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データで見る2015年元日の日本列島。~モバイル空間統計で2015年1月1日の人の動きを可視化~

2015/02/05

今回は、今年の年末年始の人の動きを位置情報データ分析に基づき分析しています。
毎年、「新幹線乗車率○%!」や「東名高速道路、渋滞○キロ!」などとニュースが流れていますが、実際のところ、帰省する人ってどのくらいいて、どこに帰省しているか、ちょっと気になりませんか。以前、お盆時の帰省者向けのコミュニケーションを考える仕事で「う〜ん」とかなり悩んだ経験もあり、個人的にも気になっていました。
そこで今回は、元日の帰省実態や人の動きについて、モバイル空間統計(※1)を活用し、調べてみたいと思います。

元日の日本列島では、約1300万人の大移動が起きている。

今回、モバイル空間統計をもとに、居住都道府県と、2015年1月1日にいた都道府県が異なっている人の割合を算出したところ、日本全体の約10%に上りました。人口にすると、なんと約1300万人になります。つまり、全員が帰省目的ではないにしても、一般的な日本人の習慣を踏まえると、1000万人規模の人が帰省しているのではないかと考えられます。ここまで多くの日本人が移動するのは、お正月くらいではないでしょうか。

では、具体的にどこに移動しているのでしょうか。日本の3大都市圏の中心である、東京都、大阪府、愛知県の移動状況を見てみましょう。

元日の人口動態(東京からの移動状況)
元日からの人口動態(大阪からの移動状況)
元日の人口動態(愛知からの移動状況)

図は、東京在住者、大阪在住者、愛知県在住者の移動ランキングトップ10になります。東京からは、近隣の千葉、神奈川、埼玉へ移動している人が多いです。次いで、中部地方の静岡、信越地方の長野と新潟になります。長野と新潟は、東京から新幹線の便がいいので、心理的にも近いのかもしれません。

一方、大阪を見てみると、近畿地方が上位に固まっています。大阪は、近畿地方出身者で固まっている場所だといえそうです。愛知に関しては、岐阜、三重、静岡という近隣県に移動する人が多いのは予想できますが、次に多いのは、東京、大阪となります。愛知は、新幹線のちょうど中間地点であることもあり、東京、大阪ともに心理的に距離が近いのでしょう。

次は、2015年1月1日0時の居場所データから、各都道府県の人口増減を見てみましょう。

元日に人が増える県は、長野、新潟、静岡。

元日の人口増加(率)ランキング

上の図の左の表は、普段の人口と元日の人口を比較して、元日に人口が増えた都道府県をランキング化したもの、右の表はその増加数を都道府県人口に対する割合にしてランキングにした表です(※2)。

左を見ると、長野、新潟、静岡は、流入人口が多く帰省者が多い可能性が高いということが分かります。長野は、スキー場や別荘地があるので、場合によっては旅行客の数も多いかもしれません。右の表のように、人口増加を各都道府県へのインパクトに直すと、和歌山、秋田、島根、佐賀が新しくランクインされてきます。長野県は、県民の約11%も増加しているという驚くべき数字です。

長野県内77市町村における元日の増加人口/普段の人口

そこで長野県に注目し、長野県の77市町村のどこに流入が多いのかを見たのが上のグラフです。そもそも人口が多い長野市、松本市、上田市は帰省人口も多いので、当然上位にきますが、一方、白馬や軽井沢は、スキー場や観光名所として確立されている地域なので、観光目的の人が多いことも想定されます。

長野県内77市区町村における元日の増加人口/普段の人口※長野、上田、松本を除き拡大

長野市、上田市、松本市を除き、グラフを拡大すると上の図にようになります。茅野市、佐久市、飯田市も流入人口が多いことがわかります。より細かく見ていくことで、長野県のどの市町村に流入人口が多いかをランキングにもできます。

ここで「元日の人口増加率」という数字を、ちょっと違う捉え方で見てみます。

元日移動者の多くは帰省目的だと思われますが、帰省者が多いということは、普段は地元にいないということであり、「帰省者が多い都道府県」は、「人口流出が進んでしまった都道府県」という捉え方もできます。総務省や各県の人口統計発表を見たところ、今回の「元日の人口増加率ランキング」のトップ10に挙がっている県の多くは、人口流出を課題として掲げていました。「元日に滞在した場所を帰省先とみなす」という前提条件付きですが、モバイル空間統計のような位置情報データを活用することで、人口流出元と流出先の関係を市町村単位・性別年代別で可視化できます。 

さて、話を元日の東京に移します。

年越しの瞬間、ジャニーズカウントダウンに最も人が集まる。

東京23区人口分布/総人口(広域)
東京23区人口分布/総人口(狭域)

上のマップをご覧ください。1月1日0時台の人口を広域で俯瞰したマップと、そのマップの中で特に人が多いエリアに絞り狭域で見たマップです。東京ドームに最も人が集中していることが分かります。年越しの瞬間の東京ドームといえば、ジャニーズカウントダウンコンサートをやっていた時間帯ですね。ジャニーズの集客力の強さがうかがえます。渋谷や新宿など、様々なカウントダウンイベントをやっていた街や、初詣客が多い浅草も集客力が高いですね。

では、1月1日の午後(14時時点)にしてみるとどうでしょうか。
若者(15〜29歳)とシニア層(60歳以上)に分けてマップ化してみました。

買い物にいく若者と、神社にいくシニア。

東京23区人口分布/若者(15~29歳)の人口(広域)
東京23区人口分布/若者(15~29歳)の人口(狭域)
東京23区人口分布/シニア(60歳以上)の人口(広域)
東京23区人口分布/シニア(60歳以上)の人口(狭域)

広域のマップを見ると、シニアのマップの方が赤やオレンジ色の部分が多く、東京のシニア人口の多さが分かります。狭域で、どこに人が集まっているかを詳しくみてみると、若者とシニア層では元日に出かける場所が全く異なることが見えてきます。若者は、電気街がある秋葉原や、百貨店が多い池袋、新宿、渋谷などに出かけている人が多く、シニア層は、寺社がある浅草や大島、そして観光名所であるスカイツリーに出かけている人が多いですね。年代によって、元日に行きたい場所がここまで異なるということが分かりました。

では最後に、日本の初詣の動態に関して、都内の寺社の中でも特に集客力が高い明治神宮と浅草寺を見てみましょう。

都心&若者集客型の明治神宮と、他県&中年集客型の浅草寺。

来訪者分布 明治神宮
来訪者分布 浅草寺

上の表をご覧ください。こちらは、それぞれの寺社がどこから集客しているかをランキングで表しています(※3)。赤字は東京以外の県なのです。浅草寺の方が他県から来ている人が多く、千葉県や埼玉県が上位にランクインされています。明治神宮に比べると、浅草寺の方が東京の外からの集客割合が多いことが分かります。

次に、各寺社に来訪した人の性別・年代を見てみましょう。

来訪者属性 明治神宮
来訪者属性 浅草寺

明治神宮のボリュームゾーンは20代、一方で浅草寺のボリュームゾーンは40代です。浅草寺に関しては、40代以上の世代も多く訪れていますが、明治神宮は、ピラミッド型になっており、上の世代は少ないですね。寺社によっても、呼び込めている人の層が全然違うことが分かりました。

今回の分析は、以上になります。いかがでしたでしょうか。東京を中心に元日ならでは人の動きが、データであぶり出されたのではないでしょうか。

今後も、位置情報データで見えることというテーマで、様々な情報を発信していきたいと思います。

※1モバイル空間統計とは、NTT ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを使用して、24時間・365日、性別、年代別、居住地別に推計される人口の統計情報です。

※2 普段の人口は、11月の朝4時台の1ヶ月平均の人口から算出。
※3下記エリアを調査対象エリアとし、1月1日の0〜18時台の各時間帯の人口の総和を母数とする。

調査エリア 明治神宮
調査エリア 浅草寺