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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.29

「売り場」って楽しい

2014/04/17

3月に新宿の京王百貨店で行われた「地元オススメうまいものまつり」では連日売り場に立ち、多くのお客様とお話しすることができました。広告だとどうしても間にメディアが介在してしまいますが、こうした売り場で直接経験するご指摘、賛辞、あるいはお顔のちょっとした表情のひとつひとつが次の一手を考える材料になります。日頃パソコンの前で頭でっかちになりがちな思考回路をたたき直してくれます。
今回はこのイベント参加店舗の中から、そんな貴重な経験を地元に持ち帰ったに違いない仲間たちをいくつかご紹介しましょう。

「和牛をチョップして」の身振りで接客する山田

 

鉄板焼神戸Fujiは神戸牛を手軽に楽しめる三ノ宮の人気レストランです。今回は税抜き1000円から楽しめる「神戸牛弁当」で参加していました。

神戸牛弁当

 

でも実は、ぼくがこのお店ですごいと思うのは「お肉のケーキ」です。残念ながら今回の催事には登場しませんでしたが、「お肉」と「ケーキ」というかつてない組み合わせは新しい可能性を照らし出すサーチライト。優れたコンセプト(アイデア)のにおいがプンプンします。その名前を聞いただけで子どもたちが歓声を上げ、食卓を華やかなパーティー気分にしてくれる商品のイメージが浮かびます。現在通販で買える「お肉のケーキ」も十分パワフルですが、もっともっとバージョンアップできるかもしれません。

これが「お肉のケーキ」。鉄板で焼いてつくるそうです。

 

お客様はこうした「このお店でしか買えない」特別な価値を求めているのだと思います。もちろん鉄板焼神戸Fujiが今回の催事でやったような神戸牛を手軽に楽しめる価格施策も十分魅力的ですが、やはり本当の勝負はそれに頼らずどれだけユニークな商品を提案できるか、にかかっていると思います。

とみたメロンハウス(北海道・富良野)の「完熟メロン果汁入りこだわりのメロンパン」には連日行列が絶えませんでした。

そもそも「メロンパン」は不思議な食べものです。『メロンパンの真実』(東嶋和子)によれば名前の由来は、①焼き上がったビスケット生地の表面のひび割れがマスクメロンの皮とよく似ていたから、というごく当然の説、②高級なマスクメロン人気にあやかって庶民のためにその形と格子模様を似せた菓子パンを考案した、という逆の説、③メロンパンをつくるときに使う『メレンゲ(meringue)』がなまって「メロン」となったという強引な説」があるそうですが、いずれにせよ素材としてメロンを使うわけではありません。それがどうも平成の世になってようやくメロンクリーム入りが登場した、ということのようです。
とみたメロンハウスのメロンパンもこの流れをくむ商品でしょう。にもかかわらず連日行列が絶えなかったのは、しっかりとした商品づくりもさることながら、改めて「北海道」「富良野」ブランドの強さを感じざるを得ません。今後そういった地域ブランドに加えてどのような「このお店でしか買えない」特別な価値を生んでいくか、注目していきたいと思います。

メロンパン

 

宮崎県や鹿児島県には、ゆでたサツマイモと餅をこね合わせてつくる「ねりくり」という郷土料理があるそうです。味のくらやの「からいも団子」はまさにそのねりくり。小豆入りとあんこなしと。素朴な味わいが魅力の商品です。

からいも団子

 

こういった地域文化にしっかり根差した商品は宮崎をよく知る方にとっては「これこれ、これが欲しかったの」という特別な価値があります。実際メンチカツを売っていてお客さまに「宮崎のお菓子を買えるのはどこ?」と尋ねられました。その一方、宮崎にゆかりがないお客さまにとっては、よくあるきな粉系の郷土菓子に埋没してしまいそうです。変に手を加えておかしなことになってはいけませんが、さてこの商品の目標をどの程度に置くかが難しい判断になります。

次回の「地元オススメうまいものまつり」は5月に名古屋名鉄百貨店だそうです。その時どんなメンバーが集まるのかはまだ決まっていないそうですが、今回新宿京王百貨店の「売り場」を経験した各店舗は、地元に帰ってたくさん悩み、たくさん考える材料を手にしたことでしょう。もしどこかで見かけることがあったら、ぜひ試してみてください。

どうぞ召し上がれ!