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電通報ビジネスにもっとアイデアを。

雑誌編集長とともにうみだす新しいソリューション
~ABC協会 東京フォーラム2015 講演レポート

2015/03/25

2月5日、ABC東京フォーラム2015(主催:日本ABC協会)が開催され、電通MC(メディアコンテンツ)プランニング局の前田淳子氏が「独自のアイデア。確かな実行力。~編集長と寄り添ってつくるあたらしいソリューションのかたち~」と題した講演を行った。

前田氏が所属する電通MCプランニング局は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、OOH、デジタルなどの各メディアに精通したプロが、担当顧客ごとにチームを組んでソリューションをカスタマイズし提供している。今回は各雑誌編集長とそれぞれの案件担当者がタッグを組んで成功させた商品開発やイベントプロデュースにスポットを当て、新しいソリューションのかたちを紹介した。

講演の内容をダイジェストでお届けする。


■雑誌編集長のチカラ

「読者のインサイトを知り尽くし、感性や嗜好のツボを押さえながら、日々読者の共感を作り出している雑誌編集長は、いわば時代をけん引する『マーケター』であり『クリエーター』であり『プロデューサー』だ。ターゲットの今の気持ちを誰よりも知り尽くすインサイト力を持ち、誌面として世に送り出すコンテンツ・クリエーション力も卓越している」 そう語る前田氏は多くの編集長たちをパートナーとし、クライアントの要望に合わせた広告やイベントを展開、成功させてきた。

■トヨタ自動車「Passo」×『Hanako』

紹介した1つ目の事例は、トヨタ自動車「Passo」×女性向け情報誌『Hanako』。コンパクトカーPassoのリニューアルをインパクトを持って世の中に伝えることが課題となった。リニューアルの特長は、燃費を向上したエンジン。広告コミュニケーションには、エンジンをクルマの心臓部と見立て、「ハートを磨け」のメッセージのもとに、アニメ「ドラえもん」のキャラクター「しずかちゃん」の登用が決まっていた。結婚相手に優等生の「出木杉くん」ではなく、落ちこぼれの「のび太」を選ぶしずかちゃん。「自分に大切なものとそうでないものを見分け選択する」女性と読み解き、しずかちゃんの生き方を通してPassoリニューアルをコミュニケーションする。パートナーには、『Hanako』の情報で女性の行動を後押ししムーブメントを起こしてきた戸高良彦編集長を迎えた。

Hanaco表紙、裏表紙
写真①
「しずかちゃん的生き方」特集の『Hanako』表紙と裏表紙
Hanaco表紙、裏表紙
テレビCM
写真②
テレビCMにも『Hanako』がさりげなく登場
テレビCM

『Hanako』では「しずかちゃん的生き方」をテーマに「しずかちゃん」を大胆に表紙に起用した「カラダ磨き」と「ハート磨き」が軸の「オンナ磨き」特集を組み、その文脈でPassoを紹介(写真①)。CMにHanakoが登場するなど(写真②)、その他の広告とも連動露出した。

結果、女性からの好感度がアップし、Passoの販売店を訪れたいという女性が増え、キャンペーンの目的を達成した。

■フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン「Polo」×『SPUR』元編集長

2つ目の事例は、フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン「Polo」×ファッション誌『SPUR』の編集長(当時)。新しいPoloのローンチに当たりライフスタイル誌の編集長を多く集める発表会イベントをプロデュースすることがお題になった。そこで選ばれたのがモードファッション誌の編集部歴が長く、ライフコンシャス層の気持ちを知り尽くす内田秀美元編集長。毎日のようにイベントへの招待がある編集長たちに確実に足を運んでもらう施策を尽くした。

DM
写真③
招待状は埋もれないレッドに
会場も世界観に合わせて装飾
写真④
会場も世界観に合わせて装飾

招待状の制作(写真③)、会場の選択・設営(写真④)、食事からフォルクスワーゲンの社長衣装プロデュースまで内田氏が監修し、ライフスタイル誌の編集長ほか、高い出席率を獲得。ブランドのファンを増やす結果ともなった。

■旭化成ホームズ「へーベルハウス」×『Casa BRUTUS』

3つ目は、旭化成ホームズ「へーベルハウス」×建築誌『Casa BRUTUS』。
へーベルハウスが開発した富裕層向けの邸宅モデル「フレックスレジデンス」のコミュニケーションプランが課題となり、富裕層が信頼している存在がタッグを組んだ。
メッセージづくりはアート、カルチャー、アーキテクチャーの分野で世界的に有名な『Casa BRUTUS』の松原亨編集長が担当。同誌特別編集の別冊付録(写真⑤左)を制作し、アウディショールームに設置・配布した。また日本経済新聞では地域を限定して『Casa』と『日経新聞』の2つのブランドロゴが付いた折り込み広告(写真⑤右)を実施した。

『Casa BRUTUS』別冊付録(左)と日経新聞の折り込み広告
写真⑤ 『Casa BRUTUS』別冊付録(左)と日経新聞の折り込み広告

これらのコミュニケーションが富裕層にリーチし、モデルルームへの来場、高額な同商品の購入に結び付いた。

■トヨタ自動車「ESTIMA」×『VERY』

4つ目はトヨタ自動車「ESTIMA」×女性誌『VERY』 。
「ママたちが本当に欲しくなる車をつくる」をテーマに、群を抜いた主婦への洞察力、提案力を持つ今尾朝子編集長率いる『VERY』編集部とトヨタ自動車が手を組んだ。

『VERY』内で「理想のクルマ、つくります」宣言
写真⑥ 『VERY』内で「理想のクルマ、つくります」宣言
カタログでは主婦向けのさまざまな工夫を紹介
写真⑦ カタログでは主婦向けのさまざまな工夫を紹介

商品にはクール、エレガント、シンプルを求める『VERY』読者のインサイトを徹底して反映。
子どもの食べこぼし対策であえてシートを合皮にするなどの工夫も凝らし、3年をかけて共同開発した。
結果、予測を上回る売り上げと、主婦たちのトヨタブランドへの関心度アップを獲得した。

■3つのCを基本に雑誌編集長と新しいソリューションを

時代に合わせてどんなにクライアントの課題が複雑になっても、シンプルに考えると前田氏は言う。「ブランドが伝えたいモノ・コトと、ターゲットとの間に切っても切れない絆をつくることが課題解決の基本であり全て」だと説いた。

ブランドとターゲット、その真ん中に雑誌編集長を据えたのがこれらの事例である。前田氏がプランニングする際にいつも頭に置いているのが「Context(文脈)」「Contents(内容)」「Contact point(接点)」の3つのC。伝えたいメッセージを、最も伝わりやすい内容と影響力のある語り部を通して、ターゲットがそこにいるだろうという場所を確実に捉え伝えていく。雑誌編集長は、ターゲットの感性と嗜好のツボを押さえ共感を呼ぶソリューションづくりの、最良のパートナーなのだ。

「媒体をNEWだとか、OLDだとか、トレンドだとかダウントレンドだとかで語るのではなくその課題に対して最も『効く』のは何かという視点を持つべき。雑誌が長らく培ってきた資産である『読者との絆』があるからこその企画を一緒につくっていきたい。誌面を超えた新しいソリューションのかたちを、今後も提案していきたい」と結んだ。