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年齢よりもライフステージが大事!?多様性時代の女性のメディア行動分析No.2

購買ファネルも視聴コンテンツも、女性ライフステージによってここまで違う!

2025/06/10

女性のライフステージに着目したメディア行動分析について紹介する本連載。
分析にあたり、女性のライフステージを電通の大規模調査データ(電通d-campX/詳細はこちら)を確認し、仕事のありなし、未既婚、子どもの状況などに着目し、継続的にサンプルを一定数確保することができた11のセグメントを抽出しました。

セグメント
※電通d-campXデータより調査対象を抽出しており、すべての女性が含まれるわけではありません。実際には既婚学生や無職未婚女性、未婚子どもありなど、多様なセグメントが存在します。また一部重複するセグメントもあります。

今回は、女性の購買ファネルにおけるメディアの役割や、各セグメントの視聴コンテンツを紹介します。

<目次>
「M字カーブ」は女性一人一人に内包されている!?生活時間から見る女性の労働参加状況

忙しく働くママは購買ファネルも短縮型。ライフステージによって異なる購買ファネル

そのコンテンツはターゲットのライフステージに届いているか?

「M字カーブ」は女性一人一人に内包されている!?生活時間から見る女性の労働参加状況

第1回では、働く女性が増え、共働き世帯が高い割合を占めるようになってきているとお伝えしましたが、正直、肌感と合わないと感じていました。世の中の女性がそれほどまでに企業や社会へ参加している実感が湧かなかったのです。

労働参加率のようなマクロデータで見ると、一見、「M字カーブ」は解消しつつあるのですが、それは一人一人の中にM字カーブが内包され、見えにくくなっただけなのではないか。そうした課題意識から、ミクロベースで労働参加の状況を把握するため、男女世代ごとの生活時間のデータを見てみました。

すると平日1日あたりの仕事時間は男性が女性を大きく上回り、子育て期に当たる人も多い30~40代で乖離(かいり)が大きくなっていることが分かりました。家事(炊事・掃除・洗濯、買い物、子どもの世話、家庭雑事の合計)、中でも子どもの世話をする時間を見ると 、同じくこの世代を中心に女性の時間が男性を大きく上回り、女性一人一人が家庭の中で家事労働の大きな割合を担いながら仕事をすることで、一見M字カーブが解消しているように見えているのだということが分かります。また家事も労働ととらえるならば、仕事と家事を合計した労働時間は、30代を中心に女性が男性を上回っており、限られた可処分時間をやりくりしながら、メディア接触や購買行動をおこなっていると言えます。

そこで今回は、仕事や家事・育児で忙しい末子未就学児のセグメントやフルタイム既婚女性と専業主婦/パート主婦の差異に注目しながら、データを見ていきたいと思います。

NHKデータ
出典:NHK放送文化研究所「2020年 国民生活時間調査」(https://www.nhk.or.jp/bunken/yoron-jikan/)を加工してグラフ作成

忙しく働くママは購買ファネルも短縮型。ライフステージによって異なる購買ファネル

まずは、購買ファネルにおける各メディアの役割を見てみましょう。認知~購入意向までの段階ごとに、「影響した」と回答したメディアについて、電通d-campXデータの2017年と2024年を比較しました。マス4媒体と折り込みチラシはファネルが縮小傾向にあると言え、逆にネット広告は動画も動画以外もともにスコアが大きく伸長していました。スマホがけん引するかたちです。

購買ファネル比較

この中からテレビCMとネット広告(動画広告)を取り出し、子育て期にあたる4セグメントを比較してみました。下記グラフでは傾向を見やすくするために、女性の全体平均との差分を一覧化しています。プラスの差分が大きいとその傾向が強く、小さいとその傾向が弱いということになりますが、各セグメントで傾向が分かれる結果となりました。

購買ファネル比較

特にフルタイム既婚女性(末子未就学)は、仕事に加え育児にも時間を取られ、ミドルファネルを経ずに自分ごと化から即、購買につながる短縮型の購買ファネルとなっているのも、うなずける結果と言えるでしょう。

フルタイム既婚女性(末子未就学)→短縮型ファネル
ネット広告(動画広告)に注目すると、詳細認知~理解といったミドルファネルのスコアは高くなく、自分ごと化、購入意向などで広告効果が高くなっている。仕事に子育てに忙しいこのセグメントはネット広告(動画広告)においてミドルファネルを介在せずに購入に至る可能性がうかがわれ「短縮型ファネル」と言える。

専業主婦/パート主婦(末子未就学)→ミドル拡張型ファネル
ネット広告(動画広告)に注目すると、詳細認知~サーチに至るミドルファネルのスコアが大きく平均を上回っており、ミドルファネルがまだまだ機能している。特に自分ごと化が15.4ptと大きい。

専業主婦/パート主婦(末子就学以上)→テレビを起点としたブリッジ型ファネル
他のセグメントと比較し、テレビCMのスコアが高いのが特徴。特にサーチや購入意向は女性全体の平均を10ptほど上回っている。テレビCMがサーチといったネットでの検索行動や、店舗での購買行動につながっていることから「ブリッジ型ファネル」と言える。

そのコンテンツはターゲットのライフステージに届いているか?

最後に、テレビとネットの視聴コンテンツについて見ていきたいと思います。コレスポンデンス分析(※)の手法で各セグメントをマッピングすると、「情報価値」か「エンタメ価値」かや、コンテンツの性質が「ストック型」か「フロー型」か、などの軸が抽出され、セグメントごとに異なるコンテンツ嗜好(しこう)性が見られました。 

※コレスポンデンス分析=カテゴリーデータの関係を視覚化する解析手法。カテゴリーデータ間の「距離」を測定し、その「関係性」を視覚化してデータのパターンや構造を視覚的に理解することができる。関連性が強いものは近くに、弱いものは遠くにプロット(布置)される。
 

好きなテレビジャンルについては、末子就学以上のセグメントで映画やドラマといった「エンタメコンテンツ」、比較的高齢層で住まい・くらし情報やワイドショーといった「情報バラエティ」への嗜好が見られます。

好きなテレビ番組

実はこの図に入りきらない左象限の外れに、学生や末子未就学のセグメントがプロットされました。学生は「アニメ・ゲーム」、末子未就学の2つのセグメントは「知識・教養」のコンテンツ嗜好に特徴がありそうです。

追加データ

下図のネット閲覧情報については政府・行政機関の情報や献立・レシピといった「生活・実用情報」や個人的趣味である「音楽・ゲームなど」の嗜好性が見られます。やはり末子未就学のセグメントは図に入りきらず、左下象限にプロットされ、「出産・教育・育児」といった情報を積極的に収集しており、他のセグメントとは一線を画していました。このように、学生に加え末子が未就学のセグメントは、コンテンツ嗜好のポジショニングが特徴的であるため、テレビCMやネット広告のプランニングの際には、出稿するコンテンツをよく吟味する必要がありそうです。

ネット閲覧情報
追加データ

ここまで見てきたポイントをまとめます。

ポイント1:働く女性は増えているが、家事や育児にかける時間はいまだ女性が圧倒的に多く、限られた時間をやりくりしながらメディア接触行動が行われている

ポイント2:購買ファネルは、セグメントによって大きく異なる。時間が貴重な子育て期真っ盛りのセグメントは、ファネルが短縮型になっている可能性があり、それを加味したプランニングが必要

ポイント3:学生に加え、末子未就学のセグメントはコンテンツ視聴において、特異なポジションをとるので、他の近いセグメントと同様の施策では広告がリーチしづらい可能性もあることを留意する

女性の生き方、価値観も多様化の時代です。女性ターゲットを年代で区分するのでなく、ライフステージで捉えることで、ターゲットやメディアプランニングの解像度を上げることができるでしょう。働く女性が増加する中、特に子育て期の女性はメディアの可処分時間が限られる傾向にあり、それが購買ファネルやコンテンツ嗜好にも影響を及ぼしていると考えられます。ネットを中心に情報やコンテンツの量が爆発的に増加していることも、状況に拍車をかけているかもしれません。そうした彼女たちのライフステージに寄り添った広告メッセージやコミュニケーションのあり方を、引き続き考えていきたいと思っています。

【調査概要】
データソース:電通d-campX 2017~2024年実施調査
調査地域:関東圏
サンプル数
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