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通販王国発! マーケティング新発見!No.5

テレビはネットに屈するのか?

2014/12/22

通販王国、九州へようこそ!
ここでは、すべての広告活動は数値化されます。
メディアにとっては、優劣がすぐに分かる厳しい環境です。

■ネット広告とテレビ広告のよくある話

「ここのとこ、テレビの獲得効率が厳しいので、来月から予算をぜんぶネットにシフトします」。そんなたぐいのお話が、最近あなたのまわりで出てきたことはないですか。そうでなくても、直接の購買効果の測定が難しいテレビ広告は、効果が正確に計測できるネット広告にいずれ凌駕されるのでは、というのがなんとなく世の中の雰囲気。
ですが、そもそもネット広告とテレビ(をはじめとするマス)広告って、このような対決軸で捉えるべきものなのでしょうか?同じ土俵でシェアを食い合う存在として論じられるべきものなのでしょうか?

■ネットとテレビとニーズの関係

通販をしていると分かるのですが、ネットとテレビ(マス広告)って、得意分野が全然違います。よく言われる、データ化に向いているか否かとか、テクノロジーによる最適化が可能かなど、ハード的な得意分野の違いももちろんあるのですが、もっと重要で根本的な違いがあるのです。それはざっくり言うと、顕在化しているニーズを低コストで獲得することが得意なのがネット広告、潜在的なニーズを掘り起こして新たなお客さまをつくり出すことが得意なのがテレビ広告、という違い。
過去のコラムでご説明した通り、ニーズとはたいていの場合は潜在意識の下に眠っているもの。言い換えれば、まさに氷山の一角のような顕在化したニーズの下に、膨大な潜在的ニーズが潜んでいる、ということです。これを先述のネットとテレビの得意分野に当てはめると、下のような構図となります。

iceberg

つまりそれぞれが、異なるターゲットを補完し合う関係にあるのです。そしてテレビ(マス広告)は広範囲から、かつ潜在意識から掘り起こしていかなければならない分、ネットと比べると直接の獲得コストでは不利になりがち。でも、この「水面下ゾーン」を攻略しない限り顕在顧客はいずれ枯渇してしまう…。だから、コストだけで判断するのではなく、両者の役割とターゲットの違いを踏まえて、お互いが補完し合ってお客さまを拡大していく、そんなプランニングを目指すことが大切なのです。

■「ネットとテレビの蜜月関係」をジャマする2つの障壁

でもなんで、冒頭に述べた事例のようにテレビとネットって、連携よりも対立する、予算を奪い合うような関係に向かいやすいのでしょう?そこには、大きく2つの理由があると思います。
1つ目は、やっている人が違う、という単純な問題です。事業主、広告会社、制作会社…広告に関わる多くの組織で、たいていネットとテレビは分断された状態で運営されています。だから連携が起きにくいのです。とはいえこの問題は、意識と組織の工夫があれば解決可能。むしろもっと大きな壁が、2つ目なんです。
2つ目の理由、それは、このコラムでずっとご説明してきた人の購買心理「AIDBA」と大きな関係があります。

AIDBA

この購買心理モデルって、ひとりのお客さまの心をいかに変容させていくかのプロセス。だから途中で気を散らせることなく、とにかく一気に走り抜けなければ達成不可能。なので、メディアをまたいで実現することが非常に困難なモデルなのです。
その証拠にテレビもネットも、「売る」を目的とした場合、往々にしてほぼ同じたたずまいを見せます。よどみなく畳み掛けるテレビの通販番組と、一気に読んでしまえる縦スクロール型の通販サイト。多少の構造は違えど、メディアをまたがず気を散らせずに走り抜ける、両者とも結果的にそんな似たような形になってしまっているのが分かるかと思います。

■「スモールアドバタイジング」という発想

潜在的なニーズを幅広く掘り起こせるテレビと、顕在化したニーズを低コストで獲得できるネット。それぞれの強みを補完し合えれば、最も効率の良い媒体フォーメーションが可能となります。
メディアをまたいでコップにドバドバ注ぎ続ける…、それを模索する取り組みは、実はすでに多くのところで行われています。その代表例が、「明日のチラシをご覧ください」というプロモーションであり、バイラルムービーの投入によるネット上でのニーズ掘り起こしを目的としたプロモーション。
テレビの持つリーチ力、映像の持つ意識喚起力、ネットの持つ拡散力、最適化力、新聞の一目での可読性など、メディアはそれぞれ長所を持っています。ひとりのお客さまの心理変容という目的を第一に、メディアごとに役割を設定し、最適な表現を企画する。言い換えれば、一発のホームランが出にくくなった現代のメディア環境だからこそ、とにかく一個を買ってもらうことに集中して打線をつなぐ。まさにスモールベースボールならぬ、「スモールアドバタイジング」的プランニングが、メディアをまたいでコップから水をあふれさせるために今後有効な手段なのではないでしょうか。そんな新モデルをつくれるように、これからも日々精進したいと思います。

 

いかがでしたでしょうか。今回をもって、私の執筆の回は終わりとなります。ここまでお読みくださって、本当にありがとうございます。ここ九州で私たちが多くのトライ&エラーから導き出した方法論が、少しでも皆さまのお役に立てばうれしいです。なお、次回以降は私と同じ部署の先輩である、電通九州の庄野による連載が始まります。引き続きそちらもお読みいただければ幸いです。
ちなみに連載中に、「なぜイラストがカッパなのか?」というご質問をしばしば頂きました。理由はかんたん。私が「カッパ」に似ているとよく言われるからです。そう種明かしすると皆、「確かに!」と納得します。ですが、カッパって誰も実物を見たことないんです。にもかかわらず人の心の中に共通のカッパ像が存在し、多くの人が私を見て納得してしまうなんて、やっぱり人間の心って本当に不思議で奥深いものですね。

Kappa