妖怪ウォッチの成功は2015年も続く!
2015/01/29
レベルファイブ社長
日野晃博氏を取材して分かった
妖怪ウォッチの成功は2015年も続く!
ゲームソフトを中心にアニメ・コミック・関連グッズが、空前の大ヒットで2014年を象徴する存在となった「妖怪ウォッチ」。その制作現場で指揮を執るレベルファイブの日野晃博氏を取材し、昨年の大ヒットの秘訣、そして2015年に向けた新たな挑戦を聞いた。
Q1
あらためて2014年の「妖怪ウォッチ」のヒット状況を教えてください。
A1
ゲーム業界では、20年ぶりの大ヒットといわれています。「妖怪ウォッチ2 元祖/本家/真打」だけで500万本を突破していて、しかも関連書籍、アニメ、映画も軒並みヒットしています。キャラクター商品の「妖怪メダル」は、昨年末までに1億5000万枚も出荷されています。また、コラボした企業の商品が次々とヒットしたという、うれしい話を聞いています。
Q2
どうしてこのようなヒットが生まれたのでしょうか。
A2
ゲームを核にして、コミック、アニメ、映画などクロスメディアありきでアプローチしていったことが大きいです。それを生み出すための経験知や実績、人間関係、信頼関係があり、そうした中で新しいチャレンジや、スピード感のある意思決定ができたところにヒットの理由があると思います。なので一夜にして、たまたま運良く当たったねということではないんです。
Q3
この勢いは、2015年も続くのでしょうか。
A3
基本的には2015年も妖怪ウォッチイヤーにしたいですね(笑)。海外展開については、パートナー希望の申し込みを多数頂き、具体的にプロジェクトが進んでいます。妖怪ウォッチは当初から、「ドラえもん」のような普遍的な作品を意識しました。例えばアニメの第1話を作るときから大人にも向けたネタを入れていて、全年齢で一緒に見られるような仕掛けにしています。15年は、さらに幅広い方々に、この世界を楽しんでいただきたいですね。
昨年大みそかのNHK 紅白歌合戦で、大々的に企画が組まれたことが象徴するように、2014年は「妖怪ウォッチ」イヤーだった。
妖怪ウォッチは、レベルファイブが制作するゲームソフトが原作である。13年7月にゲームソフト第1弾をリリース。同タイトルだけで100万本を突破する 大ヒットとなった。14年1月からはアニメのテレビ放送がスタートし、キャラクター商品「妖怪ウォッチ」と「妖怪メダル」が発売されると、玩具店などでは長蛇の列がつくられ、 ニュースでも話題になる。7月にはゲームソフトの第2弾「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」が発売され、昨年末発売の「同 真打」との累計販売本数は500万本を突破。コミックの単行本は累計発行部数470万部を上回り、ファンブックなど関連書籍も累計600万部を超えてい る。12月に公開された映画は、劇場前売券が東宝の配給映画史上最高の114万433枚、初日・2日目の興行収入は同社最高記録を更新した。
さらに、企業とのコラボレーションからは話題の商品が生まれたり、当該企業の業績向上に大きく貢献している事例が少なくない。こうしたパワーを持つのが妖怪ウォッチのポテンシャルなのである。
この快進撃を生み出したレベルファイブの日野晃博社長は、ヒットの理由を、クロスメディア戦略の成功という。「妖怪ウォッチが出したクロスメディアのパフォーマンスは最高の結果をもたらしているし、今後の道しるべをつくれたんじゃないかと思っています。これまでは、ゲームは売れるけれどアニメはそこそことか、その逆とか、一長一短が多いですが、妖怪ウォッチは違う。ゲーム、玩具、コミック、CDなど展開した全てのメディアでよく物が売れるのも珍しいと思います」
このような大ヒットに至るには、08年からヒットした「イナズマイレブン」での成功や経験、そしてパートナーとのチームワークがある。「私たちは過去の作品などでの経験知から、ダメなことをやらない目を持てているし、アクションを判断する目があるので、そこが大きな違いです」
そして今年は、この勢いを海外へも展開していく。
「今後も昨年の成功を継続していけるのか、今年が正念場。成功し続けるためには、新しい挑戦をしていくことが必要です。その一つとして海外でのゲームやアニメ、グッズといった日本同様のクロスメディア展開を行います。作品が持つファンタジー性は、海外でも文化を超えて通用するのではないかと考えています」
この海外展開はアジア、北米、南米、欧州などを予定していて、具体的な内容は徐々に明らかになっていくと思われる。日野社長は、妖怪ウォッチを「ドラえもん」や「サザエさん」のように、世代を超えた存在にしていきたいと各種インタビューなどで発言している。そのためには新しいことへの挑戦が重要と捉えている。
「妖怪ウォッチは、ドラえもんのように20年、30年と愛され続けるものにしていきたい。ただ、現在のように生活者にさまざまな選択肢がある中で、飽きられず、コンテンツの王者となり続けるというのは、とても難しい。だから、『それは過去にやったことがないんで』などとフォーマットにとらわれるのではなく、フォーマットをつくっていく先進的なアクションをする必要があります。そこをパートナーとしっかり手を組んでやっていきたいと思っています」
今年も話題が尽きそうにない妖怪ウォッチ。その陣頭指揮を執る日野社長の動きに目が離せない。
妖怪ウォッチとは?
ごくごくふつうの小学校5年生「天野ケータ」が、ひょんなことがきっかけで妖怪執事のウィスパーと出会い、不思議な腕時計「妖怪ウォッチ」を渡される。この妖怪ウォッチとは、町中に潜んでいる妖怪を見つけたり、妖怪メダル(友達になった「ともだち妖怪」から入手できる)を使ってともだち妖怪を呼び出すことができる。そのともだち妖怪とケータは、困ったことを起こす妖怪を説得したり、時に戦ったりして問題を解決し、最終的には相手も新たなともだち妖怪となっていく。この基本的な枠組みがゲーム、コミック、アニメなどクロスメディアで展開され、さまざまなキャラクターやアイテムが商品化、企業とのコラボレーションも同時多発的に進行する。これが日野社長の語るクロスメディア戦略で、妖怪ウォッチの爆発的なヒットの要因といわれている。