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情報メディア白書2022~“WITHコロナ”時代のメディア接触と発信をひもとく~No.1

メディア利用は“生活行動”の一つに!コロナ禍前後の動向を分析

2022/04/14

電通メディアイノベーションラボは、「情報メディア白書2022」(ダイヤモンド社刊)を3月に刊行しました。

コロナとの生活が2年目に入った2021年も、感染拡大防止の観点から外出を控えることが求められました。1年延期された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会はほぼ無観客で開催されました。テレビをはじめとするさまざまなメディアを通して多くの人は大会に触れ、またネットで盛んに感想などを発信しました。こうした状況を背景に、「情報メディア白書2022」では下記の巻頭特集を組みました。

■特集I:コロナ禍2年目の現在 ~メディア接触行動の変化とTOKYO2020~
・Part-1:コロナ禍2年目のメディア接触行動とコネクティッドTVの利用動向
・Part-2:バズでみるTOKYO2020 ~THE MONUMENT OF TOKYO2020~

本連載では3回にわたって、上記特集の内容の一部をご紹介します。第1回では、メディア利用の最新動向を紹介します。

「起床在宅時間」の推移から見えた、長引くコロナとの生活

ここではMCR/ex調査(※1)の東京50km圏データ(各年6月調査)を用いて、コロナ禍前後の生活行動やメディア接触行動の変化を見ていきます。

※1=MCR/ex調査
ビデオリサーチ社が特定の1週間に行う日記式調査。生活者の行動を基本的な生活行動、メディア接触などの視点から、曜日別に時間軸に沿って最小15分単位で捕捉する。

 

図表1では、2019年から2021年の1日あたりの起床在宅・外出・睡眠時間(12~69歳/週平均)を示します。2020年以降の起床在宅時間に注目すると、コロナとの生活が長期化している様子が見えてきます。

情報メディア白書2022_図版01
出典:ビデオリサーチMCR/ex(東京50km圏・各年6月)を基に作成。

2020年の調査が行われたのは、首都圏では東京アラートの発令などを通して外出自粛が強く要請されていた時期でした。そのため自宅で活動する時間は661.5分とかつてない長さです。翌年は601.2分ですが、それでもコロナ禍前の2019年(519.8分)と比べると自宅で過ごす時間は依然として長いといえます。また、2020年以降は1日あたりの睡眠時間がやや長くなっています。

コロナ禍で睡眠パターンに変化、若者は特に顕著も夜更かし傾向は変わらず

いわゆる「巣ごもり」によって生活パターンに変化が生じた例として、睡眠の様子をさらに詳しく見てみましょう。図表2は朝と夜における眠っている人の割合「睡眠行為者率」(12~69歳/週平均/15分単位)を表します。2019年から2021年にかけて夜22時台から24時台の眠っている人の割合に目立った変化はありません。

情報メディア白書2022_図版02
出典:ビデオリサーチMCR/ex(東京50km圏・各年6月)を基に作成。

一方、朝6時台から8時台の睡眠行為者率は2020年に上昇し、翌年に少し下がりました。ただし、コロナ禍前の2019年の水準には戻っていません。つまり2020年以降、朝起きる時間は後ろ倒しになっています。コロナ禍以降に増えた1日あたりの睡眠時間は、朝寝によって確保されたと捉えることができます。

コロナ禍を通して生活パターンが大きく変化したのは若い人たちです。図表3は学生を多く含む12~19歳のケースです。コロナ禍前後での朝の睡眠行為者率の振れ幅が全体(12~69歳)より大きいことがわかります。休校、リモート学習、在宅勤務等が本格的に実施された2020年は通勤・通学のために朝早く起きる必要がなくなったものの、2021年には生活の正常化が進み、起床時刻がコロナ禍前に近づいたと考えられます。

夜の睡眠状況を見ると、興味深いことに2020年、2021年の睡眠行為者率はいずれも2019年より低いままです。朝の時間帯の睡眠行為者率が変動しているのに対し、夜更かし傾向はこの2年は変わっていない様子です。

情報メディア白書2022_図版03
出典:ビデオリサーチMCR/ex(東京50km圏・各年6月)を基に作成。

人々のメディアとの関わり方を考える際に、このような基本的な生活パターンの変化はとても大きな意味を持ちます。時計代わりの朝のテレビ視聴、あるいは、スマホで動画を見ながら寝落ちするといった生活に組み込まれ習慣化したメディア利用に大きな影響を及ぼすと考えられるためです。

コロナ禍以降、モバイル経由のネット利用が急増

図表4は、1日あたりの自宅内メディア接触時間(12~69歳/週平均)を示しています。複数メディアへの同時接触の可能性はありますが、起床在宅時間の増加を背景に、2020年の各メディアへの接触時間の合計は370分に達しました。2021年は減少して331.2分ですが、コロナ禍前の水準をまだ上回っています。

個別メディアへの接触時間はおおむね同じ傾向です。ネットへの接触時間を利用デバイス別に見ると、PC・タブレット経由も増えていますが、モバイル(スマートフォン、携帯電話・PHS)経由が特に急増しました。

一方、2021年のテレビのリアルタイム視聴は2019年の水準を下回っています。また、テレビ画面でのネット動画視聴を指す「テレビ動画」は、コロナ禍に入ってから急速に利用が増えました。

情報メディア白書2022_図版04
出典:ビデオリサーチMCR/ex(東京50km圏・各年6月)を基に作成。

“生活行動”の一つとしてのメディア利用

コロナ禍で生活パターンが変動する中、人々はメディアにどのように接触しているのでしょうか。図表5は、朝5時からの一日を通しての起床在宅、睡眠、移動、外出をしている人の割合(15分単位)と各メディアへの接触率(60分単位)の推移(12~69歳/週平均)を表しています。黄色で示す起床在宅率の日中の谷間の様子から、コロナ禍2年目の2021年は日中に外出する人が前年より増えているものの、2019年の生活パターンには戻っていないことがわかります。

図の上部から下がる折れ線グラフは外出先でのメディア接触率ですが、いずれの年でも正午ごろのモバイル経由ネット利用がやや目立つ程度です。メディア利用は主に自宅で行われ、朝昼夜にピークがあるテレビと並び、夜にかけて利用が急増するモバイル経由のネットが際立つ傾向です。

情報メディア白書2022_図版05
出典:ビデオリサーチMCR/ex(東京50km圏・各年6月)を基に作成。

10代のメディア利用は、モバイル経由のネットが中心

最後にモバイル経由のネットの利用が顕著な12~19歳の傾向を紹介します(図表6)。2021年には、日中、自宅でのモバイル経由のネット利用は外出が増えたことで前年より減少しましたが、朝の時間帯を除くとほぼ終日テレビへの接触を上回っています。

特に19時台にテレビ視聴のピークを迎えた後は、接触するメディアがモバイル経由のネットへシフトします。夜のメディア利用シーンとして、例えば夕食時に家族とテレビを視聴した後、就寝する直前まで自室などで主にスマホでネット動画やSNSに触れる姿が想像できます。

情報メディア白書2022_図版06
出典:ビデオリサーチMCR/ex(東京50km圏・各年6月)を基に作成。

このようにメディア利用は生活行動の一つと捉えることができます。生活に組み込まれているため習慣化しやすい一方、一日を通して生活にリズムをもたらすこともあります。コロナとの生活が長引く中、人々のメディアとの関わり方が今後どのように推移していくか引き続き注目していきたいと思います。

【調査概要】
調査名:MCR/ex(エム シー アール エクス)
実施時期:毎年6月、12月
調査手法:電子調査票による調査
調査エリア:東京50km圏、関西地区、名古屋地区、北部九州地区、札幌地区、仙台地区、広島地区
調査対象者:男女12~69歳の個人(エリア・ランダム・サンプリング)
調査会社:ビデオリサーチ

 

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