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教育×クリエイティブで、日本のオリジナルな教育を面白くするために。

コピーライター、アートディレクター、クリエイティブディレクター、マーケターなどが集まって、電通社内に設立した「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」。設立10周年を記念して、メンバーそれぞれが教育に関わってきた中での発見や、感じた変化をリレーコラム形式でお届けします。

クリエイティブ×教育の「こんなのどうだろう」な10年間

研究所設立のきっかけは、仕事でご一緒した小学校の先生の「よく考える方法や、みんなで話し合ってまとめる具体的な方法。それを探していたら、広告業界にあった」という言葉でした。

発想力を持ち、グローバルで、多様な人と協働する。そして正解のない時代の中で、未来を切り開いていく。そんな力を持つ次世代を育成するために。クリエイティブ、発想、デザイン、プレゼン、グローバル教育などのプログラムを開発し、これまでに全国の小・中・高・大の学校100校以上で授業やワークショップを実施。ここ数年は企業や自治体を対象に、教育に関連したサービス開発や、大人向けの研修なども多く実施しています。

子どもも大人も「1つの決まった正解を求めない」「いろんな人の意見を取り入れて新しいモノを生み出す」、そんなことを大事にしながら、メンバーそれぞれの「こんなのどうだろう」な小さな教育のアプローチを続けてきました。

「言葉の絵画教室」「発想100本ノック」「誰でもデザイナーになれる授業」「ミラクルワードカード」「中身のいらないプレゼンの授業」などなど、変な名前のオリジナル教育プログラムは数十種類に増えています。

研究所が開発した教育プログラム。全国の学校・企業・自治体で実施している。

基準をもとに「褒める」。その子らしさを「認める」

門外漢の広告会社の従業員が教育に関わる。この研究所を始めた時、私個人として大事にすると決めたことがあります。それは、その子らしさを引き出すサポートをしよう、ということ。

そう考えた根っこには、自分が中学生だった頃、私が作ったモノを見た美術の先生が「今まで出なかった君らしさが出たね」と褒めてくれたことがあったからです。本当にうれしかった。大人になってもお守りにしている言葉でもあります。

なぜそんなにうれしかったのか?

疑問に思って、研究所の共同研究員でもある教育のプロ・大熊雅士先生(東京都小金井市教育委員会教育長)にこの話をしてみたところ「それは褒められたのではなく、認められたんです」と。「褒める」と「認める」は、どう違うのでしょうか?

大熊先生いわく、

■褒める=基準(尺度)をもとに、それを上回った時に評価する。

■認める=その人らしさをそのまま受け止める。存在受容。

という違いがあるのだそうです。この解説を聞いてハッとしました。中学生の私は、「上手」とか「良い」といった評価でなく、自分らしさをまるごと認めてもらえたことが新鮮でうれしかったのでした。

すべての子に、その子らしい発想がある。

これから私が教育に関わるときには、その子のオリジナルな考えや表現を引き出すお手伝いをしたい。その子の自分らしさを自分自身が発見できるようになる。そして周りにも受け入れられるような場をつくりたい。そう考えました。

子どもの好奇心をサポートして、自由研究のテーマをつくる

皆さんは、子どもの頃に自由研究をやりましたか?好きでしたか?私は大嫌いでした。「自由ってなんだよ」「丸投げだ」と怒りながら、興味がないテーマで適当にまとめる、名ばかり「自由」研究をやっていました。

そして今、後悔しています。自由研究って自分の興味を広げる大きなチャンスだったのではと。

書店に並ぶ自由研究関連教材を調べてみると、(大人がつくった)テーマが羅列してあるものが多く、学校の先生にヒアリングすると、こういった教材から書き写すだけの子が結構いるらしいのです。

それってもったいない!

興味や好奇心はあるけれど、いきなり自由に発想したり表現したりすることが苦手な子のために。子どもの興味や疑問から出発して、オリジナルで自由なテーマをつくるサポートをしたい。ということで、「世界でひとつだけの自由研究のつくりかた!」という教材冊子を開発しました。

教材ロゴ。共同開発メンバー:大山徹・吉森太助・大熊雅士

テーマづくりのプロセスは3つ。
①    細かい質問に沿って自分の「興味のタネ」を集める。
②    その興味のタネと、「まほうの言葉」を組み合わせてテーマを複数つくる。
③    いちばん自分が引かれるテーマを選ぶ。

興味のタネが「朝の納豆ごはん」の場合。その前後に数十種類の「まほうの言葉」カードを組み合わせていくと、例えば「わが家の朝の納豆ごはんランキング」といったテーマができる仕組みです。

この「まほうの言葉」がポイント。「世界の」「わが家の」「変な」といった前につける言葉と、「のヒミツ」「大図鑑」「ができるまで」といった後ろにつける言葉のバリエーションを何十通りも組み合わせる過程で探究のベクトルを探って、定めることができるのです。

数十種類の「前につける言葉」と「後ろにつける言葉」を興味のタネに組み合わせてテーマを試作していく

小学生が考えた「泣ける体の神経の位置攻略法」研究

小学校や、企業や自治体の小学生向けイベントで、この教材を使ったワークショップを開催してきた中で、ユニークなテーマが続々誕生しています。

ある小学生がつくったテーマは「泣ける体の神経の位置攻略法」。自分の体の至るところをつねって、「痛い度」ランキングを★でつけていく、というもの。この研究に必要なのは「勇気」だけなんだそうです(笑)。

このテーマを発表したときの男の子の熱量と、周りから起こった大爆笑、うれしそうなその子の顔が忘れられません。

他にも、オリジナリティあふれるテーマがたくさん生まれています。「誰も知らなかった般若心経の不思議」「毎日早く起きれる攻略法」「目をつぶった時に見える模様のナゾ」「日本のまっくら物語」などなど。

いままで数百人の子どもたちがテーマをつくってきましたが、ひとつも同じテーマになったことはなく、どれもその子らしさがあって本当に面白いです。

小学生が作成した「泣ける体の神経の位置攻略法」の研究計画書。全身のつねる場所を計画してマップ化。愛知県主催の起業体験プログラム「あいちスタートアップスクール」にて


「不自由」で「自由」をつくってみるのは、どうですか?

かつての私が苦手だったように。「自由に考えよう」と言われても固まってしまう子どもたちは多いと聞きます。この10年間でも、学校の先生方から「総合的な学習(探究)の時間」で、「子どもたちが自分らしい問いをつくるにはどうしたらいいか」「正解のない課題にどう取り組んだらいいか」などのご相談をいただくことが増えてきました。

「自由に発想しよう」「しっかり考えよう」といった漠然とした声かけだけで、いきなり自分らしい発想をするのはむずかしい。

そんなとき、「不自由」で「自由」をつくってみるのはどうでしょうか。

抑圧してその子らしさを奪うような不自由ではなく。「自分の好奇心の鉱脈はどこか?それをどう広げるか?」の解像度を高めて考えるための良い制約(補助線)をあえてつくってみる。

「世界でひとつだけの自由研究のつくりかた!」教材では、「楽しかったことは?」「驚いたことは?」「実は苦手なものは?」「人生で一度やりたいことは?」といった興味を洗い出す細かい質問を設置。さらに、スモールステップを重ねながら探究のベクトルを定めるために、何十種類の「まほうの言葉」を使うなどの制約を設けて、「ポジティブな不自由さ」で自分らしい自由な発想を促すことを試みました。

子どもも大人も。発想すること、自分らしさを出すことのハードルが下がるように。正解のない問いが少しでも楽しくなるように。いろいろな発想の補助線を考えて、これからも教育の「こんなのどうだろう」なカタチを投げかけていきたいです。

※「世界でひとつだけの自由研究のつくりかた!」は、ビジネスパーソン向けに新規事業のアイデアを考える大人版も展開しています。ご興味がある方は、研究所のお問い合わせフォームからご連絡ください。

アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所ウェブサイト
https://www.konnano-dodaro.jp/

関連する連載はこちら:アクティブラーニングこんなのどうだろうレポート

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著者

舘林 恵

舘林 恵

株式会社電通

第2クリエイティブプランニング局

コピーライター

沖縄県出身。アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所 所長。大学時代に「ピタゴラスイッチ」の企画制作に参加。コピーライターとして広告制作に携わりながら、研究所では発想に関する授業を開発&実施している。電通の社会貢献活動「広告小学校」教材開発担当。

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