その2 新陳代謝して生産向上を
――生産性が低い要因は?
地方経済圏もある種のミニ護送船団型で、会社をつぶさないことを優先して安定した仕組みを築いてきた。労働力過剰時代は社会的な安定を生んだその仕組みも今は、イノベーションや競争を阻害し、労働生産性向上の足を引っ張る要因にすぎません。 現実に人手不足なわけですから、新陳代謝して生産性を上げないと、社会システムが崩壊してしまう。
バブル崩壊以降、人手余りの固定観念が染みついて、生産性の向上が人員余剰につながるという錯覚をいまだに払拭できない人たちがいますが、今は全く違う。生産性の向上は労使ともに間違いなくwin-winになるのです。
――もてなしの精神でサービスするから日本は生産性が低いと指摘する人がいます。
半分正しくて、半分間違っています。労働生産性は、労働時間分の付加価値です。おもてなしに費やした時間の付加価値をちゃんとお金に転嫁しないと、当然のことながら労働生産性は下がる。サービス産業のコストは時間です。
お客さまは、払ったお金に対して、どれだけの価値があったかを常に比較して見ているわけです。知恵やサービスは、料金と投入した時間の業務効率を意識して収支管理をするものです。おもてなしをした分、相応のお金を取るべきなのです。
――生産性向上を図るために新規参入をうながそうとすると、規制の問題も出てきます。
サービス産業は労働集約型なので、参入規制を緩和して競争が激化すると、従業員に低賃金・長時間労働を強いる経営者も出てくる。そのとき、安全、衛生などで問題が起きると、行き過ぎた規制緩和はけしからんという議論になりがちです。
実際、過去10年は規制強化の揺り戻しが起きています。参入規制緩和時に、労働時間規制、最低賃金、安全・衛生監督などを厳しくするスマートレギュレーション(賢い規制)も同時に強化する必要があります。
その3 “地方で暮らす幸せ”を考える
――地方企業の人材確保での課題は?
東京には確かに仕事はありますが、求人の多くは、専門的な勉強やスキルが必要なジョブ型の職種です。これは地方も同じことで、東京も地方も変わらないのです。しかし、親は知名度の高い会社で働いてほしいと思い、幻想と誤解によって、必要以上に若者が東京へ集まる。
でも現実は、東京の生活コストは高いし、通勤時間は長い。結婚しても子どもを預ける場所がない。それに対して、職住近接の地方の中核都市なら、夫婦共働きで子どもを育てるのも難しいことではありません。いったいどっちが幸せかということです。
大学の進学費用も、今度の地方創生戦略では、地方に就職する大学生の学費支援制度を設けようとしています。教育費の経済的負担は、政策で十分対応できることなのです。 生活の安定という意味では、雇用の安定と共に、賃金相場を上げていくことも必要です。事業の集約化を図ることで、地域全体の生産性を上げ、年収を2割、3割上げる努力をすべきです。