやチョコレートのように飲む、食べるということではなく、“吸う”という行為をきっかけにして行うことが新鮮ですよね。

特に、“深呼吸”それ自体は自然に行っているものの、休憩と結び付けて考えていない方が多いので、その行為をいかにデザインするか、という非常にやりがいのあるプロジェクトだと感じました。

御神村:当時は、私たちの中でやりたいことは明確にあるけれど、それをプロダクトとして形にする壮大な道のりのスタート地点にいました。なので、メーカーでプロダクトデザイナーとしての経験も豊富にあり、今は広告会社で事業のコンサルティングでもご活躍されている堀田さんは、まさに理想のパートナーでした。工場のライン一つとっても、その世界の常識や言葉が分かっていらっしゃるので大変心強かったです。

堀田:振り返ってみると、さまざまな場面で“翻訳者”のような立ち位置でサポートさせていただくことが多かったかもしれません。「こうしたい」という御神村さんたちの思いを、ものづくり業界の言葉に翻訳してエンジニアや工場の方に伝える。そうすることで物事がスムーズに進むことがよくありました。

逆に、御神村さんはCTOという肩書ですが、テクノロジーはもちろんですが、サイエンスにも知見をお持ちで、私のこれまで知らなかった領域について教えていただいたりして、大きく視野が広がる経験をさせていただきました。

BREATHER第2弾製品「ZORN」では、デザイン段階から共創体制に!

新商品の「ZORN」は、ひと休みセンサーを搭載し、ユーザーそれぞれに適切な休憩時間をレコメンドしてくれる、ブリージングデバイス。

新商品の「ZORN」は、ひと休みセンサーを搭載し、ユーザーそれぞれに適切な休憩時間をレコメンドしてくれる、ブリージングデバイス。
新商品の「ZORN」は、ひと休みセンサーを搭載し、ユーザーそれぞれに適切な休憩時間をレコメンドしてくれる、ブリージングデバイス。新しい「吸うかたち」をデザインした洗練されたフォルムはもとより、重心バランス、手触り、音にまでこだわり抜いた五感で楽しむプロダクトとなっている。

堀田:そして今回の新商品「ZORN」では、開発の初期段階から参加させていただきました。ZORNのデザインに当たっては、「電源オン」「測定開始」「測定中」「数パターンの測定結果表示」「吸引中」といった状態の遷移をどのようにフィードバックすればユーザーに伝わるのか。人間が操作できるクリックの回数、視認しやすい色の数、点滅の仕方、心地よさも含めて、人間工学や人間中心設計のアプローチから最適な組み合わせを検討しました。

御神村:五感で楽しむプロダクトにしたかったので、操作性だけでなくフォルム、質感、重量、重心バランス、クリック感、キャップを開け閉めするときの振動や音など、細部にわたって心地よいものを追求しましたよね。

堀田:ずっと触っていたくなるキャップの“手遊び感”はかなり議論させていただきました。デザイン案やプロトタイプをすぐに評価していただける体制だったので、トライアンドエラーを繰り返して、UI/UXを向上させることができたと思います。

御神村:パッケージデザインも好評なのですが、高級感や美しさを保ちながらつくりが難し過ぎないようにしたい、というオーダーにも応えてくれました。さまざまなパラメーターを考慮しながら、その中のベストを提案してくださったのがうれしかったです。

リアライズコンサルティングの価値は、足りないところを全て補完してくれること

堀田:二つのブリージングデバイスをリリースしましたが、今後はどのような展開を考えているのでしょうか?

御神村:ユーザーのコメントやデータが徐々に集まってきているので、製品改良の余地があるところは地道に改善していくというのが一つ。それから、“休憩体験”のバリエーションをもっと広げていきたいと考えています。

堀田:ブリージングデバイスを休憩目的だけではなく“アロマ体験”としても捉えると、さらに可能性が広がりそうですよね。

御神村:そうですね。例えばリフレッシュしたいときに、飲み物とブリージングデバイスを組み合わせて、より質の高い「ひと休み」を過ごすこともできると思います。飲み物という味覚が追加されることで、本当の意味で「五感で楽しむZORNの体験」ができそうですよね。

堀田:「香りと味のマリアージュ」、面白そうですね!最後に、ブランドにとっての、今回電通が提供したリアライズコンサルティングの意義を改めて教えていただけますか?

御神村:どんなアイデアも「リアライズ」、つまり具現化しないと本当に価値があるかどうか、誰かの幸せに貢献できるかどうかはわかりません。どんなに斬新で良いアイデアがあったとしてもそれで完成するわけではなく、きちんと安心安全にお客様に幸せを届けきるためには、このリアライズフェーズで「転ばぬ先の杖」が非常にモノを言ってくる。

その点で、堀田さんを中心にリアライズコンサルティングチームの皆さんは、その具現化フェーズでの足りないところ、特に我々が見落としているかもしれない点を指摘/補完してもらえる存在だったと思います。これほど頼もしい存在はありません。

全工程を自力でやろうと思えば、それも可能だったかもしれませんが、1%の見落としが致命傷になるのがハードウエア量産です。多くの法規制や、経験者しか知り得ない落とし穴がたくさんあります。だからこそ、多くのハードウエアベンチャーや新規事業が、このリアライズの段階で頓挫してしまうのではないでしょうか。

BREATHERせ製品での主なサポート項目

堀田:新しいアプリやサービス、また、プロダクトのプロトタイプを作ることは、広告会社やコンサルティング会社でもすでにやっている仕事かもしれません。ただし、ハードウエアも含めた量産化・商用化というリアライズフェーズをコンサルティングさせていただくことは、ある意味“電通らしくない”仕事かもしれません。

今回、BREATHERからチャレンジする機会を頂いたおかげで、リアライズコンサルティングの型をさらに増やせたと思っています。私や電通が持っているスキル・経験は全て差し出しました!(笑)

御神村:本当に助かりました!いつもありがとうございます。

堀田:こちらこそ、ありがとうございました!


電通のリアライズコンサルティングでは、新規事業開発・新規プロダクト開発の各フェーズで、以下のようなサポートを提供することができます。
 
電通のリアライズコンサルティングの範囲とメニュー項目一覧
今回紹介したBREATHERの事例のように、クライアントのニーズや課題に応じて提供メニューはカスタマイズが可能です。興味のある方は、DENTSU DESIGN FIRMまでお気軽にお問い合わせください。
 
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