左から、電通 岩波寿起氏、講談社 天野友里亜氏、電通 廣畑功志氏 日本のアニメやマンガなどのIPコンテンツが世界的に市場を拡大しています。その中で、アニメ「ガチアクタ」のグローバルコミュニケーションが、世界中で大きな反響を呼びました。
「Gachiakuta World Takeover」というコンセプトのもと、グローバルSNS・ウェブサイトを立ち上げ。さらに、世界規模でつながるグラフィティビジュアルを展開し、世界各地でワールドプレミア(先行上映会)も実施。これらの試みにより海外ファンに火をつけることに成功したのです。
アニメ第1話が放送されると、世界有数のアニメプラットフォーム「クランチロール」にて7月クールアニメの平均視聴ランキングで第1位を獲得するなど、新作アニメとしては異例の盛り上がりを見せています。
本記事は、「ガチアクタ」という作品をいかに世界へ届けたかがテーマ。講談社の海外ライツを担当する天野友里亜氏を招き、電通の岩波寿起氏、廣畑功志氏とともに、成功を収めたグローバルコミュニケーションについてお聞きしました。
「ガチアクタ」とは?
犯罪者の子孫が暮らすスラム街の少年・ルドを主人公とした物語。ゴミがあふれる世界で、人通者(ギバー)と呼ばれる異能力者たちが「常識」「権力」「差別偏見」と闘うバトルアクション作品。
原作は漫画担当・裏那圭氏、グラフィティデザイン担当・晏童秀吉氏の両名により2022年12月号の「週刊少年マガジン」にて連載がスタート。「次にくるマンガ大賞2022」のコミックス部門でGlobal特別賞を受賞。2025年7月にはテレビアニメの放送がスタートし、話題を呼んでいる。
グローバルコミュニケーションが始動、なぜ「ガチアクタ」だったのか 講談社 天野友里亜氏 ──皆さまの自己紹介をお願いします。
岩波:私は電通へ入社以来17年ほど、出版社とのビジネスに携わってきました。アニメ「ガチアクタ」の海外宣伝チームでは、講談社さんをはじめとする製作委員会(※)と、海外のライセンシー(許諾先)との間の調整業務をメインで担っています。主にクランチロール、メディアリンクといった海外ライセンシーとのやり取りが多いですね。
※製作委員会……異なる業態の企業が、アニメや映画などの作品制作を目的として出資・役務分担をする組織体。アニメの製作委員会では原作出版社、音楽レーベル、アニメ制作会社、ゲーム会社、放送局、広告会社などが参画し、各社の強みを生かして作品をグロースさせていく。
廣畑:私は普段は主に広告クリエイティブや、マンガやアニメのグロースを担当しています。今回のアニメ「ガチアクタ」の海外宣伝チームでは、これまでのIPコンテンツの宣伝経験を生かし、クリエイティブ全般を統括するクリエイティブ・ディレクターとして関わらせていただいています。戦略立案に加え、映像・SNS展開といったアウトプットの企画・制作・ディレクションをメインで担当しています。
天野:私は、講談社のアニメ・ゲーム事業部に所属しています。アニメの映像権を海外にライセンスするのが仕事です。今回のプロジェクトでは、ライセンサーとして施策全体の監修を主に担当しています。
──「ガチアクタ」のお話を伺う前に、日本のアニメやマンガといったコンテンツを取り巻く状況を教えてください。
天野:動画のサブスクリプションサービスの普及と、その後のコロナ禍における「巣ごもり需要」で、世界的にアニメおよびマンガの需要がすごく伸びました。コロナ開けで少し落ち着きを見せましたが、それでもコロナ前と比べても成長を続けています。特にアニメに関して言えば、幅広く展開されるようになってきていて、海外の多くの地域においてはもはや日本アニメを見るということは珍しい趣味ではなくなってきています。
3兆円産業となった日本アニメ。動画のサブスクリプションサービスが普及しはじめた2014年頃を境に海外市場が急伸。今や日本市場を逆転し、海外売上の方が大きくなっている。 ──今回、日本アニメとしては異例とも言える、新作アニメの大々的な海外プロモーションが行われました。数ある作品の中で「ガチアクタ」を選んだ理由をお聞かせください。
天野:まず、「ガチアクタ」の原作に対する海外出版社の反応が大きかったんです。コミックライセンスを扱っている部署の同僚と話をしていた時に、「この作品はすごい」と。そうでない場合も増えてきましたが、それでもいまだに外国語版原作ライセンスの方が、アニメより先に動く場合があります。その情報をもって、アニメライセンスのセールスをしたら、やはり他の作品とは反応が違った。これは海外でいけるぞ、いかなきゃ、と思いました。 「ガチアクタ」は漫画を担当する裏那圭さん、グラフィティを担当する晏童秀吉さんの共同作品で、共に一度目にしたら忘れられないほどインパクトがある画力。キャラクターも、バトルシーンも、グラフィティもめちゃくちゃカッコいい。ストーリーも比較的欧米文化になじみやすい構成になっていると言われていますね。正直まずみんな絵で入るとは思うのですが、読んでみると心に残って離れないセリフやストーリーがある。それらを両立しているから既にこれだけ幅広く支持されているんだろうなと思いましたし、長期的にも期待できると感じました。 一方で、講談社としては、もともと自社IPの海外宣伝に課題を抱えていました。せっかくグローバルを狙える作品なので、これまでと違うことをしなくちゃいけないと考えていました。
──課題とは、どのようなものだったのでしょうか?
天野:IP全体というよりはアニメに関してです。本来ならば無限にある可能性に対する、私たちチームのリソース不足、経験不足に起因していると思うのですが、課題と感じていることは主に2つあります。1つは、 権利を許諾した後の展開は各地域の取引先にほぼ任せきりになってしまっていること。もともとアニメ製作委員会のビジネスモデルとして、日本のマーケットに主軸をおいた構成、プランニングになっていることも、もしかしたら一部関係あるかもしれません。 そしてもう1つは連携不足です。その連携というのは、日本側とライセンシー 、というのもありますし、海外ライセンシー同士の、という点においても不足していました。 もう少しシームレスに連携し、相乗効果を生みたかった。さらに言えば、当社は原作元であり、海外だけに絞っても、外国語版原作も、商品化も、ゲームも扱っています。本来なら、そういったあらゆる権利間の連携もできるのがわれわれの強みであるはずなのに、まだまだ満足のいく調整ができていませんでした。 そこで今回、海外のライセンシーとの宣伝窓口としての役割と、地域や権利で区切られない、グローバルでヒットさせるための海外宣伝企画を電通さんにお願いしました。
岩波:「ガチアクタ」のアニメには、アニメなどのコンテンツを扱う電通のエンターテインメントビジネス・センター(EBC)が出資していて、電通も製作委員会に入っているんです。そのEBCを通して、私のいる出版ビジネス・プロデュース局に「海外宣伝チームを組成してほしい」と声がかかりました。 そこで、これまでもさまざまなIPもののコミュニケーションを手掛け、海外での生活経験もある廣畑にクリエイティブ・ディレクターとして入ってもらい、チームを立ち上げました。
廣畑:今回は、まずは講談社さんへのヒアリングをさせていただいたあと、海外で特に人気のあるアニメのSNSやウェブサイト、映像、広告施策のリサーチを始めました。その後、「ガチアクタ」という作品の魅力を徹底的に研究して、コンセプトやコミュニケーション方法を製作委員会に提案しました。 ただ、普段のクライアントワークと少し異なるのは、先ほど岩波からあったように、電通も「ガチアクタ」の製作委員会に入っているということ。海外宣伝を電通で請け負うことが決まってからは、単純なクライアントと電通の関係というより、講談社さんを含む委員会の皆さまと一緒に必死になりながら取り組んだ感じです。
一筋縄ではいかない?作品として1つの方向に向くために電通 廣畑功志氏 ──電通が海外宣伝を担当することが決まり、コミュニケーションプランニングはどのように取り組まれたのですか?
廣畑:全世界を巻き込む前代未聞のスケール感だったため、手探りの中、進めていましたね。大事にしていたポイントは2つあります。1つは「海外も向いている作品、という顔つきを作ること」。これは天野さんから特に強くご相談をいただいた点で、どの国のファンに対しても「あなたたちに向けた作品ですよ」というコミュニケーションのあり方を意識していました。 そしてもう1つ大事なのが、「作品として1つの方向を向いていること」です。僕たちだけの力だけでは、全世界で施策を実施することはできません。海外の出版社、そして海外ライセンシーとのしっかりした連携によってこそ、細かいところまで熱量高く仕上げることができる。そのため、ローカル、つまり世界各地の担当者との連動をも設計する必要がありました。
岩波:アニメのコミュニケーションプランにおいて、「頭(第1話放送)のところでいかに盛り上げを作るか」がとても大切です。そのため、海外プロモーションを手掛けることになったときも、“垂直立ち上げ”にこだわりを持っていたんです。やはり、第1話をどれだけ多くの人に見てもらえるか、その時点で話題量を増やせるかが鍵になるので。 しかし、海外ライセンシーと協議する中で、日本の製作委員会・海外宣伝チームとのギャップも見えてきました。垂直立ち上げを大事にするわれわれと違って、海外ライセンシーの場合、アニメの放送が開始して、ある程度ファンの反応が良いかどうかを見てから、徐々にコミュニケーションを取ることが主流なんです。そのため話し合いは難航し、幾度となく打ち合わせを重ね、ギャップを埋めていく作業をしました。
天野:そこは本当にすごく話し合いました。大きな分岐点だったかもしれません。
──1つの方向を向くことが大事というお話がありましたが、「ガチアクタ」の海外プロモーションにおける「コンセプト」はどのように決められたのですか?
廣畑:「ガチアクタ」のアングラな世界観と大胆な絵作り、そして主人公が持ち合わせている“反骨心”という感情をうまく海外宣伝のコンセプトへと昇華したいと考えていました。そのときに、原作で重要な要素である「グラフィティ」というカルチャーに着目したんです。 グラフィティは、自分の思いを文字や絵に乗せて世界に焼き付ける。自分の生きた証しを示すような表現方法だと思っていて、グラフィティを使うことで「ガチアクタ」が世界に名乗り出るための狼煙(のろし)を上げることができると考えました。 そこで、世界をガチアクタ色に染め上げてやるんだという思いをまとった「Gachiakuta World Takeover(=世界をジャックする)」というコンセプトを打ち立て、グラフィティの表現を存分に生かした宣伝展開を思いついたのです。
天野:今回、廣畑さんに全体のコンセプトを明確にしてもらったことで、海外ライセンシーからも「製作委員会と補完関係を築けた」と言ってもらえました。今までは各地域で、おのおのの考える最適な施策で宣伝してきたのですが、どうしてもライセンシーや地域ごとに施策がぶつ切りになってしまうことは避けられませんでした。 でも、今回の目玉施策である「World Connecting Graffiti」では、世界中で同じ方向を向きながら、ライセンシー同士で横につながって実施することができました。普段とてもできないようなことをやれたので、心から感謝しています。
東京、ロサンゼルス、ミラノ、台北、香港と、世界各地のシンボリックなエリアを世界同時ジャックした「World Connecting Graffiti」。SNSでも大きな反響を呼んだ。 ──「World Connecting Graffiti」やグローバルSNSなどは、各国で大きな反響がありましたが、各施策を決められていった背景を教えてください。
廣畑:「Gachiakuta World Takeover」というコンセプトを体現する目玉施策が1つ欲しいと考えていたときに考えついたのが、巨大なグラフィティがつながる屋外広告です。世界5都市で同時に連動するプランを発案し、1つにつなげると「Watch Out World!(=見てろよ、世界!)」と世界中のファンに向けた、アニメ放送開始直前のメッセージが浮かび上がる仕掛けを施しました。 この屋外広告は、キャラクタービジュアルと晏童先生の手掛けたグラフィティを中心にわれわれでもデザインを行い、それを各国のペインターたちが手描きで仕上げるという、細やかな努力によって実現しています。現地の方々の多大な協力のもと、電通のグローバル・ビジネス・センター(GBC)などの力を総動員して実現することができました。
天野:私もとても気に入っていて、この「つながるグラフィティビジュアル」は、電通さんの提案を受けることにした決め手の1つでした。
廣畑:ありがとうございます。実は、僕としても推し案でした(笑)。また、グローバルSNSや、グローバルウェブサイトにも挑んでいます。製作委員会がちゃんと主導できる情報の発信拠点を作ることで、「世界中の人に向けている」という作品としての姿勢が表れるんじゃないかという議論をしたうえで、立ち上げを決意しました。 グローバルウェブサイトには、海外へ向けた「ガチアクタ」の全ての情報が集約されています。ここさえ見てくれれば、情報を見落とすことはないというオフィシャルな発信場所が欲しかったんです。さらに最新情報やアニメイベントのレポート動画を掲載することで、「うちの近所でこんなふうに盛り上がっているんだ!」と、世界中の「ガチアクタ」のムーブメントを知ることができる場所にもなります。
天野:講談社としては、当社の作品を世界中に広めたいと心から思っているので、北米だけでなく、南米、ヨーロッパ、アジア、そのほかのすべての地域も大切にしたいと考えています。そこで電通さんにお願いしていたのは、先ほどの廣畑さんのお話にもありましたが、どの地域のファンでも「自分たちに向けて宣伝してくれている」と思える企画にしてほしいということです。
岩波:なので、グローバルSNSは多言語対応も意識しています。大事な投稿は最大7カ国語に翻訳することで「私に話しかけている」と思ってもらえる工夫をしました。発信という意味では、海外ライセンシーもチャンネルを持っていて発信してくれているんですが、やはり日本国内から生の情報を世界に発信していきたいという思いがありました。
ワールドプレミアやAnime Expoで感じた「すごい熱量」電通 岩波寿起氏 ──また、日本発のアニメとしてはまれなワールドプレミア(世界各地での先行上映会)を実施されましたよね。どのような狙いがあったのでしょうか。
天野:アニメ放送開始のタイミングで、世界中で同時に熱量を大きくしたかったというのが一番の目的ですね。打ち合わせをしていて、「やったら話題になるのではないか?」と盛り上がって「何とか実現させたいね」と全員で話しました。
岩波:製作委員会の会議で一番議論が白熱したのを覚えています。リスクも覚悟でワールドプレミアをやるか、それとも安全策を取るのか。会議に参加した20~30人が、この1つのテーマで議論を重ねました。そのときに、製作委員会の全員がこの作品を盛り上げようと本気で向き合っていることを感じて、ある種の一体感を覚えましたね。
天野:やはり日本と海外とでは状況が異なるので、海外で先行上映をするというのは国内で行うのとはまた別のリスクがありますよね。当社も含め、アニメの製作委員会というものは従来基本的に日本市場のことを第一に考える傾向があるので、あえて海外でも先行上映をしてリスクを取る必要があるのか、という懸念の声もあったんです。 ですが、これからの時代、本気で作品をグローバル展開していくには、どうしてもリスクを取っていかないといけない。リスクを取ったからこそ、今この作品は成功しているんだと思います。この議論をしていた当時と比べると、製作委員会メンバーの海外に対する見方や姿勢も変わってきた気がしますね。
──ワールドプレミアの実施に加えて、アメリカで最大規模のアニメイベントである「Anime Expo」にもブース出展やパネルへの登壇をされていました。そこで実際に感じた海外ファンの特徴や日本のファンとの違いを教えてください。
ワールドプレミア、そして原作者によるライブペインティングイベントに多くのアニメファンが駆けつけた。 岩波:何しろファンの皆さんのマンガやアニメに対する熱量がものすごく高いなというのは、どのイベントに行っても感じるところでした。また、日本と大きく違うのはビハインドシーン(作品の裏側)を好む人がより多いこと。原作者の発言ないしは作品プロデューサーの発言に真剣に耳を傾け、興味深く聞いている姿が印象的でした。
廣畑:コスプレへの価値観にも特徴がありましたよね。日本の場合、精巧に作りこまれた衣装を身にまとうコスプレイヤーと、それを見て楽しむ人々という関係性が一般的です。一方で、海外ではもっと手軽なカルチャーとして受容されている。クオリティよりも、ただ自分の好きな世界観を身にまとうぐらいの感覚でコスプレをしているので、相対的に日本よりもコスプレ人気が高いと感じました。 それから、僕も会場で熱量の高さを感じました。パネルのトークセッションで、新情報や新映像を解禁すると、会場が本当にどよめくんです。情報解禁を知っている僕らでさえ、そこにびっくりするくらい。
岩波:あそこまで良い反応をしてもらえると、モチベーションになりますよね。LAのAnime Expoでの反響はとても良くて、登壇した先生たちも興奮していました。
廣畑:IPコンテンツのファンコミュニケーションで大事なことは、「熱」が共鳴し合う時間をどう作るかだと思うんです。なので、Anime Expoの会場ではブースを3カ所展開、トークセッションに関しても2つに参加。さらに、裏那先生と晏童先生の2人がライブペインティングをするイベントも用意しました。 会期中はとにかくどこに行っても「ガチアクタ」を見る、名前を聞くという状況を作り出し、盛り上がっているなと体感してもらう。結果、現地ファンはそれ以上の盛り上がりを見せてくれました。
廃材による巨大造形アート横で裏那先生と晏童先生が壁面にライブペインティングを実施。人だかりができるほど注目されるブースに。 可能性は無限大!日本IPを世界へ発信するための「発明」は続く──あらためて、海外ファンが喜ぶコミュニケーション設計というのは、どういうところにポイントがあるのでしょうか?
廣畑:一言ではなかなか難しいですが、作品の本質というか、作品のどこをファンが面白いと感じているのかを見極めることだと思います。そのうえで、地域ごとのファン特性を把握すること。 例えば今回だと、「ガチアクタ」のアングラ感のあるトンマナを大事にすることが基本にあり、さらに北米で注目を集めるためには、Anime Expoという大きなイベントに注力するとか。他にも、アジアであれば個々のキャラクターを推す文化が強かったりします。このような地域ごとのファン特性を見抜き、じゃあこの作品ならどういった施策を打ち出すと良いかという掛け算をして、宣伝戦略に落とし込んでいくことが、グローバルでのコミュニケーションでは大事だと思います。
──講談社さんは、たくさんの素晴らしいマンガを扱うIPホルダーとして、日本のIPコンテンツを世界に展開していく際には何が大事だと考えますか?
天野:もちろんIPの素晴らしさがあってこそだと考えています。グローバルで人気が出る作品というものは、そもそも作品自体に国境を超える普遍性がある。その後ビジネス側でわれわれができることは、耳を傾けること。そしてしっかり見ること、だと思います。私もまだまだ勉強段階で反省点も多いのですが、市場を見る。ファンの意見を聞く。そしてライセンシーとは同じゴールをみて協力していく。また、海外の需要に応えていくには、同様に製作委員会の皆さんや著者側の意見も聞いて、ライセンシーとの橋渡しをしていくことだと思います。
──最後に、今後の「日本IP×海外展開」について、展望をお聞かせください。
天野:コロナ禍を経て、世界中の多種多様なプラットフォームでアニメを見られるようになりました。これまでアニメに触れてこなかった人にも、ようやくカジュアルにアニメを見てもらえるようになってきた印象です。日本アニメの市場は少なくとも今後数年はさらに拡大することが予測されます。ただ、海外アニメマーケットではまだまだできていないこと、できるはずのことがあまりに多い。ものすごい可能性があるんです。もっと幅広く、ワクワクする企画もこれからできるようになると思います。
岩波:同感です!今回の作業を通じて、われわれが国内で培ってきたプロモーション展開に関するノウハウが、海外でも通用することが分かりました。例えば、“垂直立ち上げ”が有効だということもそうです。 一方で、まだ足りない部分もあり、同じコンセプトを伝えるにしても、ローカライズの重要性を強く感じます。つまり、もっと現地のインサイトを知ったり、ネットワークを築いていく必要があります。今回はクランチロールやメディアリンクといったライセンシーの協力があったからこそ実現できましたが、今後のIPコンテンツのグローバル化を進めていくためには、現地のインサイトをより深く掘って、それを蓄積していくことが鍵になると感じています。 あとは、例えばアニメとコンビニのコラボ展開みたいなことは日本では当たり前ですが、そうしたコミュニケーションもグローバルでできると思っています。アニメやマンガから派生して新しいビジネス展開を仕掛けていくのは電通が得意とするところなので、いろんな形でIPコンテンツを魅力的に「拡大」していきたいです。
廣畑:そうですね、電通という会社には、新たな方法論・表現を「発明」することが求められていると思っています。今回、1つ1つのエリアでファンのインサイトを見定めながら、屋外広告やSNS、ウェブサイトといった海外宣伝の手法の「発明」に挑みましたが、まだまだ未開拓の領域が残されています。それだけ“初”を見いだせる、とてもやりがいのある領域でもあります。 今後も、海外ファンの方々の声を生かしたプロモーション展開など、掘り切れていない領域を開拓し、ぜひ皆さんと一緒にたくさん「発明」していきたいですね。
©裏那圭・晏童秀吉・講談社/「ガチアクタ」製作委員会