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現地レポート カンヌライオンズ2015No.5

交流するカンヌ
Twitter社のバイスプレジデントに
会ってきた

2015/07/09

前回のレポートでは、世界中のクリエーターが黙々とエントリー作品と向き合っているという話をしました。今回は視点を変えて、世界中の人たちとの交流についてレポートしたいと思います。

カンヌでは、当然ですが、世界中の広告関係者が集っています。セミナー会場のみならず、カンヌの街じゅうのカフェやレストランには様々な国の人たちが 日夜楽しげに広告について語っている光景が目に入ってきます。また、広告会社のみならず、媒体社やアドテクノロジー企業も集い、自らのセミナーを開いたり、ホテルのスイートを借りて展示をしたりと、商談のチャンスをうかがっています。そのような中、私は幸運にも、 'Connecting people in a transparent world'. Speaking about 'data patterns'というセミナーで好評を博した、Twitter社のバイスプレジデント、クリスムーディ氏に、セミナーの直後、
ほぼプライベートに近い形でインタビューをすることができました。

日本にいると、海外の媒体社のエクゼクティブと、Tシャツ一枚、短パン姿で気さくに企業の戦略について話す機会はそうそうないのですが、カンヌではそうしたフランクな、リラックスした状況の中で、むしろ真面目にビジネスの話をすることができるのも魅力です。

さて、現状のCEOのディックコストロ氏が退任し、創業者のジャックドーシー氏を改めて迎えることになったTwitter社、データストラテジーのトップのクリス・ムーディに聞いてきたが印象的でしたので、ここでご紹介いたします。


廣田:クリスさんのプレゼンは面白かったです。クリエーターももはやデータを無視することができなくなったし、リアルタイムに対応することが求められ始めているという実感を得ました。ただ、クリエーティブの人にとってデータはとっつきにくいものでもあります。どのようにはじめればいいのでしょうか?

クリス:確かに、データは重要になっています。ただ、あなたがいうように、データの量が拡大し、分析が難しいのも事実。だから、分析をするにあたって、明確な所からやることが重要です。何を知りたいのか、まずはポイントを絞ってリスニングをするとよいと思います。

廣田:クリエーターのみならず、クライアントにとっても分析結果を共有することが重要ですが、どのようにクライアントにデータの重要性を働きかけていけばいいのでしょうか?

クリス:これはアメリカでも非常に難しい問題です。クライアントとエージェンシーで共同のチームを作り、データを共有することが大事だと思います。それから、成功事例、ケーススタディーを紹介し、徐々に慣れていくことも大切。企業によってはソーシャルメディアのコマンドセンターを作っているところもあります。

廣田:今回のカンヌでは、人工知能(AI)がかなり注目されていた印象です。Twitterも膨大なデータの中から、インサイトを見つけてくるときに、そういう取り組みは有効でしょうか?

クリス:Twitter社では、データマイナーという企業と提携しており、データから変化の兆しを見つけることができます。ニュース媒体社がこういった技術を取り入れ、新しいニュースの種を見つけるために有効活用している事例もあります。また、噂みたいなツイートを見つけてきて、その真偽を判断したりすることもできます。

廣田:面白いですね! ただ、現状Twitterなどのビッグデータを扱うときに、エンジニアは「大量のデータを正確に分析できる」ということを誇りますが、マーケターは「意味のある気づきが欲しい」ということで、同じデータを扱う上でも議論がかみ合わないことがあります。

クリス:それはよく分かります(笑)。ただ、Twitter社としては、フェアネスを重要視していて、ツイートの内容における「解釈」は公式の情報として提供しないようにしています。 例えば、「バカ」というツイートには文字通りの意味もあれば、愛着をもって表現されていることもあります。そういった分析は、マーケティングを行っているサードパーティーの会社に委ねています。

廣田:SNSを使ったリアルタイムマーケティングが、企業活動にとってもますます重要になってきている中で、その価値をより深く理解してもらうために、Twitterとしては何か試みはありますか?

クリス:IBMのコンサルタント1500人と提携して、企業活動にTwitterを役立ててもらうように準備しています。クリエーティブな企業とのコラボレーションも進めようとしていて、映画会社と組んで、キャストやスクリプトのヒントにTwitterのデータを使ってもらっています。また、政治の世界でもTwitterの活用を進めています。スピーチを書いたり、タイミングを検討することにもTwitterが使えます。

日本では、オリンピックに向けて観光客を連れてくるために、政府の組織とコラボレーションを進めているところです。また、ビジネスだけではなくて、社会インフラにとってもTwitterは重要になっています。ジャカルタに良い例があって、洪水のときに浸水している場所を、住民同士がTwitter上で情報交換したという事例もあります。

廣田:ここ最近、Twitterを騒がせたニュースに、CEOのディックコストロ氏が退任し、伝説の創業者ジャンクドーシー氏が戻ってくると言われています。内部ではどのように受け止められていますか?

クリス:ドーシー氏は、Twitterをずっと見てきて、コストロ氏の戦略を熟知しているからこそ、しばらくは変わらないと思います。

廣田:コストロ氏は、即興コメディーをやることを社内で重要視していたと聞きますが、それも受け継ぐと理解していいですか?

クリス:それはないですね!(一同大爆笑)性格について真逆だからね。

廣田:ありがとうございました。最後に、Twitterが大好きな日本人に向けて、一言お願いします。

クリス:日本語140文字はたくさん表現できます。そのおかげで、他の国の人たちと随分違った使い方をしています。日本のみんなすべてがクリエーターだと思います。また、最近は、PeriscopeなどもTwitterのサービスとして提供していて、動画、写真など様々なものとチャンスがある。日本人のクリエーティビティーに期待しています。カンヌでは、クリエーティブの人だけでなく、さまざまな職種の人たちが集います。しかも、気軽に声をかけ、ビジネスにつなげるチャンスがごろごろと転がっています。この業界で働いている人なら必ず得るものがあると思います。

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