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ワカモンのすべてNo.31

中村隼人×竹山香奈:前編
「日本の伝統文化と生きる。ワカモン的『歌舞伎』考察」

2014/12/10

「ワカモンのすべて」ロゴ

歌舞伎界のホープとして注目を集める中村隼人さんに、ワカモンメンバーの竹山香奈さんがインタビュー。今の若者にとって、日本の伝統文化は難解なもの? 遠い存在? でも、古くから現代まで、脈々と受け継がれてきた理由や魅力がそこにはあるはずです。現在20歳の中村さんは、どんなふうに感じているのでしょうか。

歌舞伎役者の中村隼人さんと、ワカモンメンバーの竹山香奈さん

伝統を受け継ぐ覚悟

竹山:隼人さんは歌舞伎役者の家に生まれ育ち、幼い頃から歌舞伎自体は身近なものだったと思うのですが、歌舞伎役者を一生の仕事としてやっていこうと決めたのは、いつごろだったのですか?

中村:中学2年生の時です。その年頃って、「高校はどこに行こう?」「自分は何をしたいんだろう?」と、将来の進路を真剣に考えだす時期ですよね。僕も当時、学校の友達とそんな話をしていたんですが、「じゃあ、自分はどうなんだろう?」と考えた時、「歌舞伎をやり続けたい」と思った。舞台には子どものころから立っていましたが、自分の意志でやっていた感覚は、実はそれまであまりなかったんです。

竹山:ちなみに初舞台は何歳の時でしたか?

中村:8歳です。小学2年生でした。歌舞伎役者の家の子どもはみんなそうですけれど、中学生ぐらいまでは、自分の意志にかかわらず舞台に出ているようなところがあります。「来月、舞台があるよ」って言われて、それに向けて稽古してというのが僕らの日常です。「好きだからやっている」というタイプもいれば、「親に言われたから」というタイプもいて。僕はどちらかといえば後者のタイプでしたが、舞台に出ることに抵抗はなかった。むしろ好きだったというか。

中村氏

竹山:その「好き」という気持ちはどこから来ていたのでしょう?人前に立つことや、演じることが好きだったということですか?

中村:うーん、具体的に何が好きだったんでしょうね、自分でもよく分からないです。ただ、子どもながらにお客さんの反応は舞台の上から感じていて、良い反応だったら素直にうれしかったりしました。そういうことがきっかけだったのかもしれませんね。

竹山:今、隼人さんは20歳(※インタビュー時)ですが、周りにいる同世代の人や同学年の人は、進学先や就職先など、将来に対していろんな選択肢を持っていますよね。隼人さんは10代という早い段階で歌舞伎役者一本に選択肢を絞ったということでしたが、今振り返ってみて、他にやってみたかったことはありますか?

中村:「もしも自分が歌舞伎役者じゃなかったら?」とは、もはや考えられないんですが…。そうですね、僕、電通に勤めたいです。

竹山:ええっ、どうしてですか(笑)!?

中村:歌舞伎役者は、舞台を見てくださる方の人生を変えられるかもしれないし、心を癒やしてあげられるかもしれない。それがこの仕事の面白さの一つだと思うんですね。それに、自分は歌舞伎という芸事を受け継いできた家に生まれたのだから、これ以外のことはできないとも感じていて。ただ、人の心に何かを残すことは他の仕事でもできますよね。電通って、そういうことができるんですよね(笑)?

竹山:んー、そうですね、できるかは分からないけれど、何か人の心に残したい、人の心に少しでも変化を起こしたい、という気持ちは通じるものがあるかもしれませんね(笑)。たとえ歌舞伎ではなかったとして、どんな仕事に就いたとしても、人の心に残る“何かを発信したい”という気持ちは変わらないんですね。

竹山氏

「歌舞伎界」という環境と競争意識

竹山:歌舞伎の世界は、生涯現役だったり、小学生で初舞台を踏んだりと、かなり年代の幅が広いですよね。隼人さんと同世代の歌舞伎役者さんって、何人ぐらいいるのですか?

中村:5、6人です。テレビや舞台などの他の業界から見たら少なく感じるかもしれませんが、歌舞伎界ではこれでも多い方です。というのも、一人に役がつくと、その人がずっと同じ役を演じ続けることになります。だから、他の人がその役に入る余地がなくなってしまうんです。

竹山:“役”というのは、一人についたらずっとその人が演じるものなのですか?

中村:例えば立役だったら、二枚目をやるのか、三枚目をやるのか、それとも荒事のような強い役をやるのか。女形だったら、きれいな役なのか、三枚目みたいなタイプをやるのか、踊りをやるのか。そんなふうに役にはいろんなジャンルがあります。人間国宝クラスの先輩からすれば、その役に秀でている役者を選ぶでしょうし、粗削りなタイプよりはちゃんと芸を知っている人を使おうと思うのは普通の感覚だと思うんです。今は勉強して、お互いに切磋琢磨して、どういう役についていこうか考えている最中です。

竹山:なるほど、“役=特色・個性”ということなんですね。最近の若者の調査をしていると、「競争より協調」「みんなで仲良く力を合わせて何かを成し遂げる」ことを重要視する傾向が見てとれます。歌舞伎界の同世代同士には、そういったムードはありますか?

中村:どうでしょうね、多少はあるんでしょうけれど、あまりないかも…(笑)。同世代は、ライバルかな。どうにかして歌舞伎界に痕跡を残したいし、たとえ残せなかったとしても、今の世の中に歌舞伎というものを伝えていきたいと思っています。

竹山:歌舞伎を伝えていくことは、同時に日本の伝統文化を伝えていくことにもなりますよね。隼人さんのような若者世代の方が、日本の伝統文化をどのように考えているのかが気になります。

※対談後編は12/17(水)に更新予定です。


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【ワカモンプロフィール】
電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中。