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中日新聞社に聞いた「マーケターなら知っておきたい名古屋」

2024/10/21

地域を絞ったキャンペーンやテストマーケティングを考えている企業にとって有益となるさまざまなヒントをお届けするため、電通は地方新聞社と協働して「地域のファクトブック」の制作をスタートしました。本連載では、ファクトブックで取り上げる地域について、その地域を知り尽くした新聞社の方にお話を伺っていきます。

初回のテーマは、「中日新聞社に聞いた『マーケターなら知っておきたい名古屋』」。ファクトブックを手掛ける電通のコピーライターの伊藤健一郎さんが、中日新聞社の森山侑斗さん、村上佳穂さんに、名古屋のアレコレについて聞きました。

名古屋という街やそこに暮らす人々の特徴が少しでもみなさんに伝わり、名古屋でのマーケティングに少しでも興味を感じていただけたら幸いです。

名古屋マーケティング

左から、森山侑斗さん(中日新聞名古屋本社 メディアビジネス局 エリアビジネス部 兼 ビジネスプロデュース部):義務教育期間を除き、誕生から現在まで名古屋で過ごす。入社後は、広告営業、主催事業の企画運営、官民連携事業の推進業務に従事。現在はBtoG領域を中心に中日新聞社の資産を活用した課題解決のサポートを行っている。

村上佳穂さん(中日新聞東京本社 メディアビジネス局 ビジネスパートナー2部):愛知県一宮市出身。大学時代は東京で過ごす。中日新聞社に入社後、岐阜で3年間、名古屋で1年間勤務したのち、東京本社へ。現在はサービス業や外食産業の広告営業を担当。

伊藤健一郎さん(電通第1CRプランニング局コピーライター):2015年から2年半、中部支社に勤務。名古屋の喫茶文化が大好き。トヨタの仕事をしているため、今でも名古屋に足しげく通う。電通新聞局と地方新聞社と共に「地域のファクトブック」を制作中。

名古屋人はイベントが好き!?

伊藤:初めまして。今日はお2人に名古屋のことを伺いたくて東京からやってきました。僕は名古屋で勤務していたことがあるのですが、名古屋といえば、喫茶店文化が根付いていますよね。いまお話をしている「ボンボン」(※1)は、人気の純喫茶で、僕が名古屋にいた頃、よく通っていました。

森山:「ボンボン」は歴史があって、地元の人がよく通っています。洋菓子もおいしいんですよ。

村上:喫茶店といえば、私が生まれ育った一宮市は、名古屋から電車で10分ほどのところにあるんですが、モーニング(サービス)発祥の地と言われています。実家にいた頃は、週末は朝7時ぐらいから家族で喫茶店に行ってモーニングを食べていました。8時を過ぎると混んでいるので。一宮市は、喫茶店のモーニングを紹介したマップがあったり、モーニンググランプリが開催されていたりします。

伊藤:そんなに朝早くから、みなさんモーニングを楽しんでいるとは驚きです。モーニングはこの地域の独特の文化ですよね。名古屋といえば、「なごやめし」(※2)も有名ですが、 お好きですか?

村上:はい。いまは、「台湾まぜそば」や「台湾ラーメン」にハマっています。麺屋はなび、味仙とか人気のお店があって、東京でも支店を探してしまいます。

森山:名古屋の人たちは、食への興味が強いのではないかと思います。実際、グルメイベントはよく開かれていますね。

村上:食といえば、ショコラの祭典である、ジェイアール名古屋タカシマヤの「アムール・デュ・ショコラ」(※3)は、すさまじい人気です。さまざまなブランド・種類の商品が販売され、来場者数、売り上げとも日本有数のバレンタインイベントです。

アムール・デュ・ショコラ
アムール・デュ・ショコラ:2024年は、世界中からえりすぐりの150ブランドが集結し、2500種類以上のショコラがラインアップされた。

伊藤:そんなイベントがあるんですね!食関連だけでなく、名古屋は、毎週末、何かイベントが行われているイメージがあります。これは僕の名古屋の原体験になるのですが、こちらに転勤したばかりの頃、休日にコンビニに行くと、ナルトやサスケ、マリオやピーチ姫といった、アニメやゲームのキャラクターのコスプレをした人がいて、何事かと思いました。じつは、その日は世界コスプレサミット(※4)があったことを後で知りまして。街のちょっとしたイベントかと思っていたら、国際的な大規模なもので、海外のコスプレーヤーもたくさん参加することを知って驚きました。

世界コスプレサミット
©WCS / WCS2024

森山:あれは名古屋ならではのイベントですね。他にも、名古屋の代表的なイベントといえば、「どまつり(にっぽんど真ん中祭り)」(※5)もありますね。

伊藤:それはどんなお祭りなのでしょうか?

村上:国内外からいろいろなチームが集まり、地域色豊かな踊りを披露します。名古屋の大学に進学した友人の多くは、よさこいサークルに入って、どまつりに出ていました。大学や社会人サークル、地域のチームなど、世代を超えていろいろな人が参加する、名古屋に根付いたお祭りです。

伊藤:ああ。名古屋を散歩していると、踊りの練習をしている人たちを見かけたことがあります。名古屋の皆さんは年齢問わず、お祭りやイベントが好きなのでしょうか?

森山:名古屋人はイベントを立ち上げても飛びつかないイメージがあるみたいですが、そんなことはありません。近所の夏祭りなどもにぎわっていますし、みんなで盛り上がるのは結構好きな特性があると思います。

村上:まわりの人が「面白そう」と言っているのを聞くと、気になる感じです。興味が湧いたら、「混むかもしれないけど行ってみよう」という人が、周りの名古屋人には多いです。

伊藤:イベントを仕掛ける側にとっては、うれしいですね。名古屋駅に近い円頓寺(えんどうじ)商店街でも結構イベントをやっていますよね。私が住んでいたときも、秋のパリ祭(※6)などは、たくさんの人が来ていましたね。名古屋はさまざまなイベントを受け入れる土壌がありそうです。いろいろなジャンルのイベントを試してみるのも面白そうですね。

円頓寺商店街 秋のパリ祭
パリのマルシェさながらにおしゃれな雑貨やお菓子、カフェ、ビストロなどの露店が並び、路上でもイベントや生演奏が行われ、大勢の人々で賑わう。2024年は、11月9日と10日に開催。
※1 ボンボン:名古屋市東区にある、1949年創業の老舗洋菓子・純喫茶。昭和レトロ感漂う店内でモーニングやランチが楽しめる。一つ一つ手作りされたケーキや焼き菓子も人気。
https://cake-bonbon.com/

※2 なごやめし:みそかつ、みそ煮込みうどん、どて煮、手羽先、ひつまぶし、台湾ラーメンなど名古屋および近郊で広く受け入れられ、愛されてきた地域独特のメニュー。
https://www.nagoya-info.jp/gourmet/digest/

※3 アムール・デュ・ショコラ:ジェイアール名古屋タカシマヤで開催される、バレンタインシーズンを盛り上げる日本最大級のショコラの祭典。2024年は、世界中からえりすぐりの150ブランドが集結し、2500種類以上のショコラがラインアップされた。

※4世界コスプレサミット:日本のアニメ・マンガ・ゲームなどのポップカルチャーを愛するコスプレーヤーが名古屋市に集い、交流を深めるイベントで2003年から開催。2024年は、36の国・地域から代表が集まった。市中心部の複合施設「オアシス21」に設けられたレッドカーペットを練り歩いたり、コスプレの出来栄えを競う。一般参加者のパレードも実施。https://worldcosplaysummit.jp/

※5 にっぽんど真ん中祭り:真夏の名古屋を舞台に繰り広げられる日本最大級の踊りの祭典。国内外から約200チーム、2万人が集まり、地域色豊かな踊りを披露する。誰でも参加できる市民参加型のお祭り。https://www.domatsuri.com/overview/

※6 円頓寺商店街 秋のパリ祭:名古屋駅から徒歩15分ほどの距離にある、約30店舗が軒を連ねるアーケード商店街。年間を通じて多くのイベントが行われている。秋のパリ祭は、2013年から始まり、パリのマルシェさながらにおしゃれな雑貨やお菓子、カフェ、ビストロなどの露店が並び、路上ではアコーディオンの生演奏やシャンソンなど、音楽でもパリの街を演出する。 https://endoji-paris.net/


 

名古屋人はメリハリの利いた消費が好き!?

伊藤:ここからは、「名古屋人の消費」について聞かせてください。名古屋の人はブランド好きとよく言われますよね?それはなぜだと思いますか?

森山:見えっ張りなのかもしれませんね(笑)。名古屋人は、母と娘の仲が良いとよく言われますが、それは僕の妻を見ていてもそう思いますね。妻は母親と一緒に買い物に行き、共同でブランドバッグを購入したこともあるそうです。1人で買うには金額が高すぎるものでも、母と娘、2人で使うならいいか、と考えることもあるようです。

村上:とはいうものの、お金の使い方には、メリハリがありますよね。

森山:そうですね。名古屋人は派手と言われる一方で、倹約家が多いとも言われます。相反するようですが、お金をかけるところ、節約するところをはっきり分ける感じがします。

村上:先ほど話した「アムール・デュ・ショコラ」のようなイベントには、私も含めて、かなりお金を使う子もいます。

伊藤:使うと決めたら、徹底的に使うのでしょうね。名古屋は旅行消費も多いとか?

森山:はい。車を持っている家庭が多いですし、新幹線の駅も近く、移動しやすいことも理由だと思います。

村上:もともと名古屋の人はアクティブな印象があります。休みの日はどこかに行きたがる。

森山:名古屋の中心部は高層ビルが立ち並んで都会ですが、市内には大きな公園もあります。それに山も海も近くて、中心部から車で30分ほど走れば、自然が豊かなところに行けます。それだけでなく、郊外には大型のショッピングセンターもたくさんありますから、週末は車で出かける人が多いと思います。

伊藤:名古屋は車社会ですよね。そういえば、僕は名古屋ではラジオCMを作ることが多かったのですが、やっぱり車でラジオを聞く人が多いのでしょうか?

森山村上:車の中でラジオはよく聞きますね。ずっと聞いているかもしれません。ラジオ局とタイアップしたグルメイベントも多いです。

村上佳穂


 

名古屋は伝統文化が息づく街

伊藤:名古屋の文化についてもう少し聞かせてください。

森山:僕は4年ほど事業局で中日新聞社主催のイベントの企画・運営に携わっていました。そのとき、「名古屋城こども王位戦」という将棋大会を担当しました。決勝は名古屋城の本丸御殿で行います。

伊藤:名古屋城で!?将棋といえば、藤井聡太さんは愛知県出身ですよね。この大会には藤井さんも参加されるんですか?

森山:はい。藤井さんによる子どもたちへの指導対局もあり、みんな大喜びです。会場は障壁画が展示されている本丸御殿で、藤井さんもいらっしゃる。はかまを着てくる子も多いですね。昔から、愛知出身の有名棋士はいらっしゃいましたが、近年は、藤井さんをはじめ、若い棋士を輩出しています。2022年には、名古屋駅前の複合商業施設「ミッドランドスクエア」の25階に「名古屋将棋対局場」がオープンしました。それまで公式戦を行う常設の対局場は東京と大阪だけでした。名古屋に将棋文化が広がっています。

名古屋城こども王位戦
子どもたちへ指導対局を行う藤井聡太さん

伊藤:名古屋は大相撲の本場所が行われるなど、伝統的な日本文化との関わりが深いイメージです。

森山:市内には、有松という、江戸時代の面影を残すまちがあって、ここは絞り染めが有名です。焼き物のまち、常滑や瀬戸も名古屋から近いですし、いろいろな伝統文化が交差していますね。

伊藤:職人さんとのコラボ企画を立ち上げても面白そうですね。

村上:近ごろは、若い職人さんも増えているようです。自分の作品をSNSで紹介して、直接取引することもあるようです。伝統文化を担う若手の方が活躍するフィールドは昔より広がっていますね。

有松
江戸時代の面影残すまち「有松」。写真提供:(公財)名古屋観光コンベンションビューロー

伊藤:では、森山さんがやってみたいイベントはありますか? 

森山:バンテリンドームナゴヤ(ナゴヤドーム)で人間将棋を企画してみたいですね。人間将棋は山形県の天童市が有名ですが、ドームで地元の人が将棋の駒に扮し、プロ棋士が対局すると注目を集めそうです。

伊藤:ドームといえば、中日ドラゴンズも名古屋の象徴ですね。

村上:ドラゴンズは、名古屋人の共通の話題です。熱狂的なファンでなくても、みんな何となく選手を知っている。

森山:ガチではないけど、知識はあるみたいな。一時期に比べれば野球離れが起こっているというような話も聞きますが、少なくとも名古屋は若い世代も野球が好きな人は意外と多くて、家族で見に行ったりすることも多いですね。

森山侑斗


 

名古屋人は、人見知り。でもコミュニケーションが好き!?

伊藤:名古屋と他の地域の人たちの違いを、どんなところに感じますか?

村上:名古屋人は、みんなで盛り上がれる共通の話題が多いかもしれません。私の友人でも、東京の子は興味があるものがバラバラだという印象なんですが、それと比較すれば、名古屋は話題を積極的に共有するところがあると感じます。先ほど話に出た、アムール・デュ・ショコラは、どの商品が良かったかみんなで教え合いますし、「どまつり」の話もすごく盛り上がります。

森山:先ほど挙げた母娘での消費だったり、家族でモーニングに出かけたり、家族間のコミュニケーションも割と活発かもしれません。イベントが多いのも、みんなで集まって楽しみたいという気持ちの表れだと思います。

伊藤:家族や仲間の絆を深めることをテーマにした企画は支持を集めるかもしれませんね。一方で、他の地域の企業にとっては、名古屋は排他的で参入しづらい地域だという印象があるという話を聞くこともあります。

村上:たしかに。東京で仕事をしているときに、「名古屋に支社はあるが、名古屋の市場に参入しづらい」という悩みをご相談いただくことも結構あります。

伊藤:コミュニケーションが好きなのに、他地域の人には身構えてしまう、と?

森山:「新参者が入りづらい」と言われることはありますね。名古屋は、地元にすごく愛着や誇りを持っている人が多い。ですから、他からいじられたり、勝手なイメージをつけられるとイラっとするところはあるかもしれません。身内ではまとまるのですが、他者には、初めは警戒心があるというか……。

伊藤:なるほど。そんな特性を持った地域でずっと根付いてきた中日新聞社だからこそ、できることはありますか?

森山:当社はいろいろな職種の人間がいますし、新聞社なのでいろいろな情報も集まります。名古屋でのマーケティングやキャンペーンをお考えの場合、まずは気軽にお声がけいただければ、お役に立てることも多いと自負しています。

伊藤:お話を伺って、名古屋ならではのいろいろな特徴が見えてきました。ファクトブックもぜひ参考にしていただき、名古屋でのキャンペーンやマーケティングに役立てていただけるとうれしいです。本日はありがとうございました。

名古屋マーケティング

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