loading...

電通報ビジネスにもっとアイデアを。

年齢よりもライフステージが大事!?多様性時代の女性のメディア行動分析No.1

80%の女性が働く時代。女性のメディア行動はライフステージ別で分析する!

2025/03/07

3月8日は国際女性デーです。

本記事では、広告やメディアの発するメッセージが多様なセグメントの女性に適切に届けられ、それが心地良いものになってほしいとの思いから、女性のライフステージに着目したメディア行動分析について紹介します。

<目次>
働く女性が増加し、M字カーブ解消へ

同年代でも大きな違い!女性のライフステージの多様化を捉える

ライフステージごとのメディア接触バブルチャート

ライフステージごとに異なる情報意識や広告の受けとめ方

働く女性が増加し、M字カーブ解消へ

2023年に発表された総務省の就業構造基本調査(5年おきに実施)では、2022年に女性有業率が25〜39歳で初めて80%を超えました。これによって従来言われてきたような女性の年齢階層別で見た際の30代のくぼみ、いわゆるM字カーブはなだらかに解消しつつあり、女性のライフステージは多様化の方向にあります。

こうした状況は女性の消費行動やメディア行動に大きな影響を与えるでしょう。女性だけではありません。共働き世帯が年々増加することで、都市部を中心に男性の家事参画率が高まっています。家事担当者としての購買行動、例えば食品や日用品、家事家電などの購入の意思決定に、男性の関与が高まっていくことが今後予想されます。マーケティングやメディアプランニングにおいても、こうした変化を捉えていく必要があると言えるでしょう。

図左:「労働力調査」(総務省)図右:「令和5年版厚生労働白書」(厚生労働省)
図左:「労働力調査」(総務省)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200531&tstat=000000110001&cycle=0&tclass1=000001040276&tclass2=000001011681&tclass3val=0)を加工して作成
図右:「令和5年版厚生労働白書」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/22/backdata/02-01-01-03.html)を加工して作成

同年代でも大きな違い!女性のライフステージの多様化を捉える

女性のライフステージの多様化を電通の大規模調査データ(電通d-campX/詳細はこちら)で確認していきましょう。仕事のありなし、未既婚、子どもなどに着目し、継続的にサンプルを一定数確保することのできた11のセグメントを抽出しました。

セグメント
※電通d-campXデータより調査対象を抽出しており、すべての女性が含まれるわけではありません。実際には既婚学生や無職未婚女性、未婚子どもありなど、多様なセグメントが存在します。また一部重複するセグメントもあります。

継続的にデータをとることができた2017年~2024年で推移を見ると、専業主婦/パート主婦のセグメントは減少傾向にある一方で、フルタイム女性は全てのセグメントで増加傾向にあり、フルタイム女性セグメントの多様化が進んでいることが分かります。

2017年~2024年

加えてセグメント内の年代も多様化しています。例としてフルタイム未婚女性では、従来6割超を占めていた20代の割合が縮小し、30代や50代で大きく増加しています。専業主婦/パート主婦(末子未就学)についても保育園や幼稚園で40代のママが増えている様子がうかがえ、同一セグメント内で年代が分散してきていることが分かります。

セグメント内の年齢も多様化

このような変化により女性のメディア行動は、従来の性年代別だけでは捉えきれなくなっている可能性があります。そこでライフステージごとに分析を行うことで、多様化や変化の兆しを捉えていきたいと思います。

ライフステージごとのメディア接触バブルチャート

まずはライフステージごとのメディア接触バブルチャートを確認していきましょう。横軸がセグメント内のリーチ、縦軸が1週間当たりの接触頻度、バブルの大きさが接触時間を示しています。リーチ7割、頻度5回で4つの象限に分けると、右上には多くの人が頻度高く接触する「マス型メディア」と言えるメディアがプロットされます。同様にその下にはリーチは高いものの接触頻度はそこまで高くない「インフラ型メディア」がきます。

雑誌や新聞など、各メディアが運営しているSNSアカウントの接触はインターネット(スマートフォン)に分類されている可能性もあるため、あくまで全体の傾向として見ていただければと思います。

一例として、まずフルタイム既婚女性(子どもなし)とフルタイム既婚女性(末子未就学)を比較してみましょう。

フルタイム既婚女性(子どもなし)

フルタイム既婚女性(末子未就学)

フルタイム既婚女性(子どもなし)ではインターネット(スマートフォン)とテレビリアルタイムがマス型メディア、インターネット(パソコン)がインフラ型メディアとなりました。一方、フルタイム既婚女性(末子未就学)ではマス型メディアはインターネット(スマートフォン)のみ。インフラ型メディアのテレビリアルタイムや、インターネット(パソコン)、インターネット(タブレット)も一回り接触時間が縮小していることが分かります。

フルタイム既婚女性(末子未就学)のライフステージは、子育てや家事の時間が増えメディア接触が低下する傾向にあり、専業主婦/パート主婦(末子未就学)でも同様で、全セグメントの中で最も全メディア接触時間の合計が短くなっていました。ただこの傾向は一方向ではないようです。子どもが育つことで再びメディア接触時間は増加に転じ、フルタイム既婚女性(末子就学以上)では特にテレビリアルタイムが大きく増加し、全メディア接触時間の合計も増加していきます。

フルタイム既婚女性(末子未就学)

また、末子未就学の子育て期真っただ中の女性のセグメントでも、働いている・いないを問わず、テレビリアルタイムも全メディア接触時間の合計も縮小する中、インターネット(スマートフォン)はむしろ前後のセグメントと比較しても大幅に長い傾向にあり、学生やフルタイム未婚女性に次ぐ長さになります。つまり子育て期の忙しい女性にとって、限られた時間や空間に寄り添うメディアとしてインターネット(スマートフォン)があるのかもしれません。

ライフステージごとに異なる情報意識や広告の受けとめ方

最後にメディア行動に関連する意識・価値観を見てみます。まず情報意識行動について、コレスポンデンス分析(※)の手法で各セグメントをマッピングすると、「情報管理志向」か「情報活用志向」か、また情報に対し「能動・積極」か「受動・保守」かで整理されました。

※コレスポンデンス分析=カテゴリーデータの関係を視覚化する解析手法。カテゴリーデータ間の「距離」を測定し、その「関係性」を視覚化してデータのパターンや構造を視覚的に理解することができる。関連性が強いものは近くに、弱いものは遠くにプロット(布置)される。
 

情報意識行動

本図では、各セグメントが次のようにプロットされました。一例を紹介します。

  • 若年層が多く含まれるフルタイム未婚女性や学生などは、コアな情報をいち早く入手したり、共有に積極的な「情報プロモーター」
  • 末子未就学のセグメントは、良い情報を得るためにサイトに登録したり口コミを活用する「情報シェアラー」
  • 末子が就学以上になると情報をコミュニケーションのネタとして活用し楽しむ「情報コミュニケーター」
  • シニアと無職/パート女性(介護あり)は、情報は必要最低限でよいなどの「情報ミニマイザー」

にプロットされました。おおむねライフステージの近いセグメントでは情報意識・行動は似ているようです。

広告表現志向

一方で広告の受けとめ方、ここでは広告表現志向について見てみると、働いている・いないで、マップ上で大きく傾向が分かれました。例えば同じ子どものいないセグメントであっても

  • フルタイム既婚女性(子どもなし)はインフルエンサーやレビュー重視の「口コミ重視派」
  • 専業主婦/パート主婦(子どもなし)は客観的に広告を判断したい「広告懐疑派」

に分かれています。また、

  • フルタイム既婚女性(末子未就学)は「口コミ重視派」
  • 専業主婦/パート主婦(末子未就学)は広告をコンテンツとして楽しむ「広告エンジョイ派」

といった具合です。

買い物意識も見てみましょう。ここではスーパーなどでの食品購入行動について整理しました。

食品購入時行動
  • フルタイム未婚女性、フルタイム既婚女性(子どもなし)、専業主婦/パート主婦(子どもなし)、フルタイム既婚女性(末子未就学)、専業主婦/パート主婦(末子未就学)といった、比較的若い人が多く含まれるセグメントでは、セールス品やPB(プライベートブランド)商品など「お得重視の買い物」
  • フルタイム女性(介護あり)やフルタイム既婚女性(末子就学以上)は使い慣れた商品やブランドなど「自分主体の買い物」
  • 専業主婦/パート主婦(末子就学以上)や無職/パート女性(介護あり)、シニアはチラシや試食を利用して無駄なものを買わない「計画的買い物」

などに分かれました。また学生は値段はあまり気にせず買い物をしているようです。

セグメントによって意識・価値観・行動なども傾向に差が見られることが分かりました。女性ライフステージ別のメディア行動に加え、こうした傾向なども参考にすることで、より効果的な広告コミュニケーションが可能になるかもしれません。

電通メディアイノベーションラボでは、今後もこのような女性の変化の兆しを捉えながら、プランニングやマーケティングの感覚を研ぎ澄ませ、女性のライフステージ別分析を進めていきたいと考えています。

次回は、時系列変化や視聴コンテンツなど、よりブレイクダウンしたメディア行動にフォーカスしていきたいと思います。

【調査概要】
データソース:電通d-campX 2017~2024年実施調査
調査地域:関東圏
サンプル数
X