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女性の活躍が進めば、社会全体のシステムが大きく変わる

  • 武川 恵子
  • 古平 陽子

2015/04/23

女性の活躍が進めば、社会全体のシステムが大きく変わる

内閣府男女共同参画局長として女性の活躍を推進する武川恵子氏に、電通総研ヒューマン・スタディーズ・グループの古平陽子氏が話を聞きました。


社会ムードだけでなく実効性のある計画を

古平:女性の活躍推進が注目されていますが、女性が活躍することの社会・経済的なメリットをどのように捉えていますか。

武川:急速に進む少子高齢化を考えれば、まず労働力の量と質の確保ですね。女性の労働力率は、出産・育児期に当たる年代にいったん低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆるM字カーブを描く傾向にありますが、300万人以上の女性が環境さえ整えば働きたいと思っています。職場で活躍できる優秀な能力がありながら働けていなかったり、働いていても登用されずに能力が発揮できない人がたくさんいる、というのはもったいない話です。また、子どもを産まない理由として、経済的な負担が挙げられていますので、稼ぎ手が二人に増え、保育などの支援環境が整えば、かえって出生率も上がるのではないかと期待されています。。

古平:他に重要なメリットはありますか。

武川:特筆すべきは、女性の力でビジネスモデルの変化が生まれたり、女性視点での商品開発や新たなサービス創造が期待できること。女性の活躍が進んでいる企業ほど業績が良いという調査データもあります。さらに、地域密着型のビジネスで起業する女性が多くなっていることも注目すべき点です。中には、介護福祉分野で新しいビジネスモデルをつくり、規制の壁を越えて市や県、そして国も動かして、公的な支援に結び付けた例もあります。

古平:政府は今、社会のあらゆる分野で、指導的立場の女性の割合を2020年までに30%にするという目標を掲げています。それを実現するために欠かせないことは何でしょうか。

武川氏

武川:将来、管理職やリーダーになり得る女性の育成と継続して就労できる環境整備が欠かせません。女性の登用を促す社会的ムードが広がりつつありますが、ただ自然に任せているだけでは「30%」の実現はおぼつかないでしょう。やはり、各企業・団体が具体的な数値目標を掲げ、実効性のある計画を立て推進していかなければなりません。国も現在、法の制定に向けて動いています。日本は諸外国に後れを取っているのが現実で、思い切って舵(かじ)を切っていく必要があるでしょう。

起点は、ワークライフバランス実現のために何ができるか

古平:働く側の意識の問題もあると思います。電通総研が20~50代の女性を対象に行った「女性×働く」調査*では、有職者(役員・管理職除く)の93%は「管理職にならなくてよい/なりたくない」と回答しました。

武川:「管理職になると大変になりそうだから昇進を望まない」という声をよく聞きます。でも、地位が上がればそれに応じた決定権を持てるわけですから、自分の裁量で仕事の進め方を采配できるようになります。上司や部下も助けてくれるでしょうし、思うほど大変ではないのでは。昇進することで責任が伴うのは確かですが、仕事のやり方は変えられるのではないでしょうか。

古平:管理職が遅くまで働いている会社も現実にはあって、そんな姿を見て、「子育てと両立は難しい」と思っている女性も多いようです。

武川:そういう意識を払拭(ふっしょく)してもらうためには、男性を含め組織全体での取り組みが必要です。効率的な時間の使い方や合理的な仕事の進め方へと、変わっていく必要がありますね。例えば、日本の企業では、物事の方向性を決める最初の段階からきれいな資料をたくさん用意することを強いられがちですが、方向性を決めてから本当に必要な資料だけを作成すればよいと思います。そういった“仕事の過剰品質”を組織的に改めていかなくてはなりません。女性が活躍する職場をつくるには、ワークライフバランスの充実が必須。その実現のために何ができるかを真剣に突き詰めていけば、できることはたくさんあるはずです。

制度的な環境整備だけでなく、家族の支援も必要

古平:働き方の他にも、社会の枠組みも大きく変えていく必要がありそうですね。

武川:「30%」という数字は、もともと国連ナイロビ将来戦略勧告で提示されました。30%を占めるようになれば、社会を変革する力になり得るという考え方が背景にあります。言い換えれば、女性の管理職が3割を占める時代になれば、社会のシステム自体が再構築されないといけない時代になる。それは女性だけでなく、社会全体にとって良いシステムに違いないと考えています。

古平:そのためには、女性だけでなく、男性の意識改革も重要ですね。

武川:そうですね。私は1人目の子どもを米国で出産しているのですが、病院で見ていると、小児科に子どもを連れてくる3人に1人はお父さんです。日本の風景とはだいぶ違います。そんなふうに男性が子育てに積極的に関わる日が日本にも早く来ることを期待しています。昨年の4月には育児休業給付の制度が改正され、非課税分や社会保険料の免除も加味すると、育児休業中でも手取りで給与の8割程度が保障されるようになっています。男性が育休を取りやすくする施策ともいえます。女性の活躍には、家族の理解や支援が欠かせません。男性の育児休業取得は、そのための大きな第一歩になると考えています。

古平:「女性活躍推進」は、男性含め、社会全体で考えると、新しいことがたくさん生まれそうですね。ありがとうございました。

*2014年12月、働いた経験のある20~59歳女性(東阪名3700人)を対象に実施。