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「グローバルな視点で子どもたちの
夢を形にする」仁禮彩香氏

2015/07/23

「子どもの視点」からさまざまな事業を展開する、“子どもによる子どものための未来創造企業”グローパスのCEOで、現役高校生の仁禮彩香氏に、電通総研ジャパン・スタディーズ・グループの村越力氏が話を聞きました。


グローバルな視点で子どもたちの夢を形にする

アイデアあふれる子どもたちと手伝える大人をつなげるために

村越:仁禮さんはグローパスのCEOとして、数々の事業を展開されています。まず設立趣旨をお聞かせください。

仁禮:COOの齊藤瑠夏と一緒にグローパスを立ち上げたのは、中学2年生だった2011年。私たちが幼稚園と小生時代を過ごした湘南インターナショナルスクールでは、自分を表現した上で、価値観が違う人とどう共生するかを常に問い掛けられていましたし、アイデアを形にするのが当たり前でした。子どもだけで実現が難しいときには、先生や親など周りの大人たちが手助けをしてくれました。けれど中学校では、周りの友達も素晴らしい夢やアイデアを持っているのに、実現の仕方が分からない、手伝ってくれる大人とのつながりもない。そこで、「子どもたちの夢を形にする」という、私たち二人のやりたいことがはっきりしました。夢やアイデアを持っている子どもと大人たちを結びび付けられるのではないかと考えたんです。自分たちは次の世代で、未来そのもの。だから、日本の未来に対して責任を持とう、という議論もしましたね。

村越:NPOや学生団体ではなく、なぜ株式会社に?

仁禮:より自分たちが疑問に感じること、分からないことをやってみたいので、一番勉強したいビジネスの形でやろうと。

村越:子どもが起点のユニークな事業が多数進行中ですね。事業分野は?

仁禮:大きくは三つです。まず、子どもが子どもの夢を形にする事業。次に、子どもが未来志向の学校をつくる事業。14年に運営を引き継いだ湘南インターナショナルスクールや「g Café School」の運営があります。g Caféは0歳からの親子で一緒に学ぶ新しい形の共育コミュニティーで、一番最初の教育者であるお母さんが赤ちゃんとのコミュニケーションの方法を学ぶための場です。平日の昼間にすいている喫茶店に協力してもらい、教わったお母さんたちが今度は先生になる仕組みで全国8カ所に広がっています。三つ目は、チャレンジする大人を子どもが応援する事業。生意気なテーマですが(笑)。企業と商品開発などを行っています。

疑問や気付きを見過ごさず事業へと展開

村越:「グローバル人生ゲーム」プロジェクトは13年、仁禮さんがカンファレンスイベント「TEDxKids@ Chiyoda」で紹介して話題になりました。既存の人生ゲームに疑問を感じたのが発端だそうですね。

仁禮:私が作るなら大富豪をゴールにしないのにと感じたんです。そこで、ゼロからつながりをつくった他の国々の子どもたち“グローパス・フレンズ”にどんな人生ゲームを作りたいかを聞いてみました。すると、さまざまな意見があった。例えばイタリアの子は「休みが多い方がいい」とか。日本のすごろくなら早く進みたいじゃないですか。他の国の子は、お金じゃなくて「神様に近づく方がいい」とか。ゲーム一つとっても、人生に求める価値の違いが見えてきたんです。子どもたちがゲームを通して異文化を理解できれば、大人になったころ、価値観の違いによる争いや戦争も消えていくのではないか。そう考えて現在、企業と商品化する準備を進めています。

村越:自分自身の気付きが、プロジェクトの芽になっているんですね。昨年グローパスが主催した、防災・減災をテーマにした「Post-disaster Innovation Forum」(PI F)も、そうですか?

仁禮:震災後にとても意義あるグッズや事業がたくさん生まれたのに、13年の秋ごろに調べてみると、普及していない。それは横のつながりができていないからだと思ったんですね。そこで、主体となっている人をまずつなげようと開催したのが第1回PIFで、なんと参加者200人が全員パネリストという会議に。その場で新しいビジネスや事業プラン、コネクションが生まれたりと大きな成果が得られました。政策提言では、減災の概念を産業に置き換え、社会への普及を目指すことを掲げて、当日来ていただいた内閣府の防災担当相に手渡しました。PIFは、今年3月には国連の世界会議に参加する形で「世界防災ジュニア会議」を仙台市で行いました。約500人が参加してくれて、しかも半分以上がジュニアでした。来年3月にも実施を計画しています。

子どもたちが主体的な一歩を踏み出せるきっかけづくりを

村越:企業との共創プロジェクトは具体的にどのような活動ですか。

仁禮:例えば、ある自動車メーカーとは、電気自動車の新しい活用方法を考える2日間のカンファレンスを開催しました。電気自動車は動くコンピューターであり、一つの部屋であり、エネルギーそのものでもあり、使い方はいろいろあると思ったんです。イノベーションを起こすために専門家だけでなくその会社の社員、部品メーカーの方、グローパスからは子どもたちや父母、先生など合わせて100人くらいが参加しました。子どもや父母、専門家ごとで話し合い、そこに社員の方が巡回してヒントやアイデアを聞いていく、という形ですごく盛り上がりました。

村越:今後はどのように考えていますか?

仁禮:グローパスの決まりなんですが、私自身は20歳の誕生日で“卒業”する予定です。今、私たちは個人の報酬はもらっていなくて、その代わりに卒業するときにギフトをもらうことにしています。株券や、あるいはプロジェクトを継承して起業するのもあり得るかなと。グローパスとしては、フェース・トゥ・フェースで、子どもたちと大人をつなげる場を増やしたい。子どもの発言を聞き入れ、手助けしてくれる大人が周りにいた私たちは、とてもラッキーだった。自分の考えを発信し、主体的に取り組みたいという多くの子どもたちの背中を押して、夢をかなえるリアルなきっかけをつくっていきたいと思っています。