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日本コカ・コーラ社が成果を上げた、効果的なテレビCMプランニングとは?

池田 哲也

池田 哲也

日本コカ・コーラ 株式会社

武井 裕亮

武井 裕亮

日本テレビ放送網 株式会社

瀧川 裕太

瀧川 裕太

株式会社 電通

「発注からオンエアまで時間がかかる」「効果測定が限定的」といった課題を抱えていたテレビCM。現在は、これらの課題を克服し、テレビメディアへの出稿をアップデートするサービスが増加しています。

本連載では、高度化するテレビメディアについて、新たに登場しているサービスや、そのサービスを利用した広告主の事例を紹介。広告主のKPIや課題を踏まえて、どのようにテレビCMを活用していけば良いかをお伝えします。

今回は、「リーチを予測し、広告枠のオンライン取引を行うサービス『スグリー』でCM枠を直前に買い足す」取り組みに挑戦して成果を収めた、日本コカ・コーラ社(以下、コカ・コーラ)の事例を紹介します。

コカ・コーラのマーケティング本部に所属する池田哲也氏、「スグリー」の開発に携わった日本テレビの武井裕亮氏、電通ラジオテレビビジネスプロデュース局の瀧川裕太氏が語り合いました。

(左から)電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局の瀧川裕太氏、日本コカ・コーラ マーケティング本部シニアディレクターの池田哲也氏、日本テレビ 営業局営業戦略センター アドリーチマックス部次長の武井裕亮氏


「SHAREST Reach Planner」と「スグリー」で、ユニークリーチ獲得に有効な枠をバイイングする

──はじめに自己紹介をお願いします。

池田:複数の広告会社でメディアプランニングに従事した後、コカ・コーラに入社しました。現在はマーケティング本部に所属し、メディアプランニングを担当しています。

武井:日本テレビに入社後、デジタル媒体のアライアンス締結などを経て、テレビCMのスポット枠販売に携わりました。このとき、デジタルとテレビの広告の売り方の違いに大きな驚きを受けまして……。このことをきっかけに、「デジタル広告のように運用可能なテレビCM」の実現を目指し、放送局の放送設備と接続することでテレビ広告のデジタル化を可能にする「アドリーチマックスプラットフォーム」と、デジタル化された広告枠のオンライン取引を行うサービス「スグリー」の企画・開発を主導しました。

瀧川:電通に入社後、営業を経て、ラジオテレビビジネスプロデュース局に異動しました。データやAIを使いながら、予測視聴率などを活用し、放送局と連携しながらテレビCMを効率良く活用していただくための施策を企画・実施しています。今回の取り組みでは、テレビスポットとして購入したCM枠にスグリーで追加購入したCM枠を加えて、キャンペーン全体のユニークリーチ獲得効率を高めるサポートをしました。

──今回の取り組みは、テレビCMのリーチ獲得の効率化にフォーカスしたものですが、これまでリーチに対してどのような課題がありましたか?

池田:キャンペーンの認知度を上げることが、テレビCMを用いる主な目的ですが、テレビの視聴状況が少しずつ変化する中、これまで通りのプランニングでは、従来通りにテレビ出稿を行っても、期待するリーチを獲得することが難しいという課題を感じていました。

武井:最近は、メディアプランニングにおいて、「テレビCMは使わず、デジタルで良い」という広告主が増えてきていると感じています。私が社内で、Ad Reach MAX(アドリーチマックス)の企画を提案したのは2021年のコロナ禍で、世の中がデジタル一色になった時代でした。その中で、テレビをデジタルの文脈で捉え直したときにどうあるべきなのかという視点から生まれたのが、Ad Reach MAXです。

──今回の取り組みでは、リーチ獲得の効率化のために具体的にどのような施策を行いましたか?

瀧川:従来通り、テレビスポットとしてCM枠を購入した後、電通のリーチ予測システム「SHAREST Reach Planner」で、リーチに寄与するCM枠を特定し、スグリーで追加購入しました。スグリーでは入札コストを設定できる仕様になっているので、リーチ獲得コストの過去実績を考慮し、効率化する値段で購入を実施しました。

テレビ


──「SHAREST Reach Planner」は、どのようなシステムですか?

瀧川:過去の視聴率などさまざまなデータからAIを用いて算出した予測視聴率と、各番組の視聴者の重複の予測から、ユニークリーチの予測を可能にしたシステムです。機能は大きく2つあります。

1つは、ユニークリーチ予測機能です。同じ人が何度も同じ広告に接触することを加味し、1つのスポットキャンペーンでどれだけのユニークリーチが獲得できそうかを予測します。

2つ目は、追加すべきCM枠の検索機能です。スポットキャンペーンのみで獲得できるリーチスコアを予測した上で、どの放送局のどの枠を買い足せばリーチが最も効率良く伸びるのかを見極めることができます。

今回のコカ・コーラさんとの取り組みでは、スグリーで購入可能なCM枠の中から買い足すべき枠を特定し、1枠ずつ買っていきました。過去のスポットキャンペーンの実績をもとに基準値を設定し、今回の予測リーチスコアと比較することで、いくらでCM枠を追加購入すれば効率的かつお得にリーチを伸長させられるのかを検討し、入札条件を設定しました。結果としてリーチ効率を改善できました。


──続いて、スグリーについて武井さんから説明をお願いします。

武井:スグリーは、日本テレビの広告枠取引プラットフォームAd Reach MAXのUIの1つで、2025年4月にローンチしました。スグリーには2つの機能があります。

1つがインプレッション予約。事前に予算や期間、ターゲット、インプレッション数を決めていただきます。その後、契約インプレッション数を達成するためにCM枠を自動運用します。既存のテレビスポットとの一番の違いは、発注時に設定したインプレッションが保証される点です。システムで自動運用するため、CMがいつ流れるかを事前に確認いただくことはできません。

もう1つが自動入札オークションです。これは特定の枠をオークション形式で競り合うものです。例えば、「9月8日の17時から17時59分の1時間の枠に価値があるから買いたい」と指定していただくと、ピンポイントにその枠を入札します。もちろん入札制なので落札できないこともあります。その場合は、別の1時間枠や翌日にリカバリーすることもできるので、リードタイムを限りなく短くできます。

──今回の取り組みでは、どちらの機能を利用しましたか?

武井:自動入札オークションです。これはチャレンジングな商品だと思っていました。しかし、実際に運用が始まってみると自動入札オークションのニーズが増えてきていて、4月の時点ではインプレッション予約が6、7割で、自動入札オークションが3割くらいでしたが、9月時点では半分以上が自動入札オークションになっています。

瀧川:なぜ自動入札オークションのニーズが増えているのですか?

武井:幅広いKPIに適応できるからでしょうか。リーチを大切にされているお客さまの中でもマーケティングにおいて重視する指標はバラバラです。これまではテレビとなると強制的にGRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)というKPIに押し込められてきたと思うのですが、スグリーを使うことで、よりマーケティング計画に沿うKPIでCM枠を買っていただけるようになりました。そうなると、自動入札オークションの方が用途や目的が幅広く、使われやすいのかなと、いろいろな方の話を聞いている中で感じています。



スグリーで6本のCM枠を購入し、リーチが伸長

──「SHAREST Reach Planner」と「スグリー」を組み合わせた今回の施策について、それぞれ感じたことを教えてください。

瀧川:スポットキャンペーンの枠取りがある程度決まった後に、追加でリーチに寄与する枠を選んで買うことができて、相性が良いと思いました。

池田:通常のバイイングにプラスオンでCM枠を買い足し、効果を最大化するという使い方は、われわれが常に求めているメディアの効率やビジネス貢献にマッチしていて、すごくいい点に目をつけていただいたと思っています。

武井:私は、今回「SHAREST Reach Planner」を使うことで、日本テレビが抱えていた2つの課題を解消していただいたと思っています。

1つは、スグリーはまだ日本テレビの枠だけしか買えないことです。そのため、コカ・コーラさんのように他局含めて広くCM枠を買う場合、当局だけスグリーで、他局は従来のスポット枠というのは効率が悪いと思います。しかし今回、ベース部分は従来のスポット枠で買いながら、足りない部分はスグリーを使って補完していくというように、スグリーを追加オプションのように使っていただけました。このスグリーの使い方は、現在、スグリーでは日本テレビのCM枠しか買えないという課題を解消するものだったと思います。

もう1つの課題は、「スグリーをどう使っていいか分からない」という方が多くいらっしゃることです。今回、「すぐリーチできる『スグリー』」という名前通りに、スグリーを使ってリーチを獲得できる提案をしていただけたので、出稿してくださるお客さまに適切な使い方をお伝えしやすいアイデアだったと感じています。

瀧川:スポット枠は直前になるまでどこで流れるか分からない欠点があります。ユニークリーチ獲得という観点では、無駄打ちをあまりしないことが大切です。同じ人に過剰にCMが当たることを避けながら、有効フリークエンシーを達成する、すなわちCMが当たっていない人にちゃんと当てることができるのは、直前で購入できる「スグリー」のメリットだと思います。単にCM枠を買い足せば良いわけではなく、リーチ獲得に貢献するCM枠を予測し、過去実績を基にした基準値以下の金額で入札できたので、良いご提案ができたのかなと思っています。

テレビ


──今回の取り組みの結果を教えてください。

瀧川:スグリーで6本のCM枠を購入し、過去実績と比較して効率的にリーチを伸長することができました。

テレビ

 

池田:今回の結果について、社内からは、テレビのメディア効率をさらに良くできるようになっているという反応がありました。

瀧川:結果として、スグリーで買った枠はすべてリーチにしっかり寄与していて、すごく良かったと思っています。社内からは、こういう活用を広めていきたいという意見が出ており、問い合わせもいただいています。

武井:サービスを始めてまだ2カ月目の2025年5月に実施した取り組みだったので、日本テレビの中でも注目されていました。いい結果が出たので、スグリーの活用法を示せたという意見が社内から出ました。

AI活用やプラットフォーム横断を通じて、世の中に最適な広告を届ける

──今後の展望をお聞かせください。

池田:気温に応じてCMの出稿量を調整できたらいいなと考えています。例えば、当社製品のアクエリアスは、データを見ると、気温がある一定値よりも上回る日や、前日比で何度高いときに売れやすいといった特徴があります。そのような条件に当てはまったときにメディアへの露出量を増やして売り上げを伸ばせないかトライしたことがありました。デジタルではやりやすかったのですが、従来のテレビでは難しさを感じていました。今後、テレビCMでもそのような使い方ができたら良いと思います。

武井:実は、スグリーの気温連動機能を先日リリースしました。例えば、気温が35度以上になったときだけ出稿いただき、それ以下ならやめることができるようになります。また、晴れているとき、もしくは雪が降っているときだけ出稿するなど、天気の設定さえすれば自動的に出稿を調整できる機能もリリースする予定です。

瀧川:スグリーの気温連動機能が今後発展すると、例えば、コカ・コーラさんのCMが流れている日は、熱中症の危険がある暑い日だから水分をとった方がいい、など実生活とつながりを持った広告訴求が可能になり、生活者にとっても有益だと思います。そのような取り組みが今後できたら素晴らしいですし、より広告があるべき姿に近づくような気がしました。また、テレビ番組の詳細は直前に出ることが多いので、例えばAIと掛け合わせてどの番組の枠にどんなCMを流せば効果が上がるかを測定できれば、スグリーの直前に買えるというメリットを生かすことができると思います。

武井:そうですね。時代やムードは刻一刻と変わっていて、世の中の流れとフィットしていればしているほど、広告も受け入れられていくと思います。リアルタイムに広告を打つためにもスグリーを活用できるといいですし、今後AIの時代になるとよりスピード感が必要になってくると思うので、より進化させていきたいです。

池田:今回、まずはユニークリーチの量を増やすことができたという効果は確認できました。今後は、スグリーで買った枠の質の部分についても見られると、よりスグリーの活用意義が高まると思います。

私たちメーカーとしては、どの媒体を通じてでもいいので、広告が消費者に届いてほしいと思っていますが、いろいろな媒体を通じて過剰に同じ広告に当たるのは、逆に企業にとってマイナスになります。そのため、メディアプラットフォーム横断で、届けるメッセージの量をコントロールできるのが理想形だと思っています。テレビCMをデジタルのように使えるスグリーはその理想につながる取り組みとして、可能性を秘めていると感じています。そのため、今後も使っていきたいですし、どんどん進化していくことを期待しています。

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著者

池田 哲也

池田 哲也

日本コカ・コーラ 株式会社

ジャパン&サウスコリアオペレーティングユニット マーケティング本部 IMXメディアストラテジー&オペレーションズ

シニアディレクター

1995年にI&S BBDO入社。テレビ局担当やメディアプランニング、イギリス研修を経験。2006年にグループエム・ジャパンへ移り、さまざまな外資系クライアント担当。2016年から日本コカ・コーラで多くのブランドキャンペーンを手掛け、Tokyo 2020オリンピックや渋谷コークビジョンの開発にも携わる。

武井 裕亮

武井 裕亮

日本テレビ放送網 株式会社

営業局営業戦略センター

アドリーチマックス部次長

テレビ広告をもっと使いやすくする「アドリーチマックスプロジェクト」の事業統括。テレビ×デジタルを融合した広告枠取引プラットフォーム「スグリー」のマーケティング活用と業界共通化をリード。

瀧川 裕太

瀧川 裕太

株式会社 電通

ラジオテレビビジネスプロデュース局 テレビ市場開発部

プロデューサー

ビジネスプロデューサーとしてクライアント業務を担当。22年よりラジオテレビビジネスプロデュース局に所属し、AIとデータを活用したテレビソリューションの開発から運用までを担い、次世代のテレビ広告による高度化・効率化を推進。

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