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「大人になって気づく

ドラえもんからのメッセージ」

伊藤善章 (藤子・F・不二雄プロ社長)

2014/07/21

今や日本だけでなくアジアで、世界で、世代を越え多くの人々に愛されている「ドラえもん」。今年の8月8日、ドラえもん映画初となる3DCG「STAND BY ME」(製作=同製作委員会、配給=東宝)が全国で封切られる。公開を前に、ドラえもんの生みの親である藤子・F・不二雄氏と一緒にドラえもんを育ててきた伊藤善章氏に、その魅力や藤子氏についてお話しを伺った。

 

原作とともに成長した世代にこそ響く映画に

「ドラえもん」で初めての3DCG映画、「STAND BY ME ドラえもん」が、今年8月8日に公開されます。監督は、「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の0」の山崎貴さんと、「friends もののけ島のナキ」で山崎さんと共同監督を務めた八木竜一さんが再びタッグを組んでくれました。

山崎さんには、「三丁目の夕日」以前に監督した「ジュブナイル」という作品があるのですが、そのエンドロールに「for Mr. Fujiko・F・Fujio」(藤子・F・不二雄先生にささぐ)と入れていました。先生をとても敬愛してくれていたのです。その山崎さんが「ノスタルジックで、大人にも見応えのある作品にしたい」と企画書を持ってきてくれたのが「STAND BY ME ドラえもん」でした。原作の中でも名作とされる7作品がベースになっているのですが、新たな要素も加えられ、かつてドラえもんに元気づけられた大人世代にぜひ見てほしい感動的な作品に仕上がっています。きっと泣けると思いますよ。

本音を言うと、初めての3DCGですから、制作に入る前は不安もないではありませんでした。藤子・F・不二雄先生は何と言うだろう。私は気になることがあると、18年前に亡くなった先生の墓参りによく行くのですが、たいてい先生は何もしゃべらない(笑)。でも、私には確信がありました。先生はきっと「大丈夫だよ」と言ってくれていると。

夢や勇気、今も読者の中に生夢や勇気、今も読者の中に生きている純粋な世界

3年前―。川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムのオープンが間近に迫ったときも、緊張と不安の中にいました。やはり大人の鑑賞に堪えられる施設にしようとしていたのですが、世間には「ドラえもんは子ども向けの作品」というイメージを持っている人もいる。開館日が近づくほど不安は募るわけです。

でもそれは杞憂(きゆう)でした。子ども連れのお客さんだけでなく、大人だけで訪れるお客さんもたくさんいた。3年たった今も入館者の数は衰えていません。調べてみると入館者の7割以上が大人の方でした。大人世代にも支持される傾向は、昨年から、生誕80周年を記念して各地で開催している「藤子・F・不二雄展」でも同じです。やはり7割が大人の入場者なのです。

伊藤 善章(藤子・F・不二雄プロ社長)

幾つになっても、夢や勇気を与えてくれた「あの頃」を思い出したい、自分の心のどこかに残る純粋さを大事にしたい。そんな思いが、大人のドラえもんファンの心にあるのではないでしょうか。大人になっても引き寄せられる、純粋な世界へのノスタルジー。そこにこそ、ドラえもんが長く愛され続ける理由があるのだと思います。

そのドラえもんの作品世界は、やはり藤子・F・不二雄先生の人柄を抜きに語ることはできません。漫画家としての情熱と厳しさを持つ一方で、家庭では絵に描いたような「良きパパ」でした。3人のお嬢さんがいましたが、どんなに忙しくても、朝7時には起きて一緒に朝食を取る。そのとき、娘たちのために、食パンにバターやジャム、チョコレートなどを塗ってあげるのです。しかも、3人それぞれのリクエストに応じて、市松模様やストライプにきちっと塗り分ける。これは奥さまから伺ったエピソードですが、生真面目で優しい先生の人柄を物語るものです。

先生の人柄や考え方は、当然、ドラえもんの作品世界と重なるものです。直木賞作家の辻村深月さんはドラえもんの大ファンなのですが、「藤子・F・不二雄先生の作品は手紙だ」とおっしゃっています。温かい思いと共に、世の中の不条理なことも笑って受け入れなさいと伝えてくれる手紙なんだけど、子どもの頃はそのことに気づかない。大人になって読み返すと、あぁそういうことだったのかと分かる。そんな手紙だというのです。なるほどと思いました。

先生の温かな心は次代のクリエーター、そして観客に

クリエーティブの世界には、ドラえもんに影響を受けたという方がたくさんいて、面白い企画やアイデアを持ってきてくれます。前述の山崎監督もその一人ですが、「STAND BY ME ドラえもん」のプロモーションを担ってくれた若い人たちも、ドラえもんの世界観をとても深く理解しながらキャンペーンを構成してくださっています。

そんなクリエーターの方々にも支えられて、ドラえもんはこれからもいろんな「手紙」を出し続けると思います。昨年の2020東京オリンピック・パラリンピックの招致では、招致スペシャルアンバサダーとしてドラえもんも協力させていただきましたが、6年後の2020年のときには、また何かの形でお手伝いできるといいなと思っています。

みなさん、2020年は何歳でしょう?一緒にドラえもんからの手紙を受け取りたいですね。

 

「STAND BY ME ドラえもん」公式サイト
http://doraemon-3d.com

川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム 
http://fujiko-museum.com

ドラえもんチャンネル
http://dora-world.com/index.html