「戦後70年、メディアの取り組み」
大切な記憶の継承から、新たな祈りの発信まで(1)
2015/09/28
平和への思い 今こそ
8月15日、戦後70年を迎えた。大きな節目を機に、各メディアは多角的な視点から戦争に向き合い、特集やプロジェクト、キャンペーンやイベントなどさまざまな取り組みを展開。メディアの特性や強みを生かしながら工夫を凝らし、戦争の記憶・記録の継承の重要性や平和への祈念などを発信している。その一部を紹介する。
中国新聞社
投稿された平和メッセージを世界へ
「広島から、世界を巻き込む『平和』のムーブメントを起こしたい」と中国新聞社は昨年8月6日、今年の8月6日に向けて被爆70年プロジェクト「THE 70th PEACE ACT HIROSHIMA」を立ち上げた。芸術家・平和活動家のオノ・ヨーコさんの呼び掛けを掲載した紙面をキックオフとし、国内外の著名人や一般の人たちから寄せられた「平和メッセージ」を世界に発信する国際的な参加型プロジェクト。世界約40カ国から寄せられたメッセージは1万5000通を超えた(8月16日締切)。メッセージは紙面や特別サイトで発信される他、代表的なメッセージは平和首長会議に加盟する世界161カ国・地域、6779都市へ広島市を通じ届けられる予定だ。 サイトではオノさんが平和への思いを語るインタビューや歌手・石井竜也さんらスペシャルサポーターのメッセージも紹介している。また、5月4日、加藤登紀子さんや島谷ひとみさん、広島ゆかりのミュージシャンたちによる「ピース・アクト・ヒロシマ音楽祭」を広島市の平和記念公園で開催し、平和の大切さをアピールした。
www.peace-act-hiroshima.com/
朝日新聞社
出版広告企画で戦後を考える70冊を紹介
朝日新聞社はさまざまな角度で戦後70年を報道するとともに、8月3日には出版58社の協賛を得て広告特集「戦後70年を読む」を掲載した。政治や社会、文化、日本国憲法、沖縄の歴史など幅広いジャンルで、これまでの歩みを振り返り、今後の日本を考える指標となる70冊を紹介。また、同特集の小冊子を2万部製作し、トーハン、日販の両取次会社の協力の下、全国の書店に配布した。
毎日新聞社+TBSテレビ
はがきに綴られた証言やエピソードを展示
戦争にまつわる証言を映像や活字で記録し、戦争の悲惨さと平和の尊さを次世代に伝えていくことを目指し、毎日新聞社とTBSテレビは、昨年8月から共同プロジェクト「千の証言」を展開している。戦争にまつわる証言・エピソードをはがきやウェブで広く募集した。元兵士や民間人として被災した人など戦争を体験した本人だけでなく、家族や遺族からの便りも含め1550通が寄せられた(8月31日現在)。 毎日新聞社は、届けられた証言やエピソードなどを特設サイトに掲載する他、紙面で特集や連載で紹介。TBSは、特別番組「千の証言スペシャル 私の街も戦場だった」を3月9日と8月15日の全2回にわたって放送した。 また、7~8月、「はがきで綴(つづ)る、戦争の記憶 千の証言展」が、東京・千代田区の第一生命ギャラリーなど3会場で開催された。投稿されたはがき約100点や関連する品々、士官たちの墨書などを展示。びっしりと小さい字で書き込まれたはがきが「今書いておかなければ」という強い思いを伝えていた。
mainichi.jp/feature/sennosyougen/
広島テレビ
平和への思いを込めた一文字を発信
広島テレビ放送は、2012 年から「平和へのひと筆プロジェクト Piece for Peace HIROSHIMA」を展開している。広島平和記念公園に世界中から届けられる折り鶴を再生した紙に、平和を願う気持ちを込めて一般の人た ちに「一文字」を書いてもらう取り組みで、開局50年を機にスタート。これまでに国内外から寄せられた約1万8000字が特設サイトで紹介されている。
8 月4日、キャンペーンの一環として、最初の一文字「夢」を書いたオノ・ヨーコさんによるアート作品が広島国際会議場で展示公開された。「元気な広島を発信 してほしい」と、広島に強い思いを抱くオノさんに同プロジェクトの思いと重なるアートの制作を依頼。「HIROSHIMA AIR CLOCK」と名付けられた作品は、高さ約3メートルの黒い柱時計。原爆が投下された8時15分で針が止まった文字盤の下には、1945年8月6日が月曜日だっ たことから「6 」「月」が表示されている。「今ある身近な平和、そして世界の平和の維持・実現のために、70年前の8月6日の原爆投下の瞬間に立ち戻り、呼吸をすること もできず苦しかったあの瞬間を忘れないでいましょう」というオノさんの思いが込められている。公開展示の模様は特別番組で紹介された。
www.htv.jp/pfp/
テレビ長崎
音楽フェスで平和のメッセージを全国に
テレビ長崎は8月1、2の両日、音楽フェス「RISING PEACE FES 2015 in NAGASAKI」を長崎県営野球場 で開催した。世界平和への祈りとこれまでの先達の努力と英知に向けた敬意のメッセージを全国に発信することを目的に企画された。今回は、ライジングプロダクションの協力により、ファミリー層など一人でも多くの人々が参加できるようにと、音楽フェスとしてはリーズナブルな料金設定とした。 ステージでは、MAX、DA PUMP、西内まりやさん、三浦大知さん、平愛梨さんらライジングプロダクション所属のアーティスト11組がパフォーマンスを繰り広げ、客席からは熱い声援が送られた。最後には、出演者全員が手をつなぎ、肩を組み、会場と一体となって「We A re The World 」を合唱してクライマックスへ。2 日間で全国から参加した約1万2000人(LINE生放送視聴約50万人)が被爆70年の長崎で、音楽と共に平和を祈った。
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