情報メディア白書2022~“WITHコロナ”時代のメディア接触と発信をひもとく~No.2
コロナ禍で加速するテレビでのネット動画視聴
2022/05/13
電通メディアイノベーションラボ編「情報メディア白書2022」(ダイヤモンド社刊)の巻頭特集の内容を一部紹介する本連載。前回記事ではコロナ禍において生活行動とメディア接触行動が変化した様子をお伝えしました。
自宅で過ごす時間が増える中、テレビでのネット動画視聴が広がりの兆しを見せています。本体を直接、あるいは外部機器を介してインターネットに接続されるテレビは「コネクテッドTV」(以下、「CTV」)とも呼ばれ、近年注目が高まっています。そこで、今回は電通メディアイノベーションラボが2021年9月に行った「第4回テレビ受像機でのネット動画視聴調査」(調査概要はこちら)をもとに、テレビでネット動画が視聴されている様子をご紹介します。
<目次>
▼家庭のテレビはネットにつながり、さらに動画視聴も広がる
▼コロナ禍でテレビでの有料動画配信サービス利用が増加
▼CTV視聴で人気なのは?定額制動画配信サービスは「国内ドラマ」、共有系動画サービスは「音楽」!
▼ネット動画視聴の受け皿としても優れているテレビ
過去の 「テレビ受像機でのネット動画視聴調査」関連記事はこちら
・ネット動画を見るデバイスは家庭のテレビ受像機にまで広がるのか?
・家庭のテレビ受像機でネット動画を見ていますか?
家庭のテレビはネットにつながり、さらに動画視聴も広がる
この調査で主対象としたのは、CTVでネット動画を過去1カ月内に視聴した人です。その前提となるCTV利用者は調査を行うたびに増えています。図表1では、調査対象者を抽出するスクリーニング調査(全国の15~59歳男女対象)の結果を表しています。
2019年に実施した第3回調査と比較すると、CTV利用者は32.7%から39.4%に伸長しました。家庭内のWi-Fi環境の充実などを背景に、テレビのネット接続が進んでいるといえます。
さらにCTVで過去1カ月以内にネット動画を視聴したと回答した人は26.7%でした。2019年には17.7%だったので、2年の間に大幅な増加です。一方、自宅のテレビがネットにつながっているものの、そのテレビでネット動画を視聴しない人は11.9%から8.8%に減少しています。家庭におけるテレビのネット接続率が向上しただけではなく、その環境を生かしたネット動画視聴も広がっていると捉えることができます。
コロナ禍でテレビでの有料動画配信サービス利用が増加
過去1カ月内にテレビで利用したネット動画サービスをたずねたところ、個別サービスではYouTubeの利用率が最も高い結果となりました。YouTubeはもともとPCやスマホで広く利用されていることに加え、無料です。またテレビリモコンに専用ボタンがついている場合もあります。こうしたことから、テレビで利用する際の障壁は低いと考えられます。
サービス類型別に見た場合、今回の調査で初めて、有料動画配信サービス(定額制・都度課金制)の利用率がYouTubeに代表される共有系動画サービスの利用率を上回りました(図表2)。有料動画配信サービスの代表的なサービスとして、Amazonプライム・ビデオ、Netflix、Huluなどが挙げられます。
コロナ禍で在宅時間が増える中、オリジナル作品など多種多様な動画を提供する有料動画配信サービスは人々にとってエンターテイメントの有力な選択肢となっている様子です。さらに、その視聴の受け皿として、PCやスマホだけではなくテレビが活用されつつあると捉えることができます。この2つの要因が重なって、今回の調査ではテレビでの有料動画配信サービスの利用が共有系動画サービスを上回ったといえるでしょう。
CTV視聴で人気なのは?定額制動画配信サービスは「国内ドラマ」、共有系動画サービスは「音楽」!
それでは、どのようなネット動画がテレビで見られているのでしょうか。今回の調査では、過去の調査とほぼ同じ傾向が確認されました。図表3にCTVで定額制動画配信サービスと共有系動画サービスを利用する人が視聴する動画ジャンルを示します。定額制動画配信サービスでは、国内ドラマを筆頭に、国内外のドラマ・映画、アニメなどがよく視聴されています。
一方、共有系動画サービスでは視聴する動画ジャンルの傾向に分散が見られます。トップは音楽で、音楽ビデオをBGMのように再生するケースが想定されます。また、ゲーム系、動物もの等、ネットで人気の高い動画ジャンルがCTVでも視聴されています。
ネット動画視聴の受け皿としても優れているテレビ
「第4回テレビ受像機でのネット動画視聴調査」では、CTVでネット動画を視聴する人がテレビを利用する時間量を調べました。図表4にCTVで1カ月以内にネット動画を視聴した層とCTVでネット動画を視聴していない層の、1日あたりのテレビの利用時間(週平均。利用頻度・時間に関する回答に基づく推計)を示します。
「CTVで1カ月以内にネット動画を視聴」層がテレビに接する時間は228.2分で、「CTVでネット動画非視聴」層より47分長いことから、テレビとの関与度は高いといえます。
利用内訳を見ると、テレビ番組のライブ視聴と再生視聴にあてる時間は非視聴層よりそれぞれ19.1分(ライブ視聴)、2.4分(再生視聴)短く、総接触時間を押し上げているのはネット動画サービスの利用時間であることがわかります。
両者の違いが、ネット動画サービスの利用によってテレビ番組の視聴時間が減少するという因果関係を示すものではない点には、注意が必要です。しかし、CTVでネット動画を視聴している人のテレビを利用する時間の長さから、テレビ番組を視聴するためのデバイスとして普及したテレビが、ネット動画の視聴デバイスとしても非常に優れていることが理解できます。
ネットに接続したテレビでは、視聴できる動画の選択肢が飛躍的に増えます。動画コンテンツの質的、量的な充実の他、リモコンを含むハードウェアの利便性の向上、さらにはサービスUIやレコメンデーション機能等の拡充がより進んだら、今後テレビの使い方の多様化はさらに進むと考えられます。
今回は、コロナ禍で自宅で過ごす時間が増える中、人々が自身のニーズを満たすメディアサービスやデバイスを選択して生活に取り入れている様子をご紹介しました。そして、多様なニーズに対応するため、例えばテレビ番組をネット配信するTVerやNHKプラスでは機能の進化が続いています。人々に選択されるサービスを提供する上で、生活者を取り巻く環境やその行動を理解することは今後一層重要となるでしょう。
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【調査概要】
調査名:第4回テレビ受像機でのネット動画視聴調査
実施時期:2021年9月
調査手法:インターネット調査
調査エリア:全国
調査対象者: 15~59歳の男女3031人
テレビ受像機でネット動画サービスを過去1か月以内に利用(1535人)
テレビ受像機をネット接続しているがネット動画サービスは利用していない(1496人)
*スクリーニング調査(全国の15~59歳の男女3万7037人)での出現率、住民基本台帳2021の性年齢構成比に合わせウェイトバック集計