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MITメディアラボの学生と考えた「2030年の東京」:TOKYO MIRAI IDEATHONで見えた未来

2015/03/16

    いまから15年後、東京はどんな姿をしているだろうか。2020年の東京オリンピック開催とも相まって、行政のみならず様々な産業が「都市の未来」を開発しようと弾みがつく今日。都市に広がる無限の可能性を追求するべく、電通、デジタルガレージ、ISIDイノラボの3社は、マサチューセッツ工科大学 (MIT)メディアラボの学生を招いたアイデアソンを開催した。

    TEXT BY ARINA TSUKADA
    PHOTOGRAPHS BY TAKESHI SHINTO

    ある者は「未来の都市を描くには、ストーリーテリングの力が不可欠」と言い、またある者は「東京には意外と歴史的な建造物が多くて驚いた」と言う。

    「2030年の東京を発明する」。2月23日、24日に開催された「TOKYO MIRAI IDEATHON」のテーマに対して、「出張形式」で参加した5人のMITメディアラボの学生たちの言葉からは、「第三者の目」ともいえる貴重な視点を発 見できたのが印象的だった。

    東京の未来を考えるということは、新たな産業やサーヴィス、インフラ、文化を考えることで日本という国を見直し、人々の暮らしや社会にまつわるあらゆる要素を考察することと同義だ。

    例えばセンシング技術が向上することで、現在のコミュニケーションはテキストや音声から発展し、触覚や感情そのものの伝達が取って代わるかもしれない。道路や公園など公共空間の設計にアーティストやエンジニアが新たな知見をもたらすことで、まったく新しい価値観が備わるかもしれない。

    可能性は無限にある一方で、イノヴェイション不足に悩む国内企業は数多い。この先、「未来」を鮮やかに予見し、実現可能なものへと進化させるためには、横断的なつながりをもち、多様なバックグラウンドをもつ人々の視点やスキルが鍵となるだろう──。

    こうした背景があればこそ、先端テクノロジーの知見と海外視点のフレッシュな思考を取り入れるようと、冒頭の通りMITメディアラボの学生たちが東京へと招かれたわけだ。

    出場したのは7チーム。電通CDCのクリエイティブディレクター佐々木康晴や電通ブルーの代表取締役社長・吉羽一高、なかにはヒューマンコンピュータ・インタラクションの研究者、暦本純一をファシリテーターに迎えるなど、社内外から選りすぐりの精鋭チームが編成された。はたしてその2日間では、 MITメディアラボの学生たちとともに実に闊達なアイデアが交換されたようだ。

    虎ノ門ヒルズを会場にグループワークからスタートした1日目。7チーム中56組にMITメディアラボの学生がそれぞれ配属され、約1日半のグループワークを実施した。チームは事前に提示された10個のテーマ、「未来のホスピタリティ」や「未来の街並み」「未来のコミュ ニケーション」「未来の遊び」などからトピックを選択し、最終日のプレゼンテーションに備えて議論が進められた。
    2日目会場となった電通本社の会議室。

    2日目のプレゼンテーションには、デジタルガレージ執行役員の石丸文彦、森ビル取締役の小笠原正彦、NHKのエグゼグティブ・プロデューサーであり「スーパープレゼンテーション」の制作でも知られる田中瑞人、電通CDCセンター長の古川裕也、そして幣誌編集長の若林恵が審査員として参加した。

    審査中はアイデアの本質を突く痛快なコメントが審査員たちから次々と寄せられ、発表者とやり合う様子も見物だったが、結果としてインタラクション研究者の暦本純一とISIDイノラボの森田浩史がファシリテーターを務めたチームによる「Air Hills」のアイデアが最優秀賞に輝いた。

    「未来の街並み」と「未来の遊び」をテーマに選んだこのチームは、遊び場を失いつつある現在の都市事情を背景に、都市を拡張するプロジェクトを発案。それはまるで空中庭園のごとく、既存のビルとビルの間に可変性をもつレイヤー構造のネット(Air Hills)を張り巡らせるという斬新なアイデアを発表した。

    暦本・森田チームによるグループワーク風景。

    都市空間をダイナミックな遊び場に変容させるこのアイデアは、高架貨物線の廃線跡を緑溢れる公園へと一新したニューヨークのハイラインが考察の素地にあったという。MITメディアラボからの「助っ人」として同チームに参加した遠藤謙は、次のように語っている。

    「最優秀賞チームに選出されて光栄でした。ぼくはメディアラボ時代の経験でハッカソン慣れしていることもあって、はじめにデザイン、テクノロジー考察、プレゼン制作と役割分担を決めたのが功を奏したのかもしれません。ポイントはちょっと先の未来を予感させつつ、模型なども実際につくって現実感を見せることでしょうか。今回はアイデアソンがベースでしたが、メディアラボにはすぐにでもものを生み出せる環境が用意されている。アイデアにとどまらず、みんながものをつくることができるスキルをもてば、未来はどんどん変わってくると思います」

    今後も継続的なパートナーシップを継続していくという電通、デジタルガレージ、ISIDイノラボとMITメディアラボ。多様なアイデアとテクノロジーが交錯するとき、私たちの暮らす都市の風景はあっという間にその姿を変えてしまうのかもしれない。

    「Air Hills」のアイデア模型。「実現性」が一つの評価ポイントだった審査において、彼らはチーム内で構造計算を行い、強靭なカーボンナノチューブ素材を用いれば実現可能であることを提示した。

    さらに詳しい内容はWIREDをご覧ください。