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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.58

その「ターゲット」は実在するか?

2015/06/11

udon
ふにゃふにゃ?ふわふわ?

宮崎のうどんは、やわらかい。濃い目のいりこで塩の強い出汁から麺を持ち上げようとしても、ボトボトボトッ。切れて姿が見えなくなるくらい、ふにゃふにゃにやわらかいのです。うどんはコシが命と信じて疑わない讃岐の人々が口にしたら目を丸くしそうな一杯をズルズルズルズル、すするように楽しみました。そんな昼食で腹ごしらえして向かった先は宮崎県と宮崎日日新聞が主催する「みやざきフードビジネスアカデミー」。そこで全4回、各回最低でも4時間という超~長丁場の「ワクワクする商品づくりって どうしたらいいんだろう?」というセミナーを担当することになり、5月某日、第1回が開催されたのでした。

participants
参加者の皆さん

中心となったテーマは「コンセプト」。今までの延長線上ではなかなかうまく行かないとき、「その手があったか!」という手を打つための視点です。集まってくださった食品事業経営者や農業関係者、県職員など二十余名の皆さんと、かなり活発な議論をしました。

ここでひとつ気がついたことがあります。皆さん、自分と直接関係がない、たとえば世の中の成功事例やぼく自身がかかわったケースについて考えるときはとても冷静で、公平です。でもひとたび「自分のこと」となると、とたんにバランスが悪くなってしまうのです。

宮崎の事例をまんまご紹介するのははばかられるので、「たとえば」でお話ししますが、「評判の地酒をたっぷり使った日本酒ケーキをつくっています」という事業者さんが「ターゲットは甘いものが苦手な男性」とおっしゃるのです。なんとなくそう言いたくなる気持ちはわかります。が、「甘いのが苦手な人は、そもそもケーキを食べないでしょ?」「少なくともぼくは呑兵衛ですが、日本酒は日本酒で飲みたいかなぁ…」。つっこみどころが満載です。

本気で頑張っているからこそ、自分の事業については冷静でいられないのでしょう。「わたしが一生懸命つくっている商品なんだから、誰か買ってくれるはず」という思い込みです。しかし自分の「商品」ばかりに関心を払っている限り、この状態から抜け出すことはできません。

そこで、そういうときは一度肩の力を抜いて「お客様(ターゲット)のこと」をゆっくり考えてみることをオススメしました。「そんなお客様は実在するでしょうか?」「自分が都合よくつくりあげてしまった架空の人物ではないでしょうか?」

もし、たった一人でも本当に買ってくれそうな人が「実在」すればシメたものです。同じような嗜好の人は他にもいるでしょうから。そうやって他人の気持ちになってみることは冷静さを取り戻すのに役立ちます。

「実在しないターゲット」を都合よく設定しちゃうことは、実は大企業病に侵された会社でこそ、よく見受けられます。チーム。上司。上司の上司。上司の上司の上司。多くの人と合意形成するために、実感からかけ離れたデータに頼ってしまうのです。ローカルの事業者さんの多くはせっかくシンプルに意思決定できるのですから、大企業(病)をまねなんかしないで、ホンネのマーケティングができるといいな、と思います。

food
人気店「八三壱」のおつまみ
sake
佐藤焼酎の逸品

セミナー後には参加者のおひとりである竹原さんがプロデュースした地元野菜が美味しいお店「Farmhouse Kitchen 八三壱(はちさんいち)」で懇親会。宮崎の自然や人間の魅力、チャレンジや悩みなどいろいろなことを伺いました。明治38年創業、佐藤焼酎の山口さんから差し入れに頂戴した銘酒「天の刻印」はスッキリ、まろやか。杯を重ねても重ねても話は尽きることなく、夜は更けていったのでした。

このグループであと3回、また秋から別グループもスタートします。今年はどっぷり宮崎グルメを堪能することになりそうです。

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二日酔いの朝は「冷汁」

さて。次回は老舗和牛卸の小島さんから伺った、焼肉屋さんでも役立つ「和牛学」にチャレンジしようと思います。

どうぞ、召し上がれ!