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愛車が広告媒体になる!CheerDriveの「マイカー広告」が注目される理由

2025/09/22

左から電通佐々木瞭氏、チアドライブ保科昌孝氏、電通青木康太氏
左から電通佐々木瞭氏、チアドライブ保科昌孝氏、電通青木康太氏

まだあまり知られていない「次に来るイノベーター」を紹介する本連載。今回は、電通クリエイティブチームが事業成長に伴走する、急成長中のスタートアップ「CheerDrive(チアドライブ)」を取り上げます。

CheerDriveが提供するのは、生活者が自分のクルマで企業やブランドを広告する「マイカー広告」。

名前の通り、愛車に広告ステッカーを貼り付けて走行することで、好きな企業やブランドを応援(=チア)でき、走行距離に応じた収入が得られるというものです。現在、約10万人のユーザーが登録しており、累計100社以上が利用しています。

CheerDrive 
https://cheerdrive.jp/

チアドライブ

「生活者自身が広告媒体になる」という、新しい広告スタイルはいかにして誕生したのか?チアドライブ代表取締役の保科昌孝氏と、事業に伴走する電通の佐々木瞭氏と青木康太氏が語り合いました。

すでに10万人のドライバーが登録。一般的なOOHとは異なる拡散力とは?

チアドライブ保科昌孝社長。前職のドワンゴでは、ニコニコ生放送のプロデューサーとして「将棋電王戦」などを担当したのち、インターネットと通信制高校の制度を活用した「N高等学校」の立ち上げ・運営に携わった。
チアドライブ保科昌孝社長。前職のドワンゴでは、ニコニコ生放送のプロデューサーとして「将棋電王戦」などを担当したのち、インターネットと通信制高校の制度を活用した「N高等学校」の立ち上げ・運営に携わった。

──はじめに、CheerDriveのサービス概要を教えてください。

保科:クルマのリアウィンドウに広告ステッカーを貼って、企業や商品を一般ユーザーに宣伝してもらう「マイカー広告」というサービスです。登録ドライバーは、「広告を貼って走った走行距離」に応じて収入が得られます。このサービスを利用することで、いつものお出かけでガソリン代の約半額を浮かせることができる仕組みです。

──広告主は、どのような条件で出稿するのでしょうか?

保科:「1カ月につき、1台の走行で総費用1万円」というシンプルな料金体系です。月に最低30万円(30台)から、お申し込み後最短2週間で実施可能です。

チアドライブの仕組み
──一般ドライバーを対象に、マイカーに広告を掲出してもらうサービスは、これまでにないものですね。どのような実績を上げていますか?

保科:2025年8月時点で、登録ドライバー数は10万人を超えており、約2万3000台が稼働しています。通常のサービスに加えて、現在はサービスの普及に向けた事業検証のために、電通の協力を得てPoC(概念実証)も実施しています。通常のサービスとPoCを合わせて、これまで150社以上に広告を出稿していただいています。

PoCは2024年5月から実施し、 ここまでにJOYSOUND、タイミー、家庭教師のトライ、カーセブン、どうとんぼり神座(かむくら)、ACN EXPO EKIDENなどに参加していただきました。

左列上からJOYSOUND、家庭教師のトライ、ACN EXPO EKIDEN、右列上からタイミー、カーセブン、どうとんぼり神座。
左列上からJOYSOUND、家庭教師のトライ、ACN EXPO EKIDEN、右列上からタイミー、カーセブン、どうとんぼり神座。
キャンペーン一覧
https://cheerdrive.jp/campaigns


──10万人というのはすごい人数ですね。マイカー広告には、どのような広告効果がありますか? 

保科:昨年にキャンペーンを実施したJOYSOUNDの場合、都内500台・1カ月の走行でしたが、その後のアンケートで「広告を見たことがある」と答えた人は12%にも上りました(※)。

JOYSOUNDのキャンペーン施策内容は、電通第8マーケティング局が主導。ユーザーの声を車内から発信するような内容が話題をあつめた。
JOYSOUNDのキャンペーン施策内容は、電通第8マーケティング局が主導。ユーザーの声を車内から発信するような内容が話題をあつめた。

青木:これはOOHとしてもかなり大きい数字で、都内在住者のうち約120万人が見た計算になりますね。このJOYSOUNDの事例はテレビやYahoo!ニュースで取り上げられ、ニュース動画はTikTokで146万回、YouTubeで19万回再生されるなど、広く話題になりました。

保科:ニュースで注目していただけたのは、マイカーがあれば誰でも参加できるので、生活者が“自分ゴト化”しやすかったからだと思います。PoCを実施するなかで実現した広告キャンペーンが、新しい広告の仕組みとしてニュースで取り上げられるようになってから、CheerDriveへの応募者も大幅に増えました。

2025年に入ってからは、毎日100人ずつドライバーが増えている状況です。企業によっては、300台の広告掲出を募ったところ、定員の10倍にもなる約3000人の応募があったケースもありました。

佐々木:ちょうどこのキャンペーンのとき、世の中はガソリン代の高騰が世の中の大きな関心ごとになっていました。広告を貼るだけで、車移動にかかる費用が半減し、おでかけが気軽になるというシンプルなメッセージを提示したことで、ユーザーの共感が得られたのだと思います。

保科:アンケート調査では、参加していただいたドライバーの 満足度は98%にも上っていて、Cheer Driveが生活者に求められているサービスだということを証明する結果でもあると感じています。

──CheerDriveのサービスはOOHの一種と捉えることができます。広告効果という点で、ビルボードなどの一般的なOOHと異なる点はありますか?

佐々木:CheerDriveは、生活者自身が広告出稿の当事者になるからこそ、普通の広告施策にはないユニークなエンゲージメントが生まれているところが面白いと思っています。

ドライバーがまるで商品や企業のアンバサダーになったように、自分の同僚や友人、SNS上の仲間に向けて自発的にインフルエンスしていくという現象が起きています。

保科:おっしゃる通りで、「参加したドライバー自身の発信力」を借りて広告がその影響力を広げていくという、副次的な効果が大きいんです。なお、ドライバーへのアンケート調査によれば、マイカーに広告を出していると、広告について1カ月で8.7人に話しかけられるというデータが出ています。ご近所さんや友人、会社の同僚など、周りの人たちが気になって聞いてくるようです。

青木:ご近所さんなどは、駐車場などで毎日見ることもあるわけで、いわば広告としてのフリークエンシー(接触の頻度)が大変高いことになりますよね。

保科:広告を見た人とのコミュニケーションが生まれて、例えばスポーツチームの広告なら、「私もそのチームを応援しているんですよ」と話しかけられて盛り上がる。一般的な広告ではあり得ない、マイカー広告ならではの現象だと思います。

青木:また、広告を見た人が撮影して、SNSで拡散する現象も起きていますね。これはOOH全体の特性でもありますが、それが人にひもづいて、毎日移動するという点が新しい。広告を見たことを誰かと共有したくなる点でも効果の高い、本当に面白い媒体だと思います。

※調査概要:
マクロミルによるアンケート調査(2025年8月実施、東京都在住の20~60歳、人口構成比に基づく1万人対象)


自動車に貼られたテレビ番組ステッカーから得たヒントが、サービスの原点に

電通 佐々木瞭氏。コピーライターとして、経営者のそばで企業のミッションやビジョンの言語化、ステークホルダーコミュニケーションの支援等を行う。Cheer Driveがビジネスモデルを刷新するタイミングで保科社長に伴走し、企業リブランディングやコミュニケーション設計、PoC開発などを担当。
電通 佐々木瞭氏。コピーライターとしてのキャリアを生かし、経営者の傍らで企業のミッションやビジョンの言語化、ステークホルダーコミュニケーションの支援等を行う。Cheer Driveがビジネスモデルを刷新するタイミングで保科社長に伴走し、企業リブランディングやコミュニケーション設計、PoC開発などを実施。

──保科さんがマイカー広告のサービスを考えたきっかけは何だったのでしょうか?

保科:神奈川の大学に通っていたとき、街でリアウィンドウに「水曜どうでしょう」のステッカーを貼った車をよく見かけて、「これは一体なんなんだろう?」と気になっていたんです。後で、それが番組のタイトル名だったことを知りました。北海道テレビ放送のローカル番組だったのが、人気が出て関東でもブームになっていたんですよね。それがきっかけで実際に番組を見たところ、とても面白くてハマってしまいました。

青木:一見おどろおどろしい書体のステッカーですね!たしかによく見かけましたし、インパクトがありました。「これは一体なんだろう」という。

保科:あのステッカーを貼っていたのは、おそらく番組の熱烈なファンの方だと思います。思えば、これってすごい広告効果ですよね。そこで番組と利害関係のない第三者がステッカーを貼る訴求力の強さを体感しました。そのときに、車のリアウィンドウを広告媒体として使えないだろうかという構想が生まれたんです。

──マイカー広告の発想自体は、学生時代に浮かんでいたわけですね。

保科:そういうことになります。大学卒業後は、ドワンゴのニコニコ生放送の番組プロデューサーなどを経て、通信制高校であるN高の立ち上げに携わりました。そのN高の生徒たちは、起業意欲が旺盛で、高校生のうちから会社をつくる学生が多かったんです。その姿を見ているうちに、自分も起業したいという思いが強くなっていき、自分がやるとしたらやはりマイカー広告だろうと。

起業に当たっては、学生たちを見ていたので、何がボトルネックになるのか、ビジネスとして何が必要になるのか、あらゆる要素を徹底的に考え抜き、満を持して2020年にチアドライブを設立しました。 

佐々木:2020年、ちょうどコロナ禍に突入したタイミングですね。

保科:そうなんです。最重要だったアプリの実装能力の高いプログラマーも見つかり、自分なりに十分な準備期間を経て起業したのに、コロナ禍でもくろみが大きく変わってしまって。2021年4月にサービスをローンチしたのですが、まだまだ人流が少なくて広告を見てもらえず、大変苦労しましたね。何しろ実績がつくれないので、「企業から広告費をいただき、ドライバーに還元する」という、現在のCheerDriveのビジネスモデルが成立しませんでした。

──厳しい状況の中で、広告主とドライバーにどのようにアプローチしたのでしょうか?

保科:悩んだ結果、「ドライバーがお金を払い、広告主のステッカーを貼って応援する」というビジネスモデルに一時的に転換しました。例えば、ドライバーが数千円の参加費用を支払って、自分の大好きな野球チームのステッカーを貼る。そして、規定の距離を走行すると、その球団のグッズやチケットがもらえるといった形です。

このような「ファン支援型」のビジネスモデルに変えたところ、ファンの熱量が高いアニメや、Jリーグチームなど、多くの企業・団体が集まりました。そうした企業はSNSなどで、ファンに向けて積極的にCheerDriveの話を発信してくれたので、少しずつ認知が高まり、サービスに参加してくださるドライバーも増えていきました。

われわれとしては、「車に広告ステッカーを貼る」という、これまでにない文化をまずつくらなければいけなかったので、あの時期に「ファン支援型」を選んだのは、必要なことだったと思います。そこを支えてくださったドライバーの熱量にも感謝しています。

──とはいえ、ファンの熱量だけに頼るのはビジネスの持続可能性の面でも限界がありそうです。そこから企業がお金を払って出稿するという、いわば本来のビジネスモデルへ再転換したきっかけは何だったのでしょうか?

保科:2024年に前澤ファンド代表の前澤友作さんと出会ったことです。前澤さんが街中で広告ステッカーを貼っている車を見て、CheerDriveに興味を持ったらしく、当社に連絡してきてくださったのです。ごく普通に「問い合わせフォーム」から連絡いただいたので、「まさか、あの前澤さん!?」と驚きましたね(笑)。

──前澤さんからはどのようなお話がありましたか?

保科:最初にお会いした際に、「すごくシンプルなビジネスモデルで、世の中にありそうだが誰もやっていない。そこに可能性を感じた」とおっしゃってくださいました。そこで前澤さんに事業をプレゼンしたところ、出資してくださることになり、もともとやりたかった、「広告主から広告費をいただき、ドライバーに支払う」という今のビジネスモデルに戻しました。

CheerDriveのコアな価値は、人の移動を軽くすること。

電通 青木康太氏。技術職から始まり、キャリアの中でコピーライターや営業、デジタルメディアのプランニングなど幅広い職種を経験。2024年にチアドライブが事業規模を拡大するタイミングで参画し、プランナーとしてPoCの実施や、パートナーとなる各企業との調整役までを担う。
電通 青木康太氏。技術職から始まり、キャリアの中でコピーライターや営業、デジタルメディアのプランニングなど幅広い職種を経験。2024年にチアドライブが事業規模を拡大するタイミングで参画し、プランナーとしてPoCの実施や、パートナーとなる各企業との調整役までを担う。

──電通がチアドライブの事業に伴走することになった経緯は?

佐々木:CheerDriveは、前澤友作氏が設立した、社会課題の解決を目指す起業家に出資を行う「前澤ファンド」から出資を受けています。他の出資先スタートアップを電通が支援していたご縁で、私たちと保科さんを引き合わせていただいたんです。

企業の中身から見え方まで生まれ変わらせていくタイミングとあって、保科さんと一緒に、CheerDriveというブランドを一から考え直しました。

保科:まず、電通さんとご一緒できることになり、大変心強く、またうれしく感じました。企業や生活者がCheerDriveのサービスを利用するにあたり、どのような点を気にするのかといった、電通さんの持つユーザー視点やマーケティングの知見は、大いに参考になりました。それだけではなく、電通さんは多くの企業とのリレーションシップがあるので、出稿の交渉で力になっていただいています。PoCで大きな企業に参画していただけているのも電通さんの力が大きいです。

──ブランディングを一から考えたということですが、どういったことがありましたか。

保科:CheerDriveとは、社会に対してどんな新しい価値を約束するサービスなのか。その約束を、どんな人にどんな形で訴求するべきなのか。世の中の課題を解決する企業としての顔つきをつくりあげることを手伝っていただいています。

佐々木:このサービスがなぜ今、そして未来の世の中に必要不可欠なのか。保科さんとのディスカッションを続けていく中で、それをわれわれが咀嚼して吸収することが、このプロセスの大部分を占めています。

──ドライバーへの訴求という点では、「いつも通りクルマで⾛るだけで、ガソリン代の約半額にのぼる副収⼊が得られます」といった文言はすごく響くなと思いました。

保科:そういったメッセージも、佐々木さんたちに相談しながら一緒につくっています。

佐々木:ただし、CheerDriveのサービスの本質は、「ガソリン代を稼ぐための隙間アルバイト」ではありません。そのコアな価値は、人の「移動したい」気持ちを軽くしてあげることにあります。

今、ガソリン代が高騰していて、車移動のコストは増え続けています。ドライバーにとって、移動にかかる経済的な負担が減って助かるサービスだと思っていただけるといいなと。そして、その最善の手段が、マイカー広告です。

自分の好きな企業や団体、商品サービスを応援することで広告収入を得られるという、いわばWin-Winの関係によって持続可能なものになっているんです。私たちはこの仕組みを「ファンエンゲージメント広告」と呼んでいます。

──なるほど、チア+ドライブというサービス名にも、その思いが込められていますよね。

保科:サービスの根幹を伝えるという意味では、これも佐々木さんたちに考えていただいたCheerDriveのキーメッセージ、「拡めるチカラをクルマにのせて。」にも表れていますね。

ドライバー、つまり生活者自身が、自分の推している商品や企業を世の中に「拡める」アクションを自らやってくれる。それに対するお礼として広告費が支払われる。この形が私の考えていたCheerDriveというサービスの原点で、今ようやく、当初思い描いていたビジネスモデルが実現できてきたかなと思います。

──また、ドライバーたちがステッカーを貼って走ることが、単に広告として商品やサービスを「拡める」だけでなく、CheerDriveという広告モデルを「拡める」ことにもつながっているんですね。

佐々木:そうなんです。よくあるのが、広告主の社長さんが、街でCheerDrive広告を貼ったクルマを見て「これはなんだ」と興味を持ち、問い合わせてくださるというケースですね。やはり、社長が自分の目で見たということの説得力は大きいです。

──同様に、広告を貼ったクルマが街を走ることは、新たなドライバーを増やすことにもつながると。

佐々木:はい。先ほどお話にありましたが、マイカー広告のキャンペーンがニュースに取り上げられることが、結果的に、その仕組み自体を面白いと感じる人が増えていくことにつながるんです。

広告を見た人が、SNSやリアルで話題化してくれて、興味を持った人がドライバーとして「伝え手側」にどんどん回っていき、さらに見る人が増えて……という好循環が生まれています。PoCを実施したことで、CheerDriveのビジネスモデルが成長していく効果を検証できました。

青木:一つ、私が興味深いと感じたのが、広告主から「広告費を払って、自社の営業車にステッカーを貼りたい」という要望もあったことです。営業車に広告を貼ることで、お客さんとの会話が生まれるかもしれないし、従業員のエンゲージメントを高める手段にもなるという可能性を感じる事例でしたね。

チアドライブチアドライブ
企業リブランディングにあたっては、電通第8マーケティング局 笹川真氏、BXCC 岡田憲明氏、三島良太氏、CXCC 柳澤世良氏が加わり、CI(コーポレート・アイデンティティ)やウェブサイトなどを刷新
企業リブランディングにあたっては、電通第8マーケティング局 笹川真氏、BXCC 岡田憲明氏、三島良太氏、CXCC 柳澤世良氏が加わり、CI(コーポレート・アイデンティティ)やウェブサイトなどを刷新
──「クルマに貼る広告」というもの自体が前例のない取り組みで、クリエイティブ面でも模索中かと思いますが、マイカー広告ならではのユニークな取り組みはありますか?
保科:商品やサービスをただ宣伝するだけでなく、電通さんならではのアイデアもいただいています。例えば、ラーメンレストランのどうとんぼり神座の案件では、広告ステッカーを起点にした「#かむくらの走るクーポン!どうとんぼり神座PRドライブキャンペーン」も考えていただきました。
キャンペーン施策は、電通社内の神座クリエイティブチームが企画を開発。「走るクーポン」として、SNS上で目撃投稿が相次いだ。
キャンペーン施策は、電通社内の神座クリエイティブチームが企画を開発。「走るクーポン」として、SNS上で目撃投稿が相次いだ。
キャンペーン施策は、電通社内の神座クリエイティブチームが企画を開発。「走るクーポン」として、SNS上で目撃投稿が相次いだ。
キャンペーン施策は、電通社内の神座クリエイティブチームが企画を開発。「走るクーポン」として、SNS上で目撃投稿が相次いだ。

佐々木:ステッカー広告が「走るクーポン」になっているんです。どういうことかというと、広告ステッカーが貼られた車両を撮影し、キャンペーンのハッシュタグを添付してXに投稿していただくと、トッピング無料券がもらえるという内容でした。広告を見た人がちょっと幸せになれる企画が話題になりましたね。

青木:マイカー広告というビジネスはまだまだ始まったばかりなので、これからも案件ごとにいろんなアイデアが出てくると思っています。

「生活者が広告媒体になる」サービスのさらなる可能性

保科氏、佐々木氏、青木氏
──マイカー広告は、生活者に広告してもらうというこれまでにないサービスだけに、企業によってはトラブルのリスクを心配されるケースがあるかもしれません。この点についてはいかがですか?

保科:リスクについては、「ファン支援型」のサービスだった時期にほぼ解消されていました。リスクとは、例えば危険走行などドライバーの悪質な行為で広告主がブランド毀損を受けないか?といったことですが、そのような場合はドライバー個人に対してきちんと責任追及することを、加入時にドライバーにしっかり確認しています。また、車に貼る広告なので、安全運転にも十分に配慮して展開していきます。 

──先ほど、「起業前にあらゆることを考え抜いた」というお話がありました。気になるのは、ドライバーが広告を貼って一定の走行距離を走っていることを、広告主にどうやって保証するのかという点です。

保科:走行距離の虚偽報告がないよう、サービスの利用開始と終了時には、CheerDriveのアプリに実装されたカメラ機能で、車のオドメーターと、ステッカーが貼られた車の画像をドライバーに撮影して送ってもらっています。また、ステッカーは一度はがすと同じように貼れない仕様になっています。こういった点はアプリの仕様も含めて、ほぼ事前に検討した通りにできていますね。

佐々木:新しいサービスですが、保科さんが長年構想・準備してきただけあり、広告主側とドライバー側が安心して使えるように、隅々まで意識が行き届いているように感じます。
ステッカーは、シースルーフィルムで走行に支障がないこともその一つです。

現在のウェブサイトは、私も一緒につくらせていただきましたが、メインメニューに、サービスの快適な運用について伝える「COMFORTABLE」のページを設けているのが、信頼性を重視する会社の姿勢を表していると思います。

──たしかに、会社概要やミッション、サービスと並んでその項目が設けられているのは印象的です。最後に、CheerDriveの今後の展望について伺えますか?

青木:今回PoCを実施して感じたのは、このビジネスモデルの大きな可能性です。広告主にとっては、口コミが生じやすく認知されやすい、新しいOOHとしての可能性がありますし、広告媒体となるドライバーにとっては、ガソリン代を稼ぐ手段にも、ファンとして企業やブランドを応援する手段にもなる。

CheerDriveのような、生活者が広告媒体となるビジネスモデルは今後増えていくかもしれません。保科さんと私たちは今、生活者が広告クーポンを表示したリュックを背負って歩くという、マイカー広告に続く広告モデルを考えています。

これは、リュック型アフィリエイト広告で、詳細は今後発表しますが、広告を見た人が「アクション」を起こすとリュックを背負っている人に報酬が入るしくみです。CheerDriveの応用例のような感じですね。

保科:「生活者自身が広告媒体になる」という視点から、企業と生活者の新たなエンゲージメントがもっと生まれると思います。そして、CheerDriveによって企業や個人のいろんな課題を解決できると考えています。そのためにも、あらゆる業種の企業とコネクションを持ち、生活者課題にも詳しい電通グループと一緒に、新しい広告モデルを考えていきたいですね。

佐々木:私たち電通も、CheerDriveは、事業を通じて社会の課題を解決できるサービスだと信じています。CheerDriveのように、これまで世の中になかった新しい価値を提供するスタートアップが次々と生まれ、存在感や影響力を増してきている昨今。電通はクリエイティビティを駆使して、こうした新しい価値と可能性をユーザーの視点に立って翻訳し、広げていく支援を行っていきたいと思っています。

──CheerDriveは、マイカーという普段見慣れたものが広告媒体になったわけですが、イノベーションを起こす「未知の種」は、私たちの日常の中にあるのだなと感じました。本日はありがとうございました!

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