「2013年 日本の広告費」は5兆9,762億円、前年比101.4%
― 総広告費は2年連続で増加、成長軌道へ テレビスポット、屋外、交通、POP、展示イベントが好調 ―
2014/02/20
「2013年 日本の広告費」は5兆9,762億円、前年比101.4%
― 総広告費は2年連続で増加、成長軌道へ テレビスポット、屋外、交通、POP、展示イベントが好調 ―
電通は2月20日、日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2013年(平成25年)日本の広告費」を発表した。
これによると、昨年2013年(1~12月)の日本の総広告費は5兆9,762億円、前年比101.4%であった。2013年の総広告費は、「アベノミクス」効果による持続的な景気の回復傾向と消費税増税前の駆け込み需要の影響もあり、2年連続で前年実績を上回った。
電通総研 メディアイノベーション研究部 研究主幹 北原利行による「2013年(平成25年)日本の広告費」のウェブ電通報解説記事はこちら:http://dentsu-ho.com/articles/789
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2013年(平成25年)の広告費の特徴 |
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1.2013年の総広告費は、「アベノミクス」効果による持続的な景気の回復傾向と消費税増税前の駆け込み需要の影響が出始めた年後半は好調に推移した。前半は、高額商品の売れ行きが良くなるなど日本経済は上向き基調となったが、広告費全体の押し上げまでには至らなかった。通年での総広告費は5兆9,762億円、前年比101.4%と、2年連続で増加した。 2.媒体別にみると、「テレビ広告費」(前年比100.9%)、「新聞広告費」(同98.8%)、「雑誌広告費」(同98.0%)、「ラジオ広告費」(同99.8%)の「マスコミ四媒体広告費」は同100.1%と微増。また、「プロモーションメディア広告費」も同100.1%と2年連続で前年を上回った。メディア価値が定着してきた「衛星メディア関連広告費」(同109.6%)と運用型広告が好調の「インターネット広告費」(同108.1%)は、引き続き堅調に伸びた。 3.業種別(マスコミ四媒体)では、「金融・保険」(前年比115.6%:通販型保険商品、NISAなどが増加)、「外食・各種サービス」(同110.3%:法律サービスなどが増加)、「不動産・住宅設備」(同105.8%:一般住宅などが増加)、「家庭用品」(同105.5%:ベッドなどが増加)、「教育・医療サービス・宗教」(同103.1%:予備校・学習塾、病院・医療サービスなどが増加)など21業種中8業種で前年を上回った。減少業種は、「趣味・スポーツ用品」(同94.2%:オーディオソフト、人形・玩具などが減少)、「官公庁・団体」(同94.6%:政党・政治団体などが減少)、「エネルギー・素材・機械」(同94.9%:電力、ガスなどが減少)、「流通・小売業」(同95.0%:大型量販店などが減少)など13業種であった。 |
1.総広告費の推移
2013年の総広告費は、5兆9,762億円、前年比101.4%と、2年連続で増加した。
2.媒体別広告費の概要
「マスコミ四媒体広告費」は、2兆7,825億円、前年比100.1%。うち「テレビ広告費」は、同100.9%となった。また、「プロモーションメディア広告費」も同100.1%と前年を上回った。さらに、「衛星メディア関連広告費」は同109.6%、「インターネット広告費」も同108.1%と堅調に推移した。
なお、「マスコミ四媒体広告費」を四半期別にみると、年前半は低く、年後半に持ち直した傾向がみてとれる。
各媒体別の状況は、次のとおり。
<新聞広告費>
- 新聞広告費は 6,170億円、前年比98.8%。
- 2013年1~5月は前年割れが続いたものの、6月以降は回復し、堅調に推移。通年では前半のマイナス幅に足を引っ張られるかたちで、前年比プラスには至らなかった。
- 景気回復にともない、輸出関連業種の「自動車・関連品」、NISAや通販型保険が好調であ った「金融・保険」で、出稿が大幅に増加した。また消費税増税前の駆け込み需要を取り込むかたちで、「精密機器・事務用品」(腕時計)などの高額商品の出稿も増加した。前年同様に、通販商品の出稿が多い「化粧品・トイレタリー」なども好調。
- 新聞各社の電子版は引き続き会員数を伸ばしており、地方紙でも電子版のスタートが相次いだ。また新聞4ページ分をつないだ大きなサイズの広告、新聞を広告で包み込むラッピング広告、号外での広告掲載など、インパクトを高める広告手法が活発化した。新聞各社は、さまざまなアイデアで新しい取り組みを始めている。
<雑誌広告費>
- 雑誌広告費は2,499億円、前年比98.0%。
- 電子化の動きや、40代女性誌の大型創刊などもみられたが、同時に休刊なども続いたため、前年比プラスには届かなかった。
- 雑誌広告でシェアの高い「ファッション・アクセサリー」は、同101.3%と健闘。「不動産・住宅設備」「金融・保険」「交通・レジャー」などが前年を超えた。
- 景気回復の波に乗り、ビジネス誌は100%超えと健闘した。
- 創刊雑誌の点数は86点で、そのほとんどが30代以上向けとなっている。
<ラジオ広告費>
- ラジオ広告費は1,243億円、前年比99.8%。
- 首都圏では横ばい、ローカルエリアでは回復傾向がみられる。
- 消費税増税前の駆け込み需要があった「不動産・住宅設備」(前年比116.9%)、「自動車・関連品」(同109.5%)、「外食・各種サービス」(同105.9%)が特に好調であった。自動車との親和性が高いラジオ媒体の特長が見直され、番組提供・全国CMなどが活発に展開された。
- 主要リスナー層と考えられる40~50代の聴取率が回復し、10~20代の聴取率も年間を通じて横ばいであった。
- radiko.jp(ラジコ)には 計37都道府県・69局が参加。ダウンロード数・ユニークユーザー数ともに、引き続き増加した。
<テレビ広告費>
- テレビ広告費は 1兆7,913億円、前年比100.9%。
- 2年連続で増加。
- 2013年上半期は、好調であった前年同期(タイ洪水被害からの復活、東日本大震災の影響の反動増、自動車エコカー補助金関連の大型出稿など)の反動減などで低迷した。特にタイム広告(前年比99.3%)は、「2013ワールド・ベースボール・クラシック(3月)」や「FIFAコンフェデレーションズカップ(6月)」などの大型スポーツ番組があったものの、前年の「2012ロンドンオリンピック バレーボール世界最終予選」「UEFA EURO 2012」などの実績を補うまでには至らなかった。
- 下半期は、企業業績の改善や個人消費の持ち直しなどから出稿が活発化。特にテレビスポット広告の勢いが増し、前年比102.0%と活況を呈した。
- テレビスポット広告は、「金融・保険」(同127.6%:通販型保険、宝くじ、NISA関連などが増加)、「不動産・住宅設備」(同114.6%:不動産仲介などが増加)、「飲料・嗜好品」(同105.3%:ビールなどが増加)などの業種で増加した。
<マスコミ四媒体広告制作費>
(注:広告制作費は媒体別広告費に含まれている)
- マスコミ四媒体広告制作費は 3,091億円、前年比106.2%。
- そのうちテレビCM制作費は2,147億円、前年比107.9%。
- 円安株高の影響もあり、前年にみられた震災復興需要を上回る出稿需要があった。また、消費税増税前の駆け込み需要が、高額商品をけん引した。
- 業種別にみると、「自動車・関連品」「不動産・住宅設備」「金融・保険」が堅調であった。
<衛星メディア関連広告費>
- 衛星メディア関連広告費は1,110億円、前年比109.6%。
- BS放送は740.0億円、同113.8%。前年に引き続き好調。
- CS放送は202.8億円、同103.3%。初めて200億円を突破。
- CATV放送は167.5億円、同100.5%。
- BS、CS、CATVすべてにおいて通販が好調。
- 衛星メディア関連の認知が着実に拡大している。BSは「中高年層」を中心に、視聴の習慣化が進展し、CS、CATVは「富裕者層」を中心に視聴者が拡大。
<インターネット広告費>
- インターネット広告費(媒体費+広告制作費)は9,381億円、前年比108.1%。
- インターネット広告媒体費は7,203億円、同108.7%。
- インターネット広告媒体費を市場全体でみると、デバイスの多様化・進化や景気回復による後押しもあり、2013年は前年を上回る伸び率で成長した。市場の内訳をみると、従来からある枠売り広告は伸びが横ばいとなる一方で、新興領域である運用型広告※は高い伸びを示した。
- 枠売り広告は、「情報・通信」「自動車・関連品」「食品」「飲料・嗜好品」を中心に幅広い業種で出稿が定着。手法としても、主流であるポータルサイトの活用に加え、ジャンルを特化した各種専門サイト、動画などのリッチ広告、ソーシャルメディアやスマートフォンサイトおよびアプリなど、さまざまな展開がみられた。デバイスが多様化する中、広告業務においてはデバイス横断型でキャンペーンを管理する“デバイスフリー”への試みが始まっている。
- インターネット広告媒体費のうちの運用型広告費は4,122億円、同121.6%。運用型広告費の大半を占める検索連動広告の市場は、スマートフォンやタブレットなどの普及拡大も追い風となっており、引き続き拡大基調にある。また、RTB(リアルタイム入札)によるDSP(広告主側からみた広告効果の最大化を支援するシステム)を活用したターゲティング効果の高い新しい広告手法が急成長している。さらに、動画を活用した運用型広告も急伸している。業種としては、従来からの中心業種である「金融・保険」やeコマースを活用する様々な業種だけではなく、「自動車・関連品」「食品」「飲料・嗜好品」などの業種においても、ブランディングを目的に運用型広告の活用が拡大・浸透しつつある。
(※)運用型広告とは、膨大なデータを処理するプラットフォームにより、広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法のこと。検索連動広告や一部のアドネットワークが含まれるほか、新しく登場してきたDSP/アドエクスチェンジ/SSPなどが典型例。なお、枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは、運用型広告には含まれない。
- インターネット広告制作費は2,178億円、同106.2%。
- デバイスの多様化やSNSの浸透により前年を上回ったが、成長率は前年に引き続き鈍化傾向。
- 広告プロモーション活動の活発化に伴い、案件数は増加。しかし、大型案件数の減少や制作単価の下落が続いている。また、運用型広告の増加に伴い、WEBサイトへの誘導施策としてのバナーやランディングページなどでの制作から運用までにおけるコストパフォーマンスが重視されている。
- 前年に引き続き「不動産・住宅設備」は躍進し、2013年は特に「金融・保険」や「化粧品・トイレタリー」「ファッション・アクセサリー」「薬品・医療用品」「教育・医療サービス・宗教」などが成長した。景気に敏感な業界やダイレクトマーケティングを行う業界が目立つ。
- コーポレートサイト、ECサイト、CRMを目的とした会員サイトなどが大きく成長。これらのサイトはオウンドメディアに位置付けられ、企画からシステム/プログラム開発、デザイン/コンテンツ制作、運用保守/成果検証を含む。
<プロモーションメディア広告費>
- プロモーションメディア広告費は2兆1,446億円、前年比100.1%。
- 2年連続で増加。
- モーターショーなどの展示会、商業施設における各種媒体やイベント、交通広告におけるデジタルサイネージ、POPなどの活発化が全体を押し上げる要因として寄与した。
- 一方で、印刷および用紙代の上昇により用紙サイズの縮小がみられる「折込広告」、無宛名便の市場は拡大しているものの競争が激しい「DM」、インターネット広告への移行もみられる「フリーペーパー・フリーマガジン」「電話帳」が前年割れ。プロモーションメディア広告費全体の伸び率に影響した。
- 各メディアの役割がより明確になってきており、ときに融合、ときに競合しながら最適なパフォーマンスを生み出している。
- 「屋外広告」は3,071億円、同102.5%。
- 金融関連のVI、CIによる大型の看板掛け替え需要などにより増加。
- デジタルボ-ドは本格運用から2年目を迎え、さらにメディアが整備された。これまでの「飲料・嗜好品」「自動車・関連品」(外国車など)のみならず、流通などの新規業種による出稿があった。
- 大型ビジョンは7~8月の猛暑の影響で「飲料・嗜好品」による出稿が拡大し、その傾向は9月まで続いた。
- スタジアム看板は試合に伴うスポット出稿が好調。
- 商業施設は「東京スカイツリータウン」や「グランフロント大阪」などが活況だった。
- 「交通広告」は2,004億円、同101.5%。
- 4年ぶりに2,000億円台に回復。
- 業種別では、「飲料・嗜好品」「外食・各種サービス」(エステティックサロンなど)「教育・医療サービス・宗教」(語学学校など)「薬品・医療用品」などが伸びた。
- デジタルサイネージは新設・増設が続いて市場が拡大。特に車内ビジョンの稼働率が高く、電車内のステッカーも好調であった。
- バスシェルターは一部の地方エリア(福岡・大阪・名古屋・広島など)では好ロケーションに設置されているため、稼働率が上がっている。
- 「POP」は1,953億円、同106.0%。
- 消費増加の兆しを見込んだ店頭でのPOP広告費は前年に引き続き増加。
- 業種別では、「自動車・関連品」が好調だったことに加え、料金割引・乗り換えキャンペーンで活性化した「情報・通信」や、消費者向けのキャンペーンが増加した「食品」「飲料・嗜好品」などが伸びをけん引した。
- インターネット広告と店頭を組み合わせる方法が多様化。ネットで店頭誘引を図り、商品の最終購買情報をPOPで補完することで、消費者による購買を促進する手法が増加した。
- 「展示・映像他」は2,680億円、同102.8%。
- 大型展示会(エコプロダクツ・CEATEC・モーターショーなど)の開催がけん引。
- 東京・大阪・名古屋では景気回復や企業業績の回復に伴って展示会やイベントが増加。また、東北では復興イベントなどが増加した。
3.業種別広告費(21業種、マスコミ四媒体のみ)の概要
2013年は21業種中8業種で増加、13業種で減少した。
増加業種は、「金融・保険」(前年比115.6%:通販型保険商品、NISAなどが増加)、「外食・各種サービス」(同110.3%:法律サービス、女性用ウィッグなどが増加)の2業種が二桁の増加。また、「不動産・住宅設備」(同105.8%:一般住宅、住宅展示場などが増加)、「家庭用品」(同105.5%:ベッド、脱臭剤などが増加)、「教育・医療サービス・宗教」(同103.1%:予備校・学習塾、病院・医療サービス、語学学校などが増加)、「自動車・関連品」(同101.4%:軽自動車、セダン、SUVなどが増加)なども前年を上回った。
一方、減少業種は、「趣味・スポーツ用品」(同94.2%:オーディオソフト、人形・玩具などが減少)、「官公庁・団体」(同94.6%:政党・政治団体などが減少)、「エネルギー・素材・機械」(同94.9%:電力、ガスなどが減少)、「流通・小売業」(同95.0%:大型量販店などが減少)、「食品」(同96.0%:健康食品、美容食品などが減少)などの13業種。
電通ニュースリリース
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/pdf/2014014-0220.pdf