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広告は、社会のために何ができるか 

『Communication Shift―「モノを売る」から「社会をよくする」コミュニケーションへ』~並河進

2014/03/20

「広告というものは、もっと社会にとって価値あるものになれないか」。これは、広告に関わる人なら、誰でも一度は考える「問い」ではないだろうか。

かつて高度成長期には、モノが売れるCMをつくることは、すなわち、社会貢献でもあったはずだ。今の時代に広告が果たすべき、そして、これからの時代に広告が果たせるであろう、社会的意義は何だろうか。

「よく見せる」という発想ではなく、「ほんとうにいいことをする」という発想へ転換すること。クライアントと共に、社会のためになる事業をデザインしていくこと。社会的に広げる価値のあるものを広告づくりのスキルで広めていくこと。

社会貢献と広告が融合するようなプロジェクトをつくってきた経験を基にしながら、広告の最前線で活躍するクリエーター(澤本嘉光・永井一史・箭内道彦・佐藤尚之・今村直樹・丸原孝紀・松倉早星・鈴木菜央・石川淳哉・東畑幸多・嶋浩一郎・中村洋基)との対話を通して見えてきた、広告の未来の姿をまとめたものが、『Communication Shift―「モノを売る」から「社会をよくする」コミュニケーションへ』(3月10日、羽鳥書店刊)である。

対話の中で気付かされたのは、共感性の幅の広さや、異質なものの橋渡しをする力といった、広告づくりに関わる人間ならではのポテンシャルだ。そうしたポテンシャルを自覚し、ヒト・モノ・コトをつなげる新しい仕組みを生み出し、社会に貢献していくことを、本書では提言している。

帯の言葉は、「世界中の人が幸せになるまで、僕らの仕事は終わらない」(箭内道彦)。広告づくりに関わる人たちが、もっと自分たちの仕事を誇りに思えるように。この本が始まりとなって、多くの方々の間で、広告とコミュニケーションの未来に向けた議論が起きることを願う。