電通グループ、仏通信大手のOrange社とピッチイベントを共催
2015/07/01
仏通信大手のOrange社によるスタートアップ企業育成プログラム「Orange Fab」と電通グループは6月26日、東京・築地で同プログラム参加企業9社によるピッチイベントを開催した。
昨今、資金力のある大企業によるスタートアップ企業の発掘・育成プロジェクトが国内外問わず活発になっている。国内ではテレビ局や大手メーカーなど、これまではスタートアップ企業と縁遠かった企業によるファンド設立やハッカソン開催が注目されるようになった。同イベントを主催したOrange社や電通グループも出資や育成、事業提携など多角的なスタートアップ企業との取り組みに力を入れている。
イベント冒頭、同社でアジア地域のベンチャーパートナーを務める西川浩司氏は「主力事業であるテレコム事業を展開している欧州やアフリカ諸国において、シナジーを生むポテンシャルを持つスタートアップの支援をしている。東京でも2年前から同様のプログラムを行っている」とOrange Fab設立の背景を話した。同社のスタートアップ企業の支援は世界各国で行われ、日本でも既に18社の支援実績を持つ。
ピッチ登壇企業
同イベントに集まった9社はO2Oソリューション、プロモーション支援、データ解析、アプリ開発などのサービスを展開しており、会場に詰めかけた事業開発担当、メディア担当、マーケティングプランナー、クリエーターら、デジタル領域を主戦場にしている約70人に対して新たなコラボレーションの可能性をアピールした。
ABEJA 岡田陽介氏
画像解析や機械学習を活用し、インストア(店舗内)マーケティングの支援ツールを提供。同社独自のDMPで店舗に関する様々なデータを統合することにより、客数や商品発注数などの予測までを可能にしている。
Livepass 内海友紀子氏
顧客一人一人にパーソナライズされた動画を配信できるサービスを開発。メールマガジンなどにこの動画を織り込み、既にいくつかの企業で高い効果を発揮している。
Mashroom 原庸一朗氏
アプリのダウンロード不要で、専用端末と情報の送受信が行えるシステムを開発。店舗での決済やクーポンの取得など、デバイスやアプリの有無を問わないサービスへの応用が可能。
Spectee 村上建治郎氏
写真を活用したニュースメディア「Spectee」を運営。TwitterやInstagramなどの写真情報解析により、現在は平均60分かかっている一次情報のニュース配信をリアルタイム化。
Aquabit Spirals 萩原智啓氏
さまざまな物に張り付けることができるICチップ内蔵の小型カード「スマートプレート」を開発。スマートフォンをかざすと商品購入ページやFacebookページなど、張り付けた物の情報を検索することなくアクセスすることができる。
Nain 山本健太郎氏
スマートウオッチ向けのコミュニケーションアプリ「Nain」を開発。移動中や食事中などのステータスを、位置情報やジャイロセンサーを活用して自動で友人に共有できる。
Repro 平田祐介氏
アプリ利用中のユーザーの行動を動画も活用しながら分析できるツールを開発。定性・定量を組み合わせた分析を可能にし、アプリ運用のPDCAをさらに効率化する。
Mobilous 宮田明氏
スライド作成ツールの要領で、さまざまなアプリを開発可能な「AppExe」を提供。一度の操作で複数のOSに対応したアプリをコーディング不要で生成し、プロジェクトにおける開発時間を大幅に短縮可能。
Scentee 坪内弘毅氏
スマートフォンの端子に接続して、香りを出すデバイスを開発。国内外問わず話題となった事例があり、今後はウエアラブルデバイスなど新たな製品開発を行う。
Orange Fabではスタートアップに対し、月に2、3回程度のゲストを招いた定期的なメンタリングセッションの提供や、同社内の新規プロジェクトへの参画などを通じて支援を行っている。西川氏によると、Orange Fabは今後も東京を拠点として韓国や台北などアジアでの有望スタートアップを発掘し「グローバル、特にOrangeにとってホットな地域である欧州やアフリカに持っていける事業」を継続して支援していく。
今回のイベントを開催した電通の中嶋文彦氏と電通デジタル・ホールディングスの光延洋太氏は「電通グループが運営する電通デジタル・ファンドなどを通じ、スタートアップ企業との連携を加速させている。今回のように外部のインキュベーターやベンチャーキャピタルなどとも連携しながら、様々なイベントや連携プログラムに取り組んでいく」と今後の展望について語った。