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“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性No.11

ソーシャルが起点となる新しい資金の流れ

2015/05/08

※用語解説
【ソーシャル・ソーシング】
アイデア、資金、スキルなど社会から必要なリソースを提供してもらうことで、社会の皆と共創していく仕組み。
【クラウドファンディング】
インターネットを介して広く個人からお金を集める仕組み。「寄付型」「購入型」「融資型」「投資型」など、さまざまな手法がある。
【ファンドレイズ】
ある特定の目的のためにお金を集めること
 
 

◆朝日新聞社がクラウドファンディングに参入

1879年の創業以来、夏目漱石や二葉亭四迷、松本清張といった文豪、石川啄木のような詩人を支え、現代でもサッカー日本代表やJリーグをはじめとする様々な文化・スポーツ事業を支える朝日新聞社。関連会社にテレビ朝日をはじめとする全国テレビ放送局網や、週刊朝日やAERAなどの有力雑誌事業会社を擁する巨大複合マスメディアグループです。その朝日新聞社が「誰もが等しく挑戦でき、世の中の課題を解決し、新しいビジネス、文化を創出できる社会を創る」という志のもと、新しい時代の仕組み「購入型クラウドファンディング」のプラットフォーム事業に自ら進出しました。

クラウドファンディング会社を買収し子会社化するといったいわゆるM&Aではなく、朝日新聞メディアラボという新規事業開発を行う部署による本社の新規事業としての幕開けです。
ベンチャー企業や新興IT企業と比べ、保守化が進み大企業病やイノベーションのジレンマを克服できずに苦しむ日本企業も多い中、同社は全国紙として先陣を切り新たな領域へ挑戦と投資を続けています。

◆朝日新聞社クラウドファンディング「A-port」

a-portロゴ

朝日新聞クラウドファンディング「A-port」事業の立ち上げのお手伝いをさせていただきました経緯もあり、少しご紹介させて頂きます。

A-portは「購入型」のクラウドファンディングで、All OR NOTHING型とALL IN型、つまり目標金額を達成しないと支援金額が決済されない方法と、目標金額の達成・未達に関わらず支援された分だけ決済されていく方法、両方が選べます。
朝日新聞社の自社事業であり、朝日新聞デジタルやハフィントンポスト、withnewsといった朝日新聞社系列の有力メディアでの露出も期待でき、ファンディング情報の拡散が見込まれます。

クラウドファンディング業界は今後、「プラットフォーマーの法的・道義的責任」の議論を免れません。詐欺ファンドや不良ファンド、問題ファンドを掲載し、資金集めを手助けしてしまった場合に、そのプラットフォーマーが支援者(被害者)への責務や補償という議論です。
この議論はまだ始まったばかりで結論は分かりませんが、今後ますます高額案件も増えるであろうこの業界において、プラットフォームに期待される責任能力は非常に高くなっていきます。

そういった点でも、朝日新聞社は本社としてこの事業を立ち上げているので、資本面、経営基盤から見た倒産リスクなどは相当に低く、その責任能力には安心感があります。

◆クラウドファンディングがつくる新しいお金の流れ方、うねり

朝日新聞社に続き、世界最大の発行部数を誇る読売新聞社もクラウドファンディング事業に進出することを発表しました。他の大手全国紙などのマスメディアもこのような動きに追従することでしょう。
強力な情報浸透力を持つマスメディア各社がクラウドファンディングへ舵を切ることで、新しいお金の流れが生まれ、それが社会に定着していくのではないかと感じます。

朝日新聞社クラウドファンディング「A-port」の理念にも「私たちは、日本に『クラウドファンディングで支援する』という新しいお金の使い方が定着することを目指していきます」とうたわれています。

クラウドファンディングで生活者自身が共感し認める事業や企業に資金を投入することが当たり前の社会がやってくるかもしれません。以前から生活協同組合といった形で同様の仕組みは存在しましたが、高度に発達したインターネットの力、SNSという社会基盤、手軽なオンライン決済やネットバンクの普及を背景に、今後大規模化していき、新たな社会構造になるかもしれません。

2015年中には金融商品取引法改正による「株式型」クラウドファンディングが国内で解禁されます。ますます目が離せないクラウドファンディング業界です。